第1047話 129日目 就寝前の報告。(拳銃を入手しました。)
第八兵舎の武雄の部屋。
「戻りましたよ。」
「あぁ~・・・湯浴みは良いです。」
武雄とミアが入って来る。
「タケオ。おかえり。」
初雪が出迎える。
彩雲は戻って来たのか部屋の隅で何もしないで置き物と化している。
パナはのんびりと本を読んでいた。
「はい。ただいま。
何かありましたか?」
「特には。
ユウギリが予定通り明日の昼過ぎに森に到着すると言って来た。
あとこの地のスライムについては・・・どうも2体いる感じがする。」
「2体?」
武雄がお茶を淹れて席に着き、初雪に顔を向ける。
「そう。狼っぽいのと・・・たぶん小さいのが居る。
でないとおかしい。」
初雪が首を傾げながら言ってくる。
「その考えに行きついた訳はなんですか?」
「・・・基本私に連絡で来ているのは狼っぽいのから。
でも私が一緒に向かわせたスライムからは常に2体が写っている。
上位種を見てこいと言ったのに常に2体写っているのがおかしい。
だけど2体目は小さくて外観の判別不能なので保留。」
「2体居る事を想定しておきます。」
「それと向こうから明日の夜にここの門の外の西側の森を指定されている。
問題ない?」
「ええ。時間は向こうが決めれば良いです。」
「わかった。
あとブルックがさっき持って来た。」
初雪が部屋の隅に置いておいた箱を武雄の前に持って来る。
「・・・?箱?・・・あ。小太刀を持って来るように言っていましたかね。
でも数が多いですね。」
「スズネから預かった。
小銃改4で拳銃の試作品らしい。」
「出来上がりましたか。」
武雄が箱を開ける。
1箱目には小太刀が鞘に収まった状態で1振り。
2箱目には布で包れた拳銃のようなフォルムの物。
「・・・」
武雄は包みを剥がし物を確認する。
前に鈴音に見せられた拳銃の4面図の通りの外見はそこにはなかった。
最終的にはベレッタ93Rのように銃身が伸びて水蒸気を外に逃がす機構(小銃改1と同性能)が追加されていた。
だが武雄的には「これもありじゃないかな?」と外見には思う所はなかった。
そして添付されていた説明書を読む。
「・・・えげつない仕様ですね。」
武雄が呟いてしまうのだった。
毎秒4連発可能リボルバー銃。
弾丸の補充は不必要の為、シリンダーを取り外す必要は基本的に無く。
持ち上げた瞬間に魔力を500使用し準備、1発撃つごとに魔力を75を消費し、手首の緩衝用にシールドとケアと拳銃の強化の常駐魔法で常に魔力を100消費している。
腰に下げているだけでも強化のみの消費で1日で50。
「・・・という事は、戦闘中はシールドの同時展開が35から30程度まで下がるのか。
・・・厚さを研究しないといけないですかね。」
武雄はそう言いながら箱に入っていたホルスターを取りだし、拳銃を差し込む。
「・・・前に短剣用のショルダーホルスターを買いましたけど。
あれに付けられるように改造して貰いましょうかね。」
武雄がホルスターを見ながら言う。
「・・・タケオ。ショルダーホルスターは扱いが難しいのでお勧めしません。
腰にあった方が便利です。」
パナが本から顔を上げて言ってくる。
「かっこ良さが・・・いえ。なんでもありません。
左腰に小太刀、右腰に拳銃としますか。
明日は昼までは王都守備隊の訓練場でも借りますかね。」
武雄が頷くのだった。
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第八兵舎の一室。
「・・・どうしようか。エンマ。」
「どうしようって・・・ねぇ?」
フローラとエンマはベッドに入りながら悩んでいた。
「そりゃ。体が元に戻っているのは驚いているけど・・・
今は考えられないかなぁ。」
「うん。あの恐怖はちょっと・・・
この小隊は皆ちゃんとしていて私達を対等に扱ってくれるから楽だけど街に行ったらどうなるか。」
「ブルックさん達は気にしていないと言ってくれているけど。
街の人達は最初は知らなくても私達に起こった事はいつかは知られるだろうね。」
「そうだね。
その時何て言われるかな・・・覚悟はしているけど・・・」
「私も覚悟だけはしているけど。
その時にどうなるかわからないわよ。」
「そうだよね・・・」
「当分は何もない事を祈るばかりよ。」
「うん。」
2人が寝始めるのだった。
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こっちは第八兵舎の別の部屋。
「という事があったの。」
ボーナがドナートに湯浴み場での出来事を報告していた。
「そうか。
体が元に戻ったのは嬉しい事ではあるが・・・」
「ええ。
流石にこればっかりはね・・・王家の方が聞いて下さって良かったわ。」
「そこは感謝しかないが。
あの2人結婚出来るのだろうか・・・」
「良い相手居るかしら?」
「そもそもエルフは居ないだろうな。
その中で相手をだろう?人間でも構わないとは思うが・・・
あの2人が選んだ男なら祝福はしてあげたいな。」
「そうね。
当分は様子見ね。
で。貴方。ジッロとどこに行ってきたの?」
ボーナがにこやかに聞いて来る。
「・・・飲み屋です。」
ドナートは「店で湯浴みもしたし問題ないはず」と焦っている。
「良い残り香のするお店ね。」
ボーナがにこやかに言うがドナートは冷や汗が止まらない。
「じょ・・・女性がいましたので。」
「人間?」
「はい。人間の女性です。
ブ・・・ブレア殿が気に入ったお店がありましたので、そこに行ってきました。」
「ブレア殿の?
何をしてきたのですか?」
「話を少しして酒を飲んだだけです。
い・・・いかがわしい事は何一つとしてしていません。
手も握ってはいません。
付き合いで行ってきました。」
「ほぉ。なるほど。
付き合いは大事ですね。」
「そう言って頂けるとありがたい。」
「もし手を出したら・・・子を身籠らせたら・・・」
「しません!
するならボーナにします!」
「その言葉信じますからね?」
「はい!」
何故か飲みに行って夫婦の絆が試されるのだった。
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