第1045話 風呂前。(占領政策について。)
「・・・領地運営ですか・・・
私個人としては東西の2つに分けた方が良いと思います。
そして西は対ウィリプ連合国向けの軍備地、東はファルケ国とカトランダ帝国向けの塩を作る王家の領地として。」
「・・・王家の領地?」
ウィリアムが聞いて来る。
「塩の精製は王家のみなのでしょう?
なら国内はウィリアム殿下領とニール殿下領で安定して供給させれば良いので、対外用の塩を精製する領地が必要です。
なので一応ニール殿下領としておくのが良いでしょうね。
ゆくゆくは・・・3家の内で余った男子が継げば良いのではないですかね?」
武雄がしたり顔で言ってくる。
「余った男子?・・・あぁ・・・そうか。
今の所、皆領地を引き継ぐだけの人数しかいないんだね。」
ウィリアムが頷く。
「ええ。5年後までにもう1、2人は男子が出来てもおかしくないと思いますよ?」
「それは・・・んー・・・なってみないとわからないかな?」
「王家の方々には頑張って貰いましょう。」
「そうだな。」
武雄が言うとアズパール王も頷く。
「さて。領地の運営方針は私的には特にありませんね。
奴隷の首輪をしていても見下さない、異種族だろうが見下さない、戦争した国だろうが見下さない・・・ぐらいでしょうか。
それに実際には専門家である文官達が決める事です。
実務者達が話し合った末に重税を課すならそれも正しいと思います。
あくまで私の一考えでしかありません。
私は甘いですから理想を言っているだけと言われるかもしれませんね。」
武雄が苦笑する。
「だが・・・理想を口に出来ない施政者も如何な物かな?
もちろん現実も見て貰う必要はあるが。」
アズパール王が顎をしゃくりながら言ってくる。
「要求が高いですね。
理想を語りながら理想に溺れるなとは・・・
この国の王立学院に行っていない学がない者には荷が重すぎです。」
武雄がヤレヤレと手を上げる。
「はっ!学院に行こうが行かなかろうが、ある者はあるし身に付かん者は身に付かんな。」
アズパール王が言い放つ。
「父上。軽く王立学院を貶めないでくださいね。
それを教える為の施設ですよ。」
「どうだかな。
タケオ達に対して慣例と称して暴行をしていた連中然り、パット然り、馬鹿な事をしでかすのは王立学院出身者ばかりだ。」
「その何倍も真面目で実直な者達を輩出していますよ。
宰相も局長達もですからね。」
ウィリアムが嗜める。
「むぅ・・・最近、ウィリアム発案の王都向けの政策が通っているんだが、どうしてだ?」
「文官達を言い含めて私の政策を潰していた貴族が居なくなりましたし、異動が確定したので王家への点数稼ぎでしょう。
それにタケオさんやエリカさんの政策が良く出来ているというのも1つの理由ではないでしょうか。」
「ふむ・・・在野の者達が台頭してきた事への危機感か。」
「ええ。
潰してばかりいては自分達の政策とタケオさん達の政策を見比べられる事になるので、王家からの政策を目立たせれば自分達の政策が目立たないとでも思ったのではないでしょうか?」
「・・・そんな訳ないのにな。」
「全くです。」
アズパール王の呟きにウィリアムが頷く。
「・・・」
武雄は「王都で仕事するのはやっぱりなしだな」と思うのだった。
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湯浴み場。
「あぁ~・・・
やっと居なくなったかぁ。」
ブルックが肩まで湯に浸かる。
「いや。別にお邪魔ではなかったですし。」
「王家と湯浴みなんて贅沢ですよ。
でもお疲れ様です。」
エンマとフローラが苦笑しながらブルックを労ってくる。
「ありがとうございます。
はぁ・・・まさか時間が変わっていたとは・・・これでのんびりだわ~。」
「ブルックさん・・・一緒に居たエリカさんは少し痩せましたか?」
アニータが言ってくる。
「そうだね・・・まぁ仕事も辛いだろうしね。
無理をしなければ良いんだけれど。」
「王家の相談役とか言っていましたよね。」
「そうだね。
重責だろうなぁ。私は出来ないですけど。
まぁうちの所長はエルヴィス伯爵家の相談役兼研究所所長兼王家の相談役だから同じ重責を背負っているんだと思うけど痩せないね。」
アニータとブルックがボーっとしながら言ってくる。
「キタミザト様は凄い肩書ですね。」
ボーナが苦笑している。
「王家の方々が手放さないんだわ。
本人は至ってマイペースなのがうちの所長の良い所ですかね。
王家だろうと局長だろうと嫌な事は嫌って言っちゃうし、王家や局長達もそれは知っているから結構本音を言っているぽいですね。
まぁ政治なんて騙し騙されだから言っている事が本当の事かなんてわかりもしませんけどね。」
ブルックがヤレヤレと手を上げる。
「はぁ・・・私達は村だったですけど似たような事はありましたしね。」
「所長の言葉ではないですが、人間だろうがエルフであろうが、付き合いの方法なんて代り映えしないのかもしれないですね。」
「そうですね。」
その場にいるブルックとエルフ達がうんうん頷くのだった。
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