第1017話 王都で報告会。2(まずはビエラの事とファルケ国での事。)
武雄が各町で会った人たちの話をしていく。
アーキンは武雄が見ている資料を簡単に写した物を見ながら黒板に書いていく。
「・・・以上がウィリプ連合国で会った人の話になります。
ここまでで何かご質問がある方はいますか?」
武雄が会議室内を見ながら言う。
皆が困惑している。
ま。旅の初めからビエラの素性を話しをしている時点で皆困惑しているのは明白なのだが、武雄は気にもしないで一気に話をしていた。
「人事局です。
キタミザト殿。その国境を越えてすぐに盗賊団に会われたという所ですが、規模的にはどうでしたか?」
人事局長が手を上げて言ってくる。
「規模的には・・・向こうの人員は15、6名ですが、そこに座っているビエラが居ますから・・・1騎士団レベルかと。
ビエラを除いた場合、討伐は簡易だったでしょう。」
「軍務局です。
その・・・クゥ殿の母親なんですよね?
大丈夫ですか?」
軍務局長が聞いて来る。
「・・・大丈夫かどうかはこちらの態度によりけりでしょう。
これはクゥを前回連れて来ましたが、その時と変わりはありません。
今は言語を勉強中ですが、結構喋れますよ。
あとフォークとナイフも使えるようになりましたし、学習意欲は旺盛です。」
「はぁ・・・」
「ご所望なら明日にでも成獣化をして貰って、第2騎士団に当てますか?」
武雄が「ビエラがドラゴンと信じられないなら当てるよ?」と言い始める。
「いや・・・結構です・・・」
「・・・いつでも言ってくださいね。
そうそうドラゴンとの訓練なんて出来ませんから。
死の恐怖は体験してこそ意味があるでしょう。」
「・・・検討します。」
軍務局長がガックリとする。
「タケオ。
クゥ殿に続きビエラ殿をエルヴィス領に招くのか?」
アズパール王が呆れながら言う。
「・・・元々ビエラの目的地がウィリプ連合国からエルヴィス領のクゥの所までの旅ですからね・・・
遅かれ早かれ来ていたでしょうね。
先に会ったのは結果として良かったのでしょうね。
いきなりこの姿で来られてもエルヴィス家の兵士では対応出来ないでしょう。」
武雄が「どうやってドラゴンと見分けるの?」と言いながら呆れる。
「それもそうだな。」
アズパール王も苦笑しながら頷く。
「王都に留めますか?」
「王都に置いてもなぁ・・・ビエラ殿が欲しい物は与えられんだろう。
上手くエルヴィス伯爵に説明して穏便に過ごして貰え。」
「了解しました。」
武雄が「王都にいる?」と聞くとアズパール王が「いらん」と拒否を示す。
「・・・キタミザト殿。知っていたんだ。」
エンマが驚きながら呟く。
「あ~?」
ビエラがエンマを見ながら「タケオ達は知ってたよ?」という目をしている。
「まぁ今にして思えば、当然と言えば当然なんだけど・・・確認はしているか。
あ。私達エルフはわかっていましたよ。」
「あ。」
ビエラが「わかっていなかったらエルフじゃないよ」と頷く。
チラッとエンマはブルックを見るが驚きもしないで議事録を書いている。
「ん?どうしましたか?」
「いえ・・・ビエラ殿の事を驚かないなぁと。」
「あぁ。ビエラ殿のお子様のクゥ殿はもう一緒に生活していますしね。
ドラゴンは聞き分けが良いので慣れるのは早かったですよ。
所長の下にドラゴンが1体増えようが今さらですよ。
どちらにしても所長に逆らうとドラゴンとの死闘ですし・・・」
ブルックが訓練場を作っている時のクゥを思い出しガックリとする。
「はは・・・ドラゴンが懐いているのですね。」
「ええ。
所長の周りはドラゴンや妖精等々珍しい魔物が多いので・・・人間てちっぽけなんだなぁと再認識をしますよ。」
ブルックが遠い目をする。
エンマは乾いた笑いしか出来ないのだった。
「さてと。ビエラ殿はキタミザト殿管轄として。
その後ですね。
二研の試験小隊の面々とキタミザト殿が街に出た際のファルケ国領主邸がある街の実情ですね。
外交局等から報告は受けていますが・・・」
オルコットが考える。
「農村部と都市部での意識の違いですね。
帰路の時に同行を始めた・・・えーっと・・アスセナ殿でしたね。
彼女には聴取は出来そうですか?」
外交局長が聞いて来る。
「構いませんが・・・特に何かしていたわけではありませんよ。」
「いえ。そういった一般の生活でお聞きしたい事も我々はあるのです。
明日。お時間を頂いても構いませんか?」
「ええ。わかりました。
滞在中に予定を組みます。」
「はい。お願いします。」
「それと・・・侵入者に会ったのだな?」
アズパール王が聞いて来る。
「はい。
王都守備隊の第一情報分隊の方とも会っていますし、報告に戻っていると伺っています。
報告は受けましたでしょうか。」
「ああ。
それとな。ルイ・セイジョウに話した内容は外交局に持って行っている。」
「はい。
外交局の皆さま!後はお願いします!」
「承っています。
人事局と一緒に目下偽装準備中です。」
「それとアルダーソン男爵とバビントン男爵には情報漏洩に対する警戒網の構築を依頼しています。」
外交局長と人事局長が報告してくる。
「重ね重ねよろしくお願いします。
アルダーソン男爵から何か言われていますか?」
「・・・情報漏洩については『でしょうね』だそうですよ。
相手がわかっているのでそれなりに対処するそうです。」
「流石、一研。わかっていてくれて何よりです。」
武雄が笑顔で頷くと会議場の皆も軽く笑うのだった。
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