第1021話 王都で報告会。6(仕切り直しでベルテ一家の事。)
武雄が困惑しているのを皆が見ている。
「はぁ・・・ウィリアム。
疲れたぞ。」
アズパール王が隣にいるウィリアムに言ってくる。
「・・・さっきの話・・・
最後のはヤバいですよ。衝撃が酷いです。」
「そうだな。
タケオが連れて来たエンマの顔を想像していたが・・・」
「僕もですよ。
まさか最後に人間を想像させるとは・・・・はぁ・・・」
「最後誰を想像した?」
「アルマ達に言わないでくださいね。
エイミーです。」
「我もだ。
エイミーならタケオが言った行動をしかねない。
というよりする想像しか出来ん。」
「ええ。全くです。
はぁ・・・疲れました。」
アズパール王とウィリアムが雑談をしながら休憩している。
こっちは貴族会議の面々。
「・・・うちの娘の顔が過ぎってしまった。」
「あーぁ。目が真っ赤だぞ。」
「はぁ・・・酷い話を聞いた気がする。」
「心臓が痛い・・・」
「クラーク議長。平気そうですね。」
「・・・心臓止まるかと思った・・・
生きてるよな?」
「大丈夫。顔も動いていますし・・・うん。冷や汗もばっちりかいています。」
皆が各々勝手に話している。
「・・・あぁ・・・これは敵に回せないな。」
「全くだな。
今回は反対票はなしで行くしかないだろう。
この雰囲気を敵にしたら大変な事になるだろう。」
ヒソヒソ話す者達も居たりする。
局長達。
「帰って末娘を抱きしめたい。」
「それは終わってからだぞ。」
「全くだ。
俺も孫娘の顔を見たくなったな。」
「外交局長。
この雰囲気は凄いですね。」
軍務局長が聞いて来る。
「そうですね。
人事局長も感心しているようでしたが?」
「感心どころか感動していますよ。
ま。正直な所、キタミザト殿が貴族会議入りしなくて本当に良かったと思っています。」
「あぁ・・・確かに。」
「あの方が貴族会議に入っていたら各局は大変でしたね。」
「全くです。」
局長達が違う意味で安堵していた。
・・
・
休憩時間が終わる。
「さて。時間になりました。
キタミザト殿。続きをお願いします。」
オルコットが武雄に声をかける。
武雄は壇上で待っていたので説明を再開するのだった。
「はい。
それではドローレス国でのベルテ一家の話の続きですね。
我々がベルテ一家を見たのは闘技場でとなります。
その時のベルテ一家は契約者と『15戦勝てば解放される』との条件で戦っていました。
確か・・・13戦目ですね。
ちなみに相手はオーガが2体でした。」
武雄が言葉を終わらせ自身が持って来た資料をめくる。
「ふむ。
軍務局長。戦力的にどうだ?」
アズパール王が軍務局長に聞く。
「そうですね。
5名で2体のオーガ・・・なかなかに厳しい戦いでしょう。
特に戦闘経験が浅いとなるとやり方によっては負けるかもしれません。」
「ふむ。
で。タケオ。どうなったのだ?」
アズパール王が武雄に聞いて来る。
「負けましたね。」
武雄はあっさりと言う。
「そうか。」
「負けるように仕向けられていましたし。」
「ん?どういう事だ?」
「ベルテ一家は前衛に父親と兄の2名。後衛に弓を用意し母と妹の2名で戦っていました。」
「んん?エンマはどこにいる?」
「エンマはその時すでに下半身不随と左腕の不随を受けており、立ち上がる事すら出来ません。
ま。標的にすらならない・・・置物ですね。」
武雄が感情無く言い放つ。
エンマは顔を伏せている。
「ちょっと待てタケオ。どういう事だ?」
アズパール王の目に怒りが宿っている。
「一家を引き取ってからエンマの母親に確認はしましたが、ベルテ一家の戦闘条件は15戦勝てば解放。
ただしケアは1日2回という条件だったそうです。」
「・・・タケオ。つまりは・・・」
「1回の戦闘で3名以上が怪我をした場合、優先順位を設けないといけないという事です。
エンマは両親と兄妹の為に自分の回復は後回しで回復はほとんどされていません。」
「という事は・・・」
「13戦目の状態ですが、父親と母親は目立っての外傷はなし、兄は片腕に何かしらの故障で満足に動かせない状態。妹は足に故障を抱えて満足に走れない状態で・・・そして自分は動けない。
この闘技場では、一方が虐殺されるのも見世物だという事です。
見ていて気分が良い物ではありませんでした。
特に人間と変わらない外見ですからね。
なおさらです。」
「・・・戦争中なら意識を変えられるがな・・・嫌な物だな。」
「全くですね。
で。オーガに負けたのを確認してベルテ一家の購入をしようと動きました。」
「うむうむ。良いぞ。タケオ。」
アズパール王を筆頭に皆が武雄の行動を良しと認める。
「・・・丁度、ベルテ一家の契約主が闘技場に居ましたので、購入交渉を始めようと施設の方にお願いして会談の場を設けさせて貰えるようにお願いをしました。」
「ふむ。真っ当だな。」
「ええ。私は真っ当な事しかしていません。」
武雄が何食わぬ顔で言い放つ。
席に座るビエラとフォレットが「壁に穴開けてた」とジト目をしながら聞いている。
「上手く行ったというのはこの場にエンマが居る事でわかるがな。
相手はどんなだった?
こんな戦いを用意するんだ。まともではなさそうだがな。」
「交渉相手としてはカファロと言う街一番の裏稼業主で・・・問題は同席者がエマ・ドローレス。
ドローレス国の娘が居ました。」
武雄が説明し出すのだった。
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