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第1049話 試射。(試射と書いて何と読む?)

王都守備隊訓練場。

ドン・・・ドン・・・ドン・・・2、3秒毎に発砲音と命中音がこだましている。


「・・・」

武雄は軽く前傾姿勢をし衝撃に備え、体は的に向かって正面に構え、足は半歩下げた状態で拳銃を両手でグリップすることでしっかりと狙って撃っていた。

本当は片手で撃とうかとも思ったが恐怖心から両手でしっかりと握る事を選んでいた。

「ふぅ・・・」

武雄が試射を止めて構えを解き腰のホルスターにしまうとその場で膝立ちになり、両膝に手を付いて肩で息をし始める。

ちなみに標的にしていた色が塗られた鉄製の胸当てがボコボコにされていた。


「所長。お疲れ様です。

 これは結構使えるみたいですね。」

見ていたマイヤーが小走りに近寄って来て話しかけてくる。

「威力だけなら結構ありそうです。

 ですけど、仕様上はマイヤーさん達に使わせる小銃とほぼ同威力となっていますが・・・こちらの方が若干低いかもしれませんね。」

武雄は下を向いたまま報告してくる。

「そうなのですか?」

「・・・マイヤーさん。ファイアの連射出来ます?」

「当然。」

マイヤーが標的に向けて手をかざすと瞬時に6発を撃ち込む。

「・・・まぁ。こんな感じですね。」

「同程度の威力ですかね?」

「ええ。見た感じで合わせました。

 で。小銃より威力が低いと?」

「ええ。前にエルヴィス家の騎士団長に向かって小銃で撃ち込みをしたので」

「可哀相に。」

「・・・その時より凹みが若干浅いと思うのですよね。

 まぁ。材質の違いかも知れませんし、あの時は足に向けてでしたから厚さの違いかもしれませんが・・・」

「凹むだけで十分に威力がありますよ。

 一般に売られている皮系の鎧なら貫通しているかもしれませんね。

 ついでに言えばその拳銃の弾丸でしたか?当たったら爆発していますし。」

「そういう仕様ですからね。」

ここで武雄は顔を上げてマイヤーを見る。

「えげつないですね。」

マイヤーが呆れていた。

「それにしてもシールドのおかげで手首への負担は相当軽いですね。

 十分衝撃は緩和されていますし、腕や腰への疲労はありませんね。

 まぁ全ての衝撃を防げてはいませんからしっかりと握らないといけないですが、これ自体はどうしようもない事ですかね。」

武雄は今度はその場で胡座をかいて肘を膝に付き、掌に顔を乗せながら話し始める。

「そうなのですか。

 で。この拳銃の評価はどうですか?」

「んー・・・毎秒4発・・・私にはまだ無理そうですね。

 やれたとしても毎秒2発が良い所でしょうか。

 訓練を積んで早く撃てるようにしないといけませんね。

 拳銃の出来は問題なく私の正式装備品でしょうね。」

「これで近接戦闘、近距離攻撃、遠距離攻撃の全てが揃いましたね。」

「さて揃いはしましたが・・・その3つとも違う魔法具を使うのですから切り替え時が大きな隙になるでしょうし、そもそも持っている物でどんな事をするかわかりますからね。

 魔法師達の方が瞬時に対応してきて、何をしてくるかわからない分だけ有利ですね。」

「なるほど。

 まだ我々が優位な点があるんですね。」

マイヤーが頷く。

武雄は「とは言っても、結局は部隊の運用次第なんだろうけどね」と思うのだった。


と、武雄とマイヤーの下に顔見知りがやってくる。

「二研殿。ご協力ありがとうございました。

 無事に2名を確保し(・・・・・・)1名を追跡しています(・・・・・・・・・・)。」

王都守備隊の第二情報分隊長のラックが報告してくる。

「で?第二情報分隊長殿。

 この極秘と言うか突発的な第二研究所の所長考案の最新兵器の試験を覗き見た者達はどこぞのですか?」

マイヤーが聞いて来る。

「・・・その前に二研殿。例の御身への襲撃の報告書を見ましたか?」

「手元に来ていませんが?」

武雄が「いつ来るの?」という顔をして聞き返す。

「・・・すみません。急がせます。

 端的に言ってあの貴族達はカトランダ帝国から資金を受け取り、こちらの情報を流していたのですが。

 第二情報分隊(我々)の調査ではそもそもはウィリプ連合国から来ていると推測しています。」

その言葉に武雄もマイヤーも驚きはしない。

2人とも「国家の悪だくみなんてそんな物」程度にしか思っていない。

「根拠は?」

マイヤーが言ってくる。

「いろいろな所から押収した書類を精査したのですが・・・あ。そう言えば前回の街中での警備局との裏稼業の殲滅ありがとうございました。

 ちなみにその書類と貴族から押収した書類が食い違っていましたよ。」

「・・・ハドリー家からコロバル商会に渡っている物品に不正が?」

「ええ。元々が不正なのですけどね。

 まぁ、中心はレルフ家という火事が起きた貴族なのですけどね。

 全体の流れとしてはウィリプ連合国からカトランダ帝国第2軍の高官に行き、商隊を通じてレルフ家へ。そこからハドリー家やファーディナンド家に指示、というか物が移動していたというのが王都守備隊(我々)の推測です。

 ハドリーはその資金を元にコロバル商会に援助していたという事でしょう。」

「そこからウィリプ連合国に繋がる・・・ウィリプ連合国でしか取れない物でもありましたか?」

「ええ。通常の商隊では持ち込みは禁止されている薬草ですね。

 個人での密輸は出来なくもないですが・・・関でバレるようになっています。

 貴族と言えど入手は困難なはずなんですけどね。

 そして裏稼業程度では入手はほぼ不可能な物です。」

ラックが武雄から目線を反らす。

その顔には「何の物かは言えません」と語っている。

「・・・まぁそこは気にしません。

 大まかな流れはウィリプ連合国が画策して、カトランダ帝国と(・・・・・・・・)我々を戦わせたい(・・・・・・・・)というのはわかりました。

 そして逆に言うなら、カトランダ帝国の高官の元にはこちらに帝国の情報を流しているという証拠が残っている(・・・・・・・・)という事ですね。」

「・・・でしょうね。

 面倒なのは我々に向こうからの情報が無い事です。

 これはこれからの調査によるかと。」

「・・・ふむ・・・

 貴族会議が怪しいですけど・・・私の同期も居るのですよね。

 付け込まれなければ良いのですが。」

「そこは何とも。

 ご本人達の理性を信じています。」

ラックが苦笑して答えるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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