第1067話 ドラゴン戦。(終了。)
武雄とビエラの戯れを見ている観客は。
「あ~・・・何ですかこれ?」
「互角というか・・・キタミザト様が穴に入ってブレスとブレスの間で魔法を当てているの?」
「こんな戦い方があるんだな。」
「・・・奇抜と言うかなんというか。」
ベルテ一家が驚いている。
「・・・ねぇ。ニルデ。」
「うん。ジルダ。
あの2人には逆らえないね。」
ニルデとジルダが頷く。
「・・・」
「・・・」
エリカとカサンドラは目を細めながら「タケオさんは人間じゃないな」と達観していた。
「・・・そろそろ止めようかな?」
「そうだな。
これ以上やると周りに被害が出そうだな。
アニータ。ミルコ。エアロウォールを俺とブルックに。
ブルック。フレアの最大を両者の中間に。」
「はぁ・・・了解。」
ブルックが返事をし、アーキンが用意をするのだった。
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武雄はなぜかドラゴン(ビエラ)相手に塹壕戦をしていた。
最初は横に掘ったが、斜めに掘ったり、直角に曲がったりとドラゴン(ビエラ)を半包囲する形で塹壕が掘られていた。
「はぁはぁ・・・畜生!」
ブレスが止むとすぐに顔を出し、ドラゴン(ビエラ)の喉元に命中させすぐに引っ込むと塹壕内で移動をしていく。
「グルゥ!」
ドラゴン(ビエラ)も馬鹿ではないので武雄が次出て来る場所を考えながら氷のブレス(本人曰く最弱)を吐いている。
ドラゴン(ビエラ)からしたらモグラ叩きの様相を呈していた。
ビエラは「結構楽しいかも♪」と武雄叩きを楽しんでいる。
ちなみに武雄とドラゴン(ビエラ)の思考の読み合いはドラゴン(ビエラ)の方が優勢になり始めていた。
「・・・くっ・・・今のは近いか・・・」
武雄が塹壕の壁に体を持たれかけさせて呟くが直ぐに塹壕から頭を出し、小銃改1を構えるとすぐに引き金をひく。
もう喉元に当たっているかどうかは問題ではなく、当たりさえすれば良いとすら思っている。
撃った後は塹壕内を行き来し、場所を特定させないようにするのが精一杯なのだった。
・・
・
何度目かのブレスが過ぎ塹壕から顔を出したタイミングで。
「「フレア」」
ドラゴン(ビエラ)と武雄の間に大きな火柱が立ち上がる。
「所長!ビエラ殿!そこまでです!」
「終了!はい終了!」
アーキンとブルックが両者の中間に入ってくる。
「グルっ・・・」
ビエラが大人しく獣人の姿に戻る。
「はぁ・・・止めるの遅いですよ・・・」
武雄が這いつくばって塹壕から出て来るのだった。
・・
・
「穴。埋め戻しました。」
皆が夕食で取り分けている間にアースウォールを使い塹壕を埋め戻していた。
「はい。キタミザト様。お疲れ様です。」
エンマが武雄の皿を渡してくる。
「はい。ありがとう。
あぁ・・・疲れた。
・・・いただきます。」
「「いただきます。」」
皆での食事が始まる。
「ビエラ殿。どうでしたか?」
「楽ちかった♪」
ビエラが満面の笑顔をブルックに向ける。
「ビエラ殿が楽しそうで良かったです。」
ブルックがそう言うが「私でなくて良かった」と心の中で思っていた。
「所長はどうでしたか?」
「ええ。ええ。今思えば楽しいですよ。
あんな体験滅多に出来ないでしょうけど。
やっている時は死に物狂いですよ。
塹壕作戦が上手く行って良かったです。」
「ブレスを避けるのに穴を使ったのはどうしてですか?」
ミルコが聞いて来る。
「私の考えですけどね。
例えば風が吹き荒れている時に洞窟にいると外の風は入って来ませんよね?
なので穴や横溝に入ると地面に打ち付けられた魔法が感じないのではと思ったんですよ。
事実。横から来るブレスの影響は穴にはなかったですね。」
「穴って凄いんですね。」
「一概に何とも言えませんが・・・
真上から穴や溝に向かってブレスをされたら溝全体が被害にあうかもしれませんからね。
少なくとも今回の事で真上からさえされなければ対応出来るというのはわかりました。
ミルコもいろいろ考えて訓練をしましょうね。」
「はい!所長!」
ミルコが元気に頷く。
「タケオさん。今までのドラゴンへの対応方法だと盾を何重にもしてブレスを耐えながら魔法での攻撃を行うというのが確立された戦い方だと思いますし、他にも地形的に岩とか土とかで遮蔽物を作りながら近寄るとかも有効かと思うのですけど・・・
その辺の既存の戦い方はどう思いますか?」
エリカが聞いてくる。
アーキンとブルックもエリカの戦い方に対して頷いている。
「否定はしませんよ。
今回はこの地がストーンエイクとエクスを使えば穴が掘れる事は前から知っていましたからね。
安全策をとって掘りました。
これが岩場であったり地面が固かったりしたら盾で防ぐしかなかったかもしれませんね。
ドラゴンのブレスに耐えられる盾かぁ・・・」
武雄が考える。
「研究所で作ってみますか?」
アーキンが聞いて来る。
「ビエラが居るならやってみても良いですけど。
実用性には乏しいかもしれませんね。
そんなに頻発してドラゴンと戦う訳でもなさそうですし・・・トレーシーさんの気晴らしに考えさせますかね。」
「気晴らしで最強の盾の研究ですか。」
「そうですね~。ま。ゆくゆくは砦の外壁にでも転用出来るような事になれば良いんですけどね。」
「あ~♪」
ビエラが「面白そうだから手伝うよ」と言ってくる。
「あれ?ビエラ。対応策が検討されても良いのですか?」
ミアが聞いて来る。
「あ。あ~?」
「ふ~ん。
主。ビエラが『別にブレス攻撃が防がれても違う事をすれば良いんでしょう?』との事ですけど。どうですか?」
ミアが武雄に聞いて来る。
「単身砦に突っ込んでくるならあの体の頑丈さですからね。
あっという間に砦の外壁は崩壊するでしょうね。
そこでブレスをすれば中は大惨事です。
まだまだドラゴン一強の時代は続きますよ。」
「あ~♪」
ビエラが楽しそうに頷くのだった。
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