第1035話 王城見学。(宰相の思惑。)
武雄とドナートとボーナとジッロは王城内を歩いていた。
先導は受付の警備兵。かなり緊張しているご様子です。
「おや?
・・・キタミザト殿。どうされましたか?」
廊下の反対側から顔見知りがやって来て声をかけられる。
「オルコット宰相殿。お疲れ様です。
人事局に行こうかと思いまして。」
「人事局?
ふむ・・・後ろの方々関係ですかな?」
「ええ。
王都の警備局で経験をさせようと思いましてね。
エルフでも問題ないか聞こうかと。」
武雄がにこやかに言う。
「・・・はぁ・・・キタミザト殿。本音はなんですか?」
オルコットが呆れながら聞いて来る。
「・・・予算・・・超過・・・です。」
武雄がうな垂れる。
「でしょうね・・・
2、3名ぐらいと言って向かった結果が8名ですからね。明らかに給金が足らないのはわかります。
策としては青年を王都の警備局に入れて給金を賄ってくれるよう依頼し、キタミザト家からは労働力を提供する。
王都側としては最高峰の王都守備隊ではなく、街中の警備や犯罪捜査等で異種族の雇用試験が出来る。
さらに・・・こう言ってはなんですが、首輪もあるしご一家はキタミザト殿の下にいるので、真面目に働いてくれるであろう人材が確保できるというのも受け入れやすいでしょう。
個人としては人間に対する接し方や犯罪に対する嗅覚、簡単な束縛術と剣技を習得させ、警備も出来るくらいの腕にする。
そして25年後に一家の下に戻し、自国に戻る際の護衛とさせたい・・・といった所でしょうか?」
オルコットが武雄が考えた事をズバリと言ってくる。
「・・・ええ。
ですが・・・どうでしょうか?」
「・・・私は良いと思います。
ですが、受け入れが出来るか・・・んー・・・
キタミザト殿。まずは魔法師専門学院はどうでしょう?
あそこなら月々小遣いも出ますし、勉強もしますから、人間社会の常識も付くでしょう。」
「魔法師専門学院・・・」
武雄が「頭になかったなぁ」と考え始める。
「種族的に魔法適性はありそうですが?」
「確かにジッロさんは魔力量が2000程度でしたが・・・」
武雄は「能力は満たしていても・・・回りとの年齢差がなぁ」と思う。
「2000・・・ふむ・・・
やはり入れてみてはいかがでしょうか。」
オルコットが再度勧めてくる。
武雄はここで不思議に思う。
オルコットが魔法師専門学院を勧めてくる事はどういう事なのかと。
王立学院は人事局、魔法師専門学院は軍務局の管轄だと認識していたのだが・・・
武雄は「まぁ。思惑は誰にでもあるか」と深くは考えない事にした。
魔法師専門学院へ入れ魔法の教育をみっちりとさせる事は確かにメリットはある。
「それも良いかもしれませんね。」
武雄が頷く。
「ええ。ご検討ください。
では。私はこれで。」
オルコットが去っていく。
「キタミザト様。」
ドナートが後ろから聞いてくる。
「私はどこでも構いませんよ。
魔法師専門学院も候補の一つというだけです。
ジッロさんがしたい事をしなさい。
とりあえず当初の目的地である人事局に向かいましょう。」
「「「はい。」」」
武雄達は移動するのだった。
・・・
・・
・
第八兵舎の第3会議室。
「ジッロは行き先決まったかな?
時間かかりすぎだよね。ダメだったのかな?」
フローラが呟く。
「キタミザト様が考えていたのが警備局だったっけ?」
エンマもお茶を飲みながら言ってくる。
「所長が居れば何処に決まろうと不当な事はされませんよ。
むしろ皆に歓迎されてそうです。」
ブルックが言ってくる。
「それもそうですね。」
エンマが頷く。
「すみません。時間がかかりました。」
武雄とドナートとボーナとジッロが会議室に入ってくる。
「「おかえりなさいませ。キタミザト様。」」
フローラとエンマが武雄に言ってくる。
「はい。ただいま戻りました。」
武雄達が席に付く。
「所長。どうでしたか?」
マイヤーが聞いてくる。
「当初の想定とは違いますね。」
「何かあったのですか?」
「・・・結論から言えばジッロさんはまず魔法師専門学院に2年間入ります。」
「まず?」
「ええ。
その後、王立学院に1年間入り国の仕組みの勉強、4年目から人事局、警備局、軍務局、外交局、総監局での仕事を順々に体験していき、所属先を決める事になりました。」
「・・・所長。なんですかそれ?」
ブルックが呆れている。
「現状の雇用方法だと面接もしくは試験の時に上司や部局長が対象者の適正を見極めるらしいですね。」
「はい。王都の各騎士団や地方騎士団も同様な採用方法かと思います。
確か文官の採用もそうだと聞いています。」
マイヤーが返事をする。
「・・・今回は各局を1年もしくは2年毎に異動をし、ジッロさんがしたい事と適性をみる事になりました。」
「また特殊な事を・・・」
アンダーセンが呟く。
「・・・これ・・・私が発案をしていませんからね?」
武雄がアンダーセンに目線を向ける。
「そうなのですか?
ではどこから言われたのでしょうか?」
「人事局です。
最初に警備局で雇って貰えるのか確認しに行ったら・・・まぁいろいろ説明されましてね。
ついでに各局・・・というよりもさっき上げた局長と担当官が呼ばれて話合いをしていたんですよ。」
「そうなのですね。
で、各局の思惑はなんだったのですか?」
マイヤーが聞いて来る。
「そうですね・・・
まぁとりあえず。お茶にしますか。
ボーナお母さんお願いします。」
「はい。わかりました。」
ボーナ達がお茶の用意を始めるのだった。
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