第1055話 エリカの決意。(情報はどうやって手に入れる?)
第3皇子一家の執務室に向かう廊下にて。
アルマ、レイラ、エリカとパイディアーが歩いていた。
「これで良かったのでしょうか?」
エリカが悩みながらアルマとレイラに聞いてくる。
「何とも言えないわよ。
ギリギリまでエリカさんが悩んで決めて良いから・・・ダメだと思うならしなくて良いわよ。
この件は全てエリカさんの気持ち次第。
それにこの件は貴女の望みでもあるんだし。」
「それは・・・ありがとうございます。」
「お義父様さまとアルマお姉様と私がそれぞれ嘆願書を書くから、いざという時は使ってね。」
「はい。」
エリカが真面目な顔で頷く。
「はぁ・・・タケオさん。明日にはエルヴィス家に向けて出立するんだよね。」
レイラが思い出したかのように言ってくる。
「はい。
私とカサンドラの準備は終わっていますが・・・
なにかありましたか?」
エリカが聞いてくる。
「3つ目の企画については聞き忘れたなぁと思ってね。」
「例の領地間の通信かぁ。
確かに聞き忘れたね。」
レイラの言葉にアルマも頷く。
「概念的には素晴らしいけど、出来るのかな?」
「タケオさん達では出来ないから、私達にして欲しいというお願いなのか。
まずは王家だけで秘匿するべきと考えているのか。」
「その両方じゃないかな?」
「うん。そうかも。」
レイラもアルマの言葉に頷く。
「これも聞いてくれば良いのですね?」
「うん。お願い。」
エリカにやることが追加されるのだった。
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「やっと解放された。」
武雄は王城を後にしてトコトコと王都の城門に向かって歩いていた。
「はぁ・・・主。疲れました。」
「タンポポ茶が飲みたいですね。」
ミアとパナが胸ポケットから顔を出して休憩を要望してくる。
「・・・貴女達寝てたでしょうに。」
「何だか難しい事話していたので寝ていました。
でも疲れました。」
「話はわかりますけど・・・特に私が言う事でもないので。」
2人が言ってくる。
「はぁ・・・じゃあ。知り合いの所に行きますか。」
武雄が裏道に向かうのだった。
・・
・
「で、こちらに?」
「ええ。
ここは落ち着きますね。」
アスカムの材木店の奥の会談場所で、武雄がお茶を飲んでいた。
ミアもパナも文句を言わずにお茶と茶菓子を食べている。
「・・・そう言えばキタミザト様。
お聞きしたい事がありますが、よろしいでしょうか?」
「・・・まだ口調が固いですね。
良いですよ。」
「ええ。当たり前です。
と、小耳に挟んだのですが、カトランダ帝国方面とウィリプ連合国方面の兵士を増やす指針が決定したそうですね。」
「・・・どこからの情報ですか?」
武雄が真面目顔で聞き返す。
「情報源は言えませんが・・・仕事の付き合いで。」
アスカムが苦笑する。
「ま、話せない事もあるのは当然ですかね。
その商売相手はなんと?」
「いや・・・各貴族領で1000名ずつ兵士を増やす計画が企画されつつあると。
兵舎の増設に伴って材木価格が上がる可能性があるから、今から押さえておいた方が良いと。」
「ん~・・・1000名ね・・・」
武雄は考える素振りを見せる。
だが、内心では「軍務局か外交局?・・・早すぎだよな・・・」とも思うが「予定通りと言えば予定通りなんだろうね」と、国家の思惑が動き出したのを感じていた。
「キタミザト様、何か言われていますか?」
「特にはないですね。
前に言った盾の研究も予定通りに4月から企画し始めますけど・・・催促は来ていませんね。
まぁ、始まる前に催促されてもという感じですけど。」
武雄が苦笑する。
「ふむ・・・噂なのですかね?」
「さて?一研究所では教えられない事なのかもしれないですね。
私に相談されても西側の事はわかりかねますし、教える段階になれば私は招集されるでしょうね。」
「兵士を増やすなんて初めて聞きましたから・・・」
「まぁ100年間本格的な戦争していませんものね。」
「・・・それは魔王国側ですね。西側にしたらさらにですよ。」
「なるほどね。
まぁ何かしら動いているんでしょうけど。
親父さんは商売の為に、情報は集めないといけませんね。」
「そうですね。」
アスカムが頷く。
「で、情報ついでにお願いごとです。」
「何でしょう。」
「カトランダ帝国の東町と、ウィリプ連合国・ファルケ国の東町の物価を常に確認してください。
金貨5枚でどうでしょうか?
あと、出来たら毎月5kgずつ小麦を購入・・・あ、遠いからいいか。」
「・・・キタミザト様。物価価格は他国との商売上必要な情報なので可能ですが・・・
どこまでですか?」
「小麦、標準的なパン、干し肉、酒、馬、幌馬車、初級者用剣、標準的な盾・・・何でも。」
「わかりました。
情報は月一でお知らせします。」
「ええ。お願いします。
部下に月一で来させます。」
武雄が頭を下げる。
「わかりました。
・・・それで小麦が欲しいと?」
「遠いからいいですよ。」
武雄がにこやかに言う。
「キタミザト様が欲しがる理由を知りたいのですが?」
「いえ。毎月同じ方法でパンを作って味を確認したいだけです。」
「味ですか?」
「ええ。味です。」
武雄が頷くのだった。
・・
・
武雄達が去った部屋にてアスカムが考えていた。
「情報は良いとして・・・小麦かぁ・・・
食べたいと言っていたが、毎月というのが気になる。
それに、西側の貴族領の兵士を増やすか・・・
んん~・・・これは国境周辺の街と、町全部の価格動向を調べないといけないかもしれないな。
問題は伝手をどうやって確保するかか・・・」
アスカムが情報を取る方法を考えるのだった。
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