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第1004話 夕飯は定番の。

王都の西の街の高級宿屋のカウンターにて。

案の定、誰かの指示でこの宿に皆が泊まる事になっていた。

「・・・今度は誰ですか?」

「ニール殿下と総長からの依頼だそうで。

 二方から別々に同日の依頼があったので逆に請求先をどうするか聞かれたのです。

 なので所長をお連れしました。」

「・・・はぁ。王家を優先しましょう。面子を潰す訳にはいきませんからね。

 総長にはそのことを後で報告します。

 あ。それとマイヤーさんは総長と殿下宛に謝礼の手紙を書いてください。

 私も連署します。それを宿から送って貰いましょう。」

「わかりました。」

マイヤーが頷くと武雄が皆の所に戻る。


「ここです。

 それとこれが部屋一覧です。」

「わかりました。

 夕食は・・・出ますね。」

アンダーセンが武雄から部屋表を貰い中をサッと確認する。

「はい。この宿と私達が提供出来るスープを堪能して貰います。」

「この宿とキタミザト様が?」

ボーナが聞いてくる。

「はい。

 王都では食べれませんよ。」

「本当ですか!?」

テーアが食いついて来る。

「はい。

 なので早く実働部隊なりに入ってこの町に立ち寄れるようにした方が良いですよ。」

「それほど美味しいのですか?」

「病みつきです。」

「本当ですか!?

