第1032話 第3皇子一家との話。3(見られている。)
「・・・あの。タケオさん。」
エリカが聞いて来る。
「はい。なんでしょうか?」
「さっきから・・・その・・・ビエラ殿に見られているのですが・・・」
エリカが困っていた。
実はビエラは大人しく座っていたのだが、武雄とにらめっこしている以外はずっとエリカを見ていたのだ。
エリカが右に行けば顔で追いかけ、左に行けばやっぱり追いかけていた。
「こら。ビエラ。何でエリカ様を追いかけているんですか?」
ミアがビエラの前で仁王立ちして怒っている。
武雄は「前から思っているんですけど、ミアはドラゴン相手に強いんですよね」と思っていたりする。
「あ~?」
「え?・・・そんな話は初めて聞きますね。
本当ですか?」
ミアもエリカを見る。
「あ~?・・・あ!」
ビエラが腕を組んで首を傾げる。
「ん~・・・クゥは何も言いませんでしたよ。」
「あ~・・・」
ビエラがやれやれと首を振っている。
「クゥが若いからわからないと言うのは良いのですか?」
「あ。あ?」
「まぁ。ビエラも初めてだからクゥではわからないと言われてしまうとそうですね。
でも他の者でも気がつきそうな気がするんですけど。」
「あ。」
「いや。人間ではわからないだろうと言われてしまうと『そうなのか』と言うしかないですね。
じゃあエルフはどうですか?」
「あ~・・・あ?」
「じゃあ。保留ですね。」
「あ。」
ビエラが頷く。
「ミア。ビエラ。話せますか?」
武雄が2人に聞く。
「ビエラの勘違いかもしれないので、確証が高くなったら話します。」
「あ。」
2人が言ってくる。
「・・・」
エリカが「凄く気になるんですけど」と微妙な顔をさせる。
「まぁ。確証が高くなったら報告してくださいね。
それとあまりエリカさんを目で追わない事。
緊張しちゃいますからね?」
「あ?」
ビエラが首を傾げる。
「人は・・・いや。生き物はずっと見られると居心地が悪くなる物です。
気になるならこそっと何気なくちょっとだけ見ることを勧めます。」
「タケオさん。単語は謙虚だけど見ることを許可していますよ。」
レイラが呆れる。
「見たいならこそっと見れば良いんですよ。」
「タケオさんもしているの?」
アルマが聞いて来る。
「私とミアは堂々と正面から見ます!」
「流石は主!その通りです!こそっと何て見ません!
ですが、ずっとは見ませんよね。」
「見ませんね。
ずっと見ていても面白くないですし、『何しているのかな』程度ですからね。」
「ですよね。」
ミアが武雄の肩に乗り「定位置。定位置。」と座る。
「・・・タケオさん。言ってる事が変ですよ?」
「そうですか?
堂々と1秒も見ていない事とこっそりとずっと見ている事・・・どっちが良いのでしょうか?
私はチラッと見る方をしているだけです。
ビエラはこっそりとずっと見ている事をすれば良いんですよ。」
「はい!」
ビエラが返事をする。
「その・・・私もチラッと見られる方が良いんですけど・・・」
エリカがビエラに方針を変換して欲しいと言ってくるのだった。
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こっちは街中の一行。
「凄い物と人の数だね。」
エンマが表通りを歩きながら言ってくる。
「はぁ・・・国の中心ってこうなんだね。」
フローラも周りを見ながら歩いている。
「ボーナ殿。エルフの国は違うのですか?」
ブルックが聞いて来る。
「エルフの中心都市も人々の往来はあるのですが・・・ここまでは・・・
この前の第2皇子一家領の街ぐらいです。
実際はもう少し少ないですけど。似ていますね。」
「そうなのですね。
まぁここは結構賑わっていますし、今はいつもより多いですね。」
「そうなのですか?祭りですか?」
「祭り・・・確かに。
実は第3皇子一家・・・王城に住まわれている王家のご一家で懐妊が発覚しましてね。」
「おぉ。だから人々が集まってきているのですね。」
「ええ。それも男女1名ずつ。
正室と側室が共に身籠られて、まぁこんなんです。」
「男女で・・・それは凄い事ですね。」
「ええ。それにやっと・・・8年越しのお子様ですから。
もう街が浮かれているんですよ。
それに国としては王家全3家で懐妊したんです。
第1皇子一家も第2皇子一家も皇子です。
なので今年は国中が吉事満載なんです。」
「はぁ・・・凄いですね。そんな奇跡があるんですね。
キタミザト様が王城に行ったのはその挨拶なのですか?」
「・・・ええ。
今所長は第3皇子一家に挨拶に行っています。」
「貴族だから吉事の挨拶も大切ですよね。」
「そ・・・そうですね・・・
挨拶は何回しても良いんでしょうね。」
「王家かぁ。煌びやかなんでしょうか?」
エンマが聞いてくる。
「アズパール王家は他の国々からすれば質素ですよ。
見栄を張る所は張りますけど・・・食事もそこまで豪勢ではないですし。
着る物も式典では豪勢にしますけど、普段は至って普通です。
ま。街中の民からすれば生地も良いし、仕立も良いのは当然ですけど、そこまで華美ではないですね。」
「偉ぶっていないのですね。」
フローラが聞いてくる。
「これ見よがしはしないですね。
こっそりと街中に出て来る人達なので・・・王都守備隊は大変ですよ。
皇子妃殿下なんて気が付いたら居ないし!」
「あはは。大変だったんですね。」
「ええ。
ま。ご懐妊されてからは王城で大人しくしているとは今の部隊から聞きましたから・・・大人しくなったのでしょうね。」
「どんな方々何でしょうね。
何だか楽しそうな方々なのですが。」
「ええ。楽しいですよ。
気さくですし。民への理解も文官達への気遣いも武官達への感謝もしてくれる『王の器とはこうだ』と示してる方々ですからね。
極稀に暴走して王城から抜け出すぐらいです。」
「あはは。楽しそうですね。」
エンマが楽しそうに言うのだった。
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