第1003話 127日目 武雄の昼寝。
武雄達一行はもうすぐ王都西の街に到着予定。
というよりも街の城壁が見える位置に来ていた。
「キタミザト様。もうすぐ着くようです。
起きてください。」
エンマが幌馬車の荷台で寝ている武雄を揺すって起こそうとしている。
武雄が幌馬車にいるという事は代わりに誰かが武雄の馬に乗っているかという事になるのだが。
「あ~♪」
ビエラが満面の笑みを見せながら騎乗していた。
「そうそうこの速度です。ビエラ。走れなんて命令してはいけないのです。」
補佐にミアが付いてビエラと周りとの調整をしている。
乗られている馬は疲労困憊だった。
「あ~?」
「そうですよ。
皆に合わせた速さにするんです。
一人の時ならある程度早く駆けても良いかもしれませんが、1日で進む距離はある程度決まっているのですよ。」
「あ~・・・あ?」
「そうです。これが旅です。
速く走る事だけが目的ではないんです。」
「あ~。」
ビエラが旅というか行程を学んでいた。
「ははは。
要は無理をせずに行動前に決めた距離を移動するのが大事という事ですね。
これは馬での移動、馬車での移動、徒歩での移動といろいろと手段が違います。
それに合わせて日程が何日かかるのか。食料や食器、費用を用意するんです。」
「なるほりょ。」
ビエラがマイヤーの説明に頷く。
「ん?・・・ビエラ。マイヤー様の言う事を聞くんですよ。
私は主の所に行ってきます。」
「はい。」
ビエラが返事をするとミアが後ろの幌馬車に飛んでいくのだった。
・・
・
「・・・」
武雄は意識が覚醒してくる。
・・・何か息苦しい・・・
これは以前にもあったイベント。
こんな事をするの・・・まさかと目を開けると。
目の前にミアが顔の上に腹ばいで乗っていた。
「・・・ミア。おはよう。」
武雄が顔の上のミアをペリッっと剥がして挨拶をする。
その様子を絶叫を期待していたニルデとジルダがつまらなそうな顔をさせて見ている。
「主。おはようございます。」
「ミア。この起こし方はアリスお嬢様にダメと言われていませんでしたか?」
「エンマ様が揺すっても声をかけても起きないので最終手段で私が代わりに起こしました。
起きない主が悪いです。」
「それはすみませんでしたね。
エンマさん。ありがとう。」
「いえ!こちらこそ起こせなくてすみません。」
エンマが恐縮している。
「さてと・・・ここはどの辺ですか?」
「あ。もうすぐ王都西の街に着くそうです。」
エンマが説明する。
「そうですか。
ミアはどうしてここに?ビエラが何かしたような騒動にはなっていませんが。」
武雄が前後を見ながら言う。
「ビエラは普通に馬に乗っていますよ。
主。上空に彩雲が来ています。」
「そうですか・・・
ミア。マイヤーさんに言って街に入る前に休憩をお願いしてください。」
「はい。
わかりました。」
ミアがビエラの方に飛んでいくのだった。
・・
・
それからしばらくして小休止になっていた。
彩雲も武雄の下に降りて来ていた。
そして武雄と彩雲とマイヤーが皆から少し離れて話し合いをしていた。
「・・・つまりヴィクターとジーナの事はしばらく2人には秘密で通すと?」
「はい。
そのように言っていました。
同様の書簡をハツユキが王都で渡していると思います。」
「・・・マイヤーさん。アーキンさん達が王都に到着した旨の報告は誰にすると思いますか?」
「そうですね・・・今回のウィリプ連合国への出張名目は王都守備隊の要員選定です。
なので総長に報告すると思います。
そしてこの手の話は陛下にも行く可能性があります。」
「・・・そこは別に良いんですけどね。
人事局や軍務局にちゃんとお願いが出来るかですね。」
「陛下が許可すれば問題ないと思いますが・・・末端までちゃんと通達されるかですね。
当分は王都守備隊の兵舎での座学や訓練場での基礎訓練でしょうからあまり他部隊とは接触しないと思います。
なのでその間に徹底されれば問題ないかと。」
「そこは改めて私から各局に挨拶に行くしかないですね。
何か手土産が必要ですかね?」
武雄が考えている。
「何か作れそうですか?」
「んー・・・
バターがありますから・・・クッキーでも作りますかね。」
「クッキーとは何ですか?」
「あ・・・ビスケットですよ。
ビスケットを作る時にバターを多めに入れようかと思っています。」
「味が変わるのですか?」
「変わりますね。
ですが、バターの味が嫌いな方もいますから好き嫌いは人によるかもしれませんね。」
「そういう物なのですね。」
「はい。
とりあえず今日の宿に着いたら食材を探して作ってみますかね。」
「となると。いつも通り厨房付きですね。」
「そうなりますね。
あ。そうか。王都西の街ではカレーがありましたね。
あそこで夕食が出来たら良いんですけど。」
「なら誰か行かせてみますか?」
「マイヤーさん。行ってみますか?
マイヤーさんなら場所もわかるでしょうし。」
「そうしましょうかね。
あと。オールストンを付けて先行します。」
「わかりました。
アンダーセンさんと話して行ってきてください。」
「はい。わかりました。」
マイヤーが立ち上がるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