 あぁ!どんな料理なんでしょうか。

 楽しみです!」

テーアが楽しそうに言う。

「はい。では。皆さん。夕食に会いましょう。

 それまでは部屋でのんびりとしていてくださいね。

 アンダーセンさん。後は任せます。」

「はい。畏まりました。

 では。部屋割りを言います。」

「「は~い。」」

アンダーセンが皆を集めて説明を始めると皆が笑顔で聞き始める。

武雄はその様子を朗らかに見るのだった。

・・

宿の食堂にて。

「美味いっ♪」

「何これ・・・後引く美味しさ。」

「辛~い!でも美味しい♪」

「あ~♪」

「はふっほふっはふっ♪」

「これは・・・凄い。」

「所長の料理も良いが流石噂に違わないな!」

「んー・・・これは良いな。」

武雄達はカツカレーを堪能していた。

もちろん辛いのが苦手な人用に牛乳が用意されている。

「ははは。

 皆さん良かったですね。」

武雄は皆の食事風景を見ながら楽しんでいた。

「キタミザト様。

 カツカレーが大人気にございます。

 定宿にして頂ける方も増えております。

 ご教授ありがとうございました。」

「アズパールカレーも相も変わらず人気でございます。」

武雄の横に宿の支配人と料理長が来て話をしていた。

「良い事ですね。

 エルヴィス領ではまだ伯爵邸のみで提供しています。

 そのうち私の研究所の1階に喫茶店が出来ますのでそちらでの提供を始めようと思います。」

「喫茶店でございますか。」

「ええ。昼のみの提供ですけどね。」

「昼のみ・・・採算が合わない可能性がございますが平気なのでしょうか。」

料理長が考えながら言ってくる。

「採算がトントンで構わないとしています。

 それにこの喫茶店の昼食メニューは文官達の食堂も兼ねているのです。

 なので公的な補助金が出ます。

 一般の方向けには少し割高で提供しますけどね。」

「なるほど。食堂ですか。

 昼のみということは品数を少し抑え、さらに数量をある程度決めて提供する事で廃棄量を減らして採算を取るのですね。

 上手く考えています。」

「上手く事が運べば良いのですけどね。」

武雄が「どうなるかなぁ?」と楽し気な顔を2人に向ける。

「それと前に来られた際に言われていたキーマカレーのサンドイッチを作りました。

 ご試食頂けますでしょうか。」

料理長がキーマカレーのサンドイッチを武雄の前に置く。

「ほぉ。

 作ったのですね。支配人様は食べましたか?」

「はい。

 社員一同。満足した物を作り上げております。」

「ふむふむ。

 パンにレタスを入れて、その中にキーマカレーを入れると。

 頂き・・・」

武雄が食べようとすると。

他の面々が見ている事に気が付く。

「んんっ。

 頂きます。」

武雄は無視して手で持って食べる。

「んっ・・・うん。レタスのシャキシャキ感も良いですし、味も美味しいですね。

 ですが、ちょっとこぼれますね。」

皿の上に食べた際の圧力でこぼれてしまった肉がいた。

「そうなのです。

 気軽に食べれるので朝食に出そうと思ったのですが、このようにこぼれるのが難点でして・・・

 フォークとナイフで食べるのも違う気がしてしまっていてまだ提供には至っておりません。」

支配人が難し顔をさせる。

「・・・なら紙に包んでみますか?」

「紙にですか。」

「ええ・・・

 まぁ今は無いので布で試してみますか。」

そう言って武雄はスプーンが乗せてあった布を皿の上に広げてキーマカレーパンの半分程度を軽く巻く。

「こうやって食べれば早々は落ちないでしょうし、それに食品に手を付けないという利点があります。」

「なるほど。

 で布で覆われた所に来たら剥くのですね。」

「ええ。実際はもっと薄く、水が染み込み辛い物を選べば良いかと思いますが、そういった物で包めれば問題ないのではないですかね。」

「やはりキタミザト様に聞いて良かったです。

 そうですね。紙を使えば良いのですね。

 これなら費用が少なくて済むか。」

料理長が頷いている。

「食器も必要なく手で食べれるという利点を生かして、何か催し物がある際に出店してこれを出すのも良いかもしれないですね。」

「催し物・・・祭りとかでしょうか。」

「ええ。

 料理が美味しいと評判の高級宿が1日限定で出店するなんて事になれば近隣の皆さんが来てくれますよ。

 少々お値段が高くても良いかもしれませんし、宿の名を広める機会でしょう。

 正直な話、高級宿なので領民の大多数はこの宿を一生使う事はないと言わざるを得ません。

 ですが、地域に根差している姿勢を表せば領民達から親しみが湧かれるかもしれません。

 『この宿は町を大事にしてくれる』という思いから『誰かを招くならこの宿に』『何か特別な時はこの宿に』と領民に意識付ける事が出来たならば先々の利用者を確保するという宿の利益につながると思います。」

「ふむ。

 地域貢献と将来のお客様確保の為にキーマカレーを使うと。

 確かに紙で半分を包めれば歩きながらでも食べられる物になる。

 そして食器を洗う手間がない分、出店費用は少なくて済むという訳ですね。」

「支配人。これは王都でも出来るのではないですか。

 何か特別な時に私共も1日や数日限定で出店させて貰えれば王都からの旅行客を招ける可能性があるのではないですか?」

「そうですね。

 外ではキーマカレーで呼びかけをし、来ていただいたお客様にはアズパールカレーを堪能いただく。

 ですが料理長。料理人達への負担は大きいと思います。」

「将来のお客様の為です。

 平気です。1日なら何とかなります。」

「そうか・・・まずは町の祭りあたりからやってみるか。」

支配人が考えながら言う。

「まぁ実施するしないは皆さんで話し合えば良いでしょう。

 ですが、あと数か月で王都ではお祝い事がありますからね。

 便乗するなら考えておかないといけませんね。」

「お祝い事ですか?」

「ええ。

 ウィリアム殿下が2児の父親になりますよ。」

「「あ!」」

「その時に王家に献上してみるのも面白いかもしれませんよ。

 『お祝い事の際には私達のアズパールカレーを』と言えば良い宣伝文句になるでしょう。」

「キタミザト様。策士ですね。」

支配人が苦笑してくる。

「ん~?人聞きの悪い言い方ですね~。

 ですが、子供が生まれる前の父親達はどういった心境なのでしょうか。

 生まれるまでは食べ物をちゃんと食べれるのでしょうかね?」

「キタミザト様。社員一同考えて臨ませて頂きます。」

「はは。頑張ってくださいね。」

武雄が朗らかに言うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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