第1044話 風呂前。(次は攻勢時。)
「さて。何だかんだと防衛戦では少ない犠牲で済み、カトランダ帝国方面軍が合流したとしましょう。」
「うむ。
次の展開だな。」
「ええ。今回カトランダ帝国が私達に共闘をほのめかした最大の理由ですからね。」
「そうだな。」
武雄とアズパール王が頷く。
「?・・・そう言えばなんでカトランダ帝国はアズパール王国でなく、ウィリプ連合国に攻め入るとしたんですかね?」
ウィリアムが根本的な事を聞いて来る。
「・・・?・・・ウィリアム殿下。何を言っているんですか?」
武雄が呆れている。
「いや・・・すみません。
魔王国方面の事しか見ていませんでした。ついでに領地異動の方にしか意識が行っていませんでした。」
ウィリアムが正直に謝って来る。
「はぁ・・・ウィリアムはこれで良いのかもな・・・
皇帝と少し話をしたのだがな・・・あの感じは・・・我らは囮だ。
ウィリプ連合国と一緒に攻めるのは確かに楽そうではあるが、7000名のアズパール王国兵士を相手にするのは犠牲が出やすい。
ならウィリプ連合国12000名がアズパール王国に侵攻している間に手薄になるカトランダ帝国とウィリプ連合国の街道を侵攻した方が犠牲者は少ないと考えているんだ。」
「相手を油断させてかすめ取るのですね?」
「言い方は悪いがそうなる。
それに向こうの皇族はアズパール王国の領土が帝国から譲渡されたという合意文章があるのを知っている節がある。
皇帝が全くその辺の話を振らなかったのも意図があるのだろう。
そしてカトランダ帝国としてはこちらとの戦争は長引かせる物ではないんだ。
我々は本気で魔王国の事を考えなければ勝てるからな。
無駄な犠牲を出さない方法がウィリプ連合国との戦なのだろう。
カトランダ帝国の問題は休戦協定を破棄させる名目だろうな。
いくつか方法はあるだろうが・・・」
アズパール王が考える。
「・・・その辺は外交局が考えるでしょうね。
さてと。カトランダ帝国方面軍が到着して数日後、カトランダ帝国がウィリプ連合国に侵攻したという話がウィリプ連合国軍に知れ渡ると・・・」
「対象の国々は我先に帰るという事になるでしょうね。」
武雄の言葉にウィリアムが苦笑する。
「・・・全数とは言わないまでも・・・3割、3600名から4000名が離脱すると予想しますが、その時が反攻の時でしょうね。」
「そうだな。
混乱に乗じて我らも戦端を開かなくてはならない。
狙うは・・・」
「カトランダ帝国に面している貴族軍でしょうね。」
武雄が考えながら言う。
「そうだな。
向こうが無傷で占領されれば今度はウィリプ連合国の奥の者達の国が狙われるだろうから混乱に拍車がかかるだろう。
だが、そうはいかないとも思っているがな。」
「そうですね。
結局の所、今回の侵攻において一番の利益になるであろうアズパール王国に面しているファルケ国軍が前面にいるでしょうからね。
道を譲ってはくれないでしょう。
カトランダ帝国方面の貴族が慌ただしく退場して行くのを見て行くしかないですが、それでも3割が一気に居なくなり、それが他国からの侵攻となれば兵士の精神的にはキツイでしょうね。
さらに時を同じくしてのアズパール王国からの攻勢・・・士気が下がりまくるのが目に見えます。」
「我らはそれまでは耐えに耐えているからな。
士気は高そうではあるがな。
で。タケオ。ファルケ国への侵攻だがな・・・どう見る。」
「陛下は5割と言いましたが・・・
占領地域の範囲は色々な考えを元に決めなくてはいけないとは思います。
ですが、私的には当初の目的通りに塩を作らせないために海沿いの街道を全て占拠する必要があると思っています。
なので・・・街道沿いに侵攻しますが、領主邸がある街は包囲のみで大部分は素通り、一気にドローレス国との国境を占拠、陣地化させるべきです。
海側全てを占拠するというのが私の中では理想だと思います。」
タケオが軽くファルケ国の領土を書き、街道の線を引き、占領した際の線を引く。
「・・・ふむ。」
「そしてウィリプ連合国との停戦をし、ファルケ国をアズパール王国の属国化およびカトランダ帝国との緩衝地帯とさせるべきです。
そしてドローレス国およびファルケ国との国境は1kmの幅の森を作り出させ、森の縁を国境とさせる事で国境の確定をさせるべきでしょう。」
「ふむ・・・不可侵とさせるのだな?」
「はい。目に見えての国境を作るのが一番わかりやすいと思います。」
「向こうの政治体制はどうするべきだと思う?」
「政治体制云々は・・・簡単に言って奴隷制は止めろと言った所で受け入れられないでしょうからね・・・向こうで反発し、戦争継続論が叫ばれても面倒です。
奴隷制についてはある程度折り合いをつける必要はあるでしょう。
まぁ戦後の補償はそれなりに頂くとしても属国化での納税はそこまで酷くさせる必要もないとも思います。
無理をさせれば反発が来ます。
ならそれなりにしてその後の塩等々の収益をしっかりと確保した方が健全かと思います。」
「そうだな。
搾取する必要はないか。」
アズパール王が頷く。
「タケオさん。新たに得た領地の運営はどうした方が良いと思います?」
ウィリアムが聞いて来るのだった。
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