第1037話 王城見学。(各局は何を狙っているのか。)
「つまりはだな・・・各局で持ち回りで教育をしてく。
例えば・・・外交局をしてから軍務局に行った際に概要を説明するとするだろう。
だが、公正な視点で教育材料を用意出来ていないと外交局での説明との齟齬が生まれて来る。
それがどんどん重なって行くと外交局と軍務局で考えている事の違いという物をジッロ殿はわかって来る。
当然、している仕事も目的も違うのだから少々の事は違って当たり前なのだが、根本が違った場合、ジッロ殿は所長に報告をするのが普通でしょう。
所長は真偽を確かめるために外交局や軍務局だけでなく王家、王都守備隊、総監局、人事局等々問い合わせをする。
そうすると各局の根本的な違いを所長経由で王家や王都の各局にまで知らされるとなる。」
マイヤーが説明している。
「もし陛下や王家の考えと違った場合は部局としての存在意義が疑われてしまうかもしれませんね。
となると。少なくともその5局では教育の為の下地・・・つまりは共通の価値を再度話し合ってから教育を実施するという事ですね。」
ブルックが考えながら言う。
「表立っては教育の為にはしないだろう。
建前として違う事を言い出すはず・・・だが、実際の所という所でその5局は王国の指針を明確にし、共通理念とするんじゃないか?」
ベイノンが言ってくる。
「それに誰かが何かを吹き込んでくることがあるならば、さっきの報告順序で知れ渡るか。
なかなかに質が悪い・・・監査を兼ねているような仕組みになってきましたね。」
アンダーセンが言ってくる。
「ま。5局は見られても問題ないと思っているのでしょう。
それとジッロさんは異種族雇用の採用試験で採用官をする事が求められています。
今の所、5局分ですけど。」
武雄が頷く。
「・・・えーっと・・・
異種族雇用の採用官とは?」
「面接に立ち会えという事らしいです。
これは総監局と人事局からの話ですけどね。
異種族が兵士になりたいと言って来た時に、人間種ばかりだと気後れするだろうとの事で魔法師専門学院在籍中であろうと、王立学院在学中だろうと、採用試験がある際は採用官の仕事を最優先で行って欲しいとの事です。」
武雄が言ってくる。
「あ。お母さん。それって私達がエルフだからかな?」
「そうね。」
エンマがボーナに言ってくる。
「どういうことですか?」
武雄が聞いて来る。
「ドラゴンと私達エルフにはある特徴があるのですけど・・・
隠されて居たり秘匿されていても、大まかに種族がわかるのです。
なので私達はビエラ殿を見た時にドラゴンとわかっていました。」
エンマが言うとベルテ一家が頷く。
「ちなみにアニータとミルコは・・・」
と武雄が見ると2人とも目線を外す。
「・・・あ~・・・エルヴィス領に行ったら教えてあげてください。」
「はい。わかりました。
たぶん見えてはいてもわかっていないだけでしょうから問題はありません。」
エンマが苦笑する。
「・・・5局が依頼してきたのはそういった事が」
「絶対知らないでしょう。」
マイヤーが言ってくる
「ですよね・・・ですが、立ち合いのお願いをされたのは事実です。
とりあえずジッロさんは立ち会って、正直に感想を述べてくれば良いでしょう。
良し悪しを決める必要はないですからね。
それは向こうが判断する事です。」
「はい。わかりました。」
ジッロが返事をする。
「なのでジッロさんはエルヴィス領に行ったらすぐに王都に来ることになります。
まぁ。王立学院には私の主家の御子息とうちの部下が居ますから、何かあればそちらに助力をお願いしてください。
あの2人なら何とかするでしょう。」
「は・・・はぁ・・・
ちなみに確認なのですが・・・エルヴィス伯爵家の御子息のお付でキタミザト様の部下が付くのですよね?」
ジッロが聞いて来る
「ええ。そうですよ。
彼女は獣人ではありますが、人間社会の見学が主な目的ですね。
気楽に過ごして欲しい物ですが・・・
まぁジッロさんは3年は学び舎ですから、気楽に勉学に励んでくださいね。」
武雄がにこやかに言うが、試験小隊の面々は「いや・・・キタミザト家の最上級戦力ですよね?」と思っていたりする。
「ちなみにジッロが子供でないのが理由とはなんですか?」
「・・・イジメが少なそうでしょ?
同年代の子供達だとイジメが激しそうですが、年上にそういった事をされるかというと・・・
大人な我々は種族ごときで差別はしませんけど・・・するかな?するのか?」
武雄が考える。
「ん~・・・ですが、子供が大人にするイジメも大概危ないみたいですが・・・」
「エルフだという理由でイジメかぁ・・・
私なら率先して友達になりたいですね。
長寿で大人ですからいろいろ知っていそうですし。」
武雄が楽しそうに言う。
「それは所長だからですよ。
普通なら遠巻きに見るのではないですか?」
ブレアが言ってくる。
「え~そうですかね?
・・・女の子からは言い寄られるんじゃないですか?
見た目カッコいいですし。後援組織がキタミザト家ですし。」
ブルックが言ってくる。
その言葉に男性陣が固まる。
「・・・嫉妬の嵐だな。」
「そうだな。異種族とかではなくイケメンに対しての嫉妬だな。」
「こりゃぁ・・・誰が最初に声をかけるのかに拠るな。」
「派閥化しそうだな。」
「おい・・・事前に知り合いの子供に声をかけておくか?」
「そうだな・・・少し声をかけるか。」
男性陣達は何か言い出す。
「・・・何だか王立学院の方も何かしていると聞いていますけどね。
あっちはジーナが〆るとか言っていましたかね。」
武雄が何気に言う。
「所長・・・〆ちゃダメです。
せめて寄り付く虫だけ処理する程度で過ごしてください。」
ブルックがガックリしながら言う。
「そう言えば王立学院は人事局、魔法師専門学院は軍務局の管轄だと認識していたのですけど違いますか?」
「王立学院は貴族会議及び人事局ですね。
魔法師専門学院は総監局及び軍務局になります。」
アンダーセンが言ってくる。
「・・・総監局?」
武雄が首を傾げる。
「ええ。実際は人事局と軍務局で管理しています。
貴族会議と総監局は監督部署としていますね。
どういった事がされているか確認しているはずです。
だからどちらの学院長も貴族会議と総監局から派遣されるのが通例みたいです。
あ。次期魔法師専門学院の学院長は王都守備隊からだったと思いますが・・・特例でしょう。」
「なるほど。そうなのですね。」
武雄が「トレーシーさんもそう言えば総監局だったか」と思うのだった。
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