第1023話 王都で報告会の後(帰宅途中のタケオ達。)
武雄達は第八兵舎への帰路をのんびりと歩いていた。
途中で厨房によってお菓子を貰い受けたのはご愛敬で。
「エンマさん。大丈夫ですか?」
武雄がエンマに聞いてくる。
「大丈夫ですよ。
キタミザト様。さっきみたいに呼びつけて良いのですが・・・」
エンマはビエラを抱っこしながら歩いている。
「まぁ表立った時はしますけど、基本はさん付けですね。」
「そうですか。
そう言えば・・・キタミザト様。なんで私とフローラが『一等』だと知っているんですか?
あれってどう言った意味なんですか?」
「・・・え?」
武雄が止まる。
「ボーナに聞きましたか?」
「・・・いえ。話の流れ上そうした方が印象が強いだろうと思ったからですが・・・」
そう答えながら武雄は考える。
心では「この話題から逃げ切らなくては」と思っていたりする。
「・・・意味は知らなくても平気ではないですか?
一等だ二等だと私はエンマさん達に差を付けませんよ。」
「そうですか。」
「案外見た目と若さかもしれませんね。」
「ボーナに怒られますよ?」
「はは・・・今の事は内密にお願いしますね。」
「ふふ。しょうがないですね。」
エンマが歩き出す。
「 ・・・ブルックさん。集合!」
「ん?はい。」
ブルックが近づいてくる。
・・
・
武雄とブルックが皆から少し離れて歩いている。
「どうしましたか?」
「パナ。エンマさんとフローラさんは港に到着前の状態なのですね?」
「私のケアを信じてないのですか?
しっかりとかけています。
完璧です。完璧に1か月前にしています。」
パナがポケットから顔を出して言ってくる。
「そ・・・そうですか。」
武雄が目線が泳いでいる。
「所長。どうしたのですか?」
「ブルックさん・・・2人が生娘の状態まで戻っている可能性があります。」
「いきなり何を言って・・・て所長はこの手の話はしませんよね。
本当ですか?」
「それとなく聞いてあげてください。」
「パナ殿で良いのでは?」
「パナが行ったら誰の命令で来たか・・・バレるでしょう?
私は上司で異性ですよ。
この件は思い付かなかった事にします。
・・・しっかりと確認しておいてください。」
「確認って・・・私、女ですよ?」
「同性だから話しやすいのでは?」
「そんなわけないでしょう。」
「・・・ブルックさん。
最初は凄く痛い事が多いというのは知っています。
ブルックさんやフォレットさんはこの痛みは苦くも淡い思い出かもしれません。
ですが、エンマとフローラはこの痛みが別の意味になってしまうのです。
心の傷はなかなか癒せないでしょう。
自分の過去を知ってもそれでも好きだと言ってくれる者が現れ、互いに好きになり、体を重ねようとしたらその痛みがある。
自分達には無いはずの痛みですよ?
それが切っ掛けで思い出したくもない物を思い出したらどうするのですか?
エンマやフローラも傷付くし、相手も傷付けてしまうかもしれません。
だから、今の内に自分の体をしっかりと確認させる必要があるのです。
そうする事で身構えることが出来るでしょう。」
武雄が優しく言う。
「所長の言わんとしている事はわかります。
が、なんで私ですか?ボーナ殿が」
「ブルックさんは自分の母親に赤裸々に言われたいですか?」
「・・・嫌ですね。
言われたら死にます。」
ブルックが無表情で言ってくる。
「適任は第二研究所ではブルックさんしかいません。」
「手段は選ばなくて良いですか?」
「・・・いや選びなさい。
私に出来る事なら手配はして上げます。」
「・・・王城に大きい湯浴み場があるのですが・・・そこは使えますか?」
ブルックが目を煌かせて言ってくる。
「私は知りませんが・・・わかりました。聞いておきます。」
武雄が頷く。
「はぁ・・・でもそこ滅多に使えないので違う事を考えておきます。
近日中に計画を出します。」
「使えないのですか?」
「はい。大きい湯浴み場は確か王家の夜会か他国の使者が滞在する時しか使用しないと言われているのです・・・
どちらにしても私達では入れないんです!」
「つまりは・・・入りたいと。」
「はい!是非に!」
「まぁ・・・厄介事を頼むのですから私も動きますよ。」
武雄が腕を組んで考える。
「期待しても?」
「いや・・・半々でお願いします。
流石に王家と来賓用ですからね。無理と言われてしまうと無理ですからね。」
武雄は「誰に頼めば良いのかな?」と考える。
「ですよね。流石に所長でも難しいですよね。
とりあえずどうやって切り出すか何通りか考えます。」
ブルックが諦めながら頷くのだった。
「キタミザト様?」
エンマが振り返って聞いて来る。
「はいはい。
行きますよ。
今日はエンマが一番大変でしたからね。
少し多めに食べて良いですよ。」
「ありがとうございます。キタミザト様。」
エンマが笑顔を向ける。
「タケオ!あー!」
ビエラが「今度はエンマを特別扱いか!」と怒る。
「主。ビエラはエンマを特別扱いしていると言っていますよ。」
「ビエラ・・・今日はビエラは働いていないでしょう?
一番頑張った人が一番報酬を貰えるのは当然です。」
「あ?」
ビエラが「頑張れば良いの?」と武雄を見る。
「ちなみに頼んでいない事をしても頑張ったとは思われない事は多々あります。
ビエラ。ちゃんと言いつけを守っていればお菓子はちゃんと用意しますよ。」
「あ~♪」
ビエラが「ま。用意するなら良いよ♪」と満足顔を向けるのだった。
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