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第1025話 王都で報告会の後(武雄と試験小隊。)

第八兵舎の第3会議室。


「戻りましたよ。」

「所長。お疲れ様です。」

「お疲れ様です。」

マイヤーとアンダーセンが残っていた。

「他の4名は?」

「奥さんの所に帰しました。」

「そうですか。

 ま。当分は何もないと思いますので・・・のんびりで良いでしょう。」

武雄が考えながら言う。

「何事もなければ良いですね。」

「ええ。

 他の面々は?」

「就寝させました。

 何だかんだ言っても旅路でしたし、王都ですからね。

 緊張しているでしょう。

 あと第八兵舎の警備は警備局がしているそうです。

 こちらも打ち合わせは終わっています。」

「わかりました。」

武雄が頷く。


「所長。先ほどの議事録になります。」

「はい。ご苦労様でした。」

ブルックが武雄に数枚のレポートを渡す。

「いかがでしたか?」

マイヤーが聞いて来る。

「・・・あの3名の待遇は今最終審議中と言った所でしょうね。」

「総長が汗をかきながら人事局と話し合っているのが目に浮かびます。」

ブルックが苦笑する。

「具体的には何か言っていましたか?」

「金貨4枚でしたか?」

「はい。

 ですが・・・金貨3枚から金貨3枚と銀貨5枚ぐらいで収まりそうではあります。」

アーキンが言ってくる。

「ふむ・・・

 ヴィクター殿達はいくらですか?」

「2人での給金は全部で金貨6枚と家賃補助として銀貨7枚、そして引くのがキタミザト家(うち)への返済と言う名の積立金として金貨1枚と家賃が金貨1枚です。

 実質の手取りは金貨4枚と銀貨7枚ですね。」

「家賃補助ですか?」

「何ですかそれは?」

マイヤーとアンダーセンが聞いて来る。

「・・・普通は家賃は全額自腹だそうですね。」

「「ええ。」」

「ヴィクターとジーナは私が補助しているだけです。」

「何故ですか?」

「あの2人の能力で金貨6枚は安すぎでしょう。

 ですが・・・収入が今の所ないので補助という形でのみで増額をします。

 いつでも交渉で止めれるお金ですね。」

「・・・世知辛いですね。」

「キタミザト家の収入がある程度上がれば給料を上げられるんですけどね・・・

 あ。それは研究所もそうですからね。」

「ですが、所長。前にも言いましたが、家賃の時点で相当エルヴィス家にはご助力頂いています。

 実質金貨1枚以上は皆の暮らしが楽になるはずです。」

ブルックが言ってくる。

「それは現状でという事です。

 数年は今のまままで良いかもしれませんが、エルヴィス家がある街の価値が上がれば物価も家賃も上がるでしょう。

 そういった時にうちの給与も少しずつ上げられるくらい収入を確保しておかないといけないのですよ。」

武雄が皆の顔を見ながら言う。

「その為にいろいろと手を出しているのですよね?」

「趣味半分ですがね。

 上手く行けば良いですが、全てが上手く行くとも限らないでしょう。

 やれることは全部やる。

 良い事も悪い事も経験していけば良いでしょうね。」

「・・・今の所、所長の中では順調なのですよね?」

「順調ですね。

 ウィスキーやトレンチコート、ウスターソースまで手に入って、とても売れそうな気配です。

 販路の拡大と供給力の向上に力を入れていく段階ですね。

 ベルテ一家はまだまだ先ですからその間に研究の方で盾の成果を出さないといけませんね。」

「目処は付いているのですか?」

「陛下には小銃対策としてフルプレートに使われている鉄板の厚さの鉄板を盾にする方法を考えているとは言いましたが・・・実際の所、具体性はありませんよ。

 これから研究員と話し合いをしていかないといけませんね。

 それと試験小隊は武具の評価基準探しですね。」

「所長。それ皆で何度か話したのですが・・・難しいのですけども。」

「前の盾の試験方法は再考させていましたね。」

「ええ・・・数値で評価出来るような方法ですが・・・

 所長が言っていた貫通するまで剣を垂直に落とす試験をしその高さを記録するとか、何個の盾を用意し平均値を出すとかなのですが・・・」

アンダーセンが難しい顔をさせる。

「ふむ・・・難しいのですね?」

「はい。

 所長。もう少し何かありますか?」

