第1008話 128日目 朝の驚き。(キタミザト家の準備。)
武雄達が泊まっている宿での朝食。
「あぁぁ♪」
「はぁぁぁ♪」
「美味しい♪」
「これはまた違った味わいがありますね。」
「うんうん。これは良い。」
武雄達の朝食にキーマカレーサンドが出ていた。
皆は満面の笑みで嬉しさを表している。
「料理長。すみません。」
「いえいえ。
皆様が食べたそうな顔をさせていましたので作らせて頂きました。
キタミザト様。どうでしょうか。」
「キーマカレーパンにスクランブルエッグとベーコンにスープですね。
朝から力がちゃんと出せそうです。」
「はい。
しっかりと食べて頂ける内容にと考えました。」
「私達もこれで王都まで問題なく行けそうです。」
「昼食の方も用意は終わっております。
殿下にお聞きしたカツサンドを作ってみました。」
「カツサンドまで・・・ありがとうございます。
それにしてもキーマカレーでこの様子となると昼食の時の驚きようが楽しみになりますね。」
「はは。
お気をつけて行ってらっしゃいませ。
そしてまたのお越しをお待ちしております。」
「ええ。
王都に出張に来た際に面白い話をしに来たいものですね。」
武雄と料理長が皆を見ながら挨拶を交わすのだった。
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エルヴィス家の総監部の一室にて
「お父さま。
研究所の方々の部屋についての契約書控えですが、この冊子にまとめました。」
「どれどれ。」
ジーナが渡した冊子をヴィクターが開き中を確認する。
「原本はアーキン様から皆様に渡すのでしたね。」
ヴィクターが一枚一枚めくりながら目線を上げずにジーナに確認する。
「はい。
今回皆様に王都で渡すとの事です。
またアーキン様4名の下宿先の大家様より評価を頂きましたので冊子内に入れています。」
「・・・下宿先も問題ないようですね。」
「お父さまの方はいかがですか?」
「研究所の建物は現在2階まで出来上がり3階が始まろうとしています。
通りを挟んだ向かい側の倉庫もとい文書保管所の2階が始まるのでこちらの3階が終わり次第渡り廊下が始まる予定ですね。」
「順調なのですね。
着々と進んでいるのですね。」
「第二研究所は・・・だな。」
「特産品祭りですね。」
「そうだな・・・アリス様の報告を聞いたな?」
「鶏肉に細切りしたジャガイモをまとわせ揚げる『ミノムシ』という料理との事でした。
アリス様的に新感覚だったようで美味しかったという話でしたが・・・」
「そうだな。
果たしてどのくらいの量を用意すれば・・・」
「あとで総監部の担当の方に聞いてきます。
それと費用についても同時に聞いてきます。」
「そうだな。
それとエルヴィス家の料理長と段取りについても話さないといけないな。」
「はい。
現状としては伯爵様の要請でアリス様の感想を元に作り出そうとしていると伺っています。
上手く出来るのでしょうか。」
「主は相変わらず簡単に作って来たという話だったが・・・・」
「ご主人様は天才ですから。」
「試食の際は同席させて欲しいと思うな。」
「そこは抜かりなく!」
ジーナの目の縁が光る。
「それに3月18日が挙式、19日が特産品祭り、20日がスミス様の出立・・・
駆け抜けるのですね。」
ジーナが予定を書きながら聞いて来る。
「・・・そうだな。
今日が3月3日・・・ジーナも王都への準備があるだろう。準備はいつする?」
「それなのですが・・・
衣服以外は王都で用立てようと思います。
メイド服を数着追加で作ろうかと思います。」
「わかった・・・
これはお付だからエルヴィス家に請求なのかどうか・・・これも打ち合わせが必要だな。」
「はい。
あとでそれとなく聞いてみます。」
「あぁ。頼む。
・・・ジーナが居なくなったらどうしたものか。」
ヴィクターがため息を漏らす。
「ご主人様に追加雇用をお願いしたいですね。」
「・・・そうだな。
確か。予算上の残りが・・・んー・・・」
ヴィクターが冊子を1つ取り出し中を見て顔を曇らせる。
「エルフ等の一家とお茶を作る2名・・・農業関係者の費用を含めましたが・・・
1人雇えるでしょうか?」
「・・・んー・・・
主にこの収支を見て貰わないといけないな。」
ヴィクターが悩む。
「はい。
では。次回の彩雲の定期便に乗せますか?」
「それもだが、とりあえず夕霧のスライムと初雪を経由させて向こうで確認して貰うか。」
「わかりました。
では、夕霧を呼んできます。」
とジーナが礼をして退出していく。
「貴族報酬かぁ・・・
主が子爵位でこれだと男爵は結構ひっ迫するだろう。
他の男爵家はどうやっているんだろうか・・・気になるな。」
ヴィクターが窓の外を見ながら思案するのだった。
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エルヴィス家の客間。
「違います!」
アリスが目の前の皿の中身を見ながら言う。
皿の中には武雄が王都で作ったとされる『ミノムシ』の試作品があった。
「・・・失敗でしたか。」
料理長が考える。
「こうではないですね。
鶏肉の味が違います。」
「いやアリスお嬢様。
いつもの鶏肉です・・・それは王都だったからではないのですか?」
「そういった微細な違いではないんです。
もっと根本的だと思います。
肉の柔らかさが違います!」
「んー・・・アリス。これでも十分美味しいがの?」
エルヴィス爺さんがウスターソースを付けながら食べている。
「はい。
ですが、確かに油の量が少し多いですね。」
「んー・・・タケオはモモ肉が好きだからこっちを使ってみたんだが・・・
これは胸肉だったのか?」
「かもしれません。」
「わかった。
作り直してこよう。」
「うむ。頼むぞ。」
エルヴィス爺さんが楽しそうに頷く。
・・・ヴィクターとジーナの願いは叶わず試食がされているのだった。
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