「盾の基準ではなく、剣の基準を作れば良いのではないですか?」

「盾でなく剣で・・・ですか?」

「ええ。木製の盾・・・いや盾と言うからわからないのですね。

 例えば・・・厚さ5㎝で幅20㎝、長さ50㎝の板を用意する。

 その板の両端にレンガを積み板を乗せる。

 板から高さ1mの上から垂直に落とし10㎝貫通する(・・・・・・)事が剣の基準とするとします。

 では逆の盾側から見ると・・・」

「同条件で10㎝貫通する物が基準となると。」

マイヤーが言ってくる。

「ええ。

 ただし両方の仕様・・・木の種類。木目が横なのか縦なのか。レンガはどこのを使うのか。

 剣の重量は1mの高さ上げる基準は持ち手なのか、剣先なのか。

 ナイフ、ショートソード、ロングソード・・・どれも同じで基準で良いのか。

 そこを考えるのです。」

「・・・所長。1mにする根拠は何ですか?」

アーキンが聞いて来る。

「素人考えですけど・・・振り幅・・・いや落下幅です。」

「落下幅ですか?」

「この国の兵士の平均身長は知りませんが・・・

 160~180㎝と考えると腕の長さは大体は片腕60~70㎝と想定出来ます。

 それを頭の真上から振ったとして大体腰ぐらいまで、上下の運動量だけ見れば大体1mでしょう。」

武雄が考えながら言う。

「所長・・・

 じゃあ。所長は頭の上から剣を放して、10㎝も相手の盾に刺さる剣を基準に考えろと言うのですか?」

ブルックが呆れている。

「・・・ええ。

 アンダーセンさん。兵士は頭の中では戦闘の経験上、相手の剣は盾で跳ね返しているでしょうか。」

「はい。そうです。」

アンダーセンが頷く。

「だから基準が作れないのですよ。

 盾は剣の衝撃を防ぐ物と最初から考えるから『跳ね返ってしまう物をどうやって測定するのか』と訳がわからなくなっているのです。

 跳ね返すのではなく貫通力をどれだけ(・・・・・・・・)弱められるか(・・・・・・)なのです。

 結果として貫通に至らないから跳ね返していると見るべきなんですよ。

 紙にペン先を押し付けたらどうなりますか?」

武雄が1枚の紙の両端を持ってアンダーセンに向ける。

「穴が開きます。」

「なら・・・この束なら?」

武雄が紙を束ねる。

「・・・無理です。」

「そうですね。

 でももっとペン先が尖っていたら穴が開きますね。」

「はい。」

「厚紙か薄紙か・・・紙の種類によっても違いますよね?」

「はい。」

「盾も同じです。

 アンダーセンさん。難しく考える必要はありません。

 基準なのです。跳ね返る必要(・・・・・・)はないんですよ。

 受け止められれば十分です。」

「わかりました。

 皆で考えます。」

「ええ。そうしてください。

 あ。そうだ。マイヤーさん。」

「はい。何でしょうか。」

「私は今日も含めて王都に3泊する予定です。

 なので明後日の昼過ぎまでに今回の出張報告書を提出してください。

 最低でも王家用と自分達用(正副)の2通を作る事。

 内容はマイヤーさんの報告書を清書の形でも結構です。

 それと奴隷商組合で話をした偽装話は絶対に入れる事。

 外交局がそれを元に戦略を立てます。

 あと皆にも言っていますが、赤スライム等のスライム関連(・・・・・・)の話は抜く事。

 わかりましたか?」

「内容は理解しましたが・・・明後日ですか?」

「ええ。総監殿(・・・)

 部下に指示をしなさい。報告書の表書きは私とマイヤーさんの連名で記載をします。」

「了解しました。

 今回同行した試験小隊に指示を出します。」

マイヤーが「命令系統を試すのですね?」と言った顔をさせて頷く。

「はい。お願いしますね。

 それとアーキンさん辺りからエルヴィス領へ異動してくる隊員の為の歓迎会要領書(・・・・・・)が出ていませんか?」

武雄がアーキン達を見ながらマイヤーに言う。

「いえ・・・その話は来ていませんね。」

マイヤーもアーキンを見る。

アーキンもブルックも「あはは」と苦笑している。

「試験小隊に確認する事。」

「はい。わかりました。」

マイヤーが頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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