第1002話 126日目 アーキン達王都に到着。5(ん?違和感。)
食事を終えたアーキン達が兵舎の部屋に帰って来ていた。
「?」
「・・・」
「??」
だが部屋に入ってくつろいではおらず、初雪以外が部屋の違和感の正体を探るべく奥には行かず見回していた。
初雪がスライムを吸収していくが四隅の一角で止まる。
「・・・」
目線は下のまま止まっている。
「初雪殿?」
「なぜ私が出していないスライムが居る?」
その言葉にブルックが反応し、初雪を強引に一歩下がらせると同時に初雪を守るように他の3名が身を入れて来る。
「・・・大丈夫。スライムでは上位種は破裂させられない。」
と初雪が答える。
「・・・とりあえず。扉を閉めましょうか。
アニータ。お茶を用意して。」
ブルックが場を治め始めるのだった。
・・
・
5人は机の上に置かれた闖入者を見ながらお茶を飲んでいた。
「となると。
これは・・・この地のスライムだと?」
「そうなる。
サイウンのアサギリや王城に向けて通路を掘っているシグレのアサギリなら私が居る時に入って来る。
こんな感じに。」
と言い初雪が目線を送った先にスライム2体がいつの間にか居た。
「いつの間に。」
「私達なら魔物と認識される程度・・・スライムはもっと気配が薄いらしい。」
「誰が言っていたのですか?」
アニータが聞いて来る。
「前にニオとミアとスーがユウギリと話をしていたのを知っている。
タケオと初めて会った時の話。」
「そうなのですね。」
「・・・」
初雪が床に手を置くと1体が近寄り初雪が吸収する。
と初雪が少しの間目を閉じて情報の整理をし始める。
「・・・王都までの通路が完成した。
向こうは何もなく。至って普通。
アリスとジーナが模擬戦を開始したみたい。」
「そうですか。
本格的にし始めたんですね。」
ブルックが頷く。
「こちらからはある?」
初雪が掌に3体のスライムを出してアーキン達に言う。
「無事に王都に着いたくらいでしょうか。
あとは何もないですね。」
「わかった。
お前達。1体は通路の位置を確認。2体はユウギリの下に。」
スライムが初雪の手を離れ来ていた残る1体と一緒に壁の隙間から退出して行った。
「あそこが穴なのですね。
それにしても向こうからのスライムはどうしてここに初雪殿が居る事がわかったのでしょうかね?」
アーキンが言ってくる。
「この建物に帰って来た際に見つけたらしい。
建物内に入ってからも私を探しながら色々見てきている。
1階では数名が書類を見て話しあっている。
訓練の・・・成果が・・・今ひとつ?
すぐ下の階の人間達は寝ている。3つ隣の部屋でも寝ている。
さっきの人間・・・総長の部屋には誰も居ない。
ん?・・・ネズミがスライムに通路で譲っている?・・・」
初雪が首を傾げながら最後の文言を言う。
「ネズミ・・・書庫は平気かしら。
一時期駆除に乗り出すほど被害が酷かったのよね。」
ブルックがネズミと言う言葉に反応する。
「いや・・・それよりもスライムを使っての諜報がこんなに楽だとは・・・
これは所長の先見の明があるという事か。」
アーキンが複雑な顔をさせて感想を言ってくる。
「あと。アーキンとブルックの話が出ている。」
「・・・なんて言われていますか?」
アーキンが聞き返す、ブルックも真面目な顔で聞いている。
「・・・『挙式はいつなのか』『呼んでくれるのか』『エルヴィス領までの旅費はいくらか』『大きい子供が居たがいつの間に』『人間からエルフを産む奇跡だな』『あんな可愛い子供が欲しい』『お前には無理だ』『親御さんに説明しに行ったのか知っているか』『いや。ブルックの親には隊長が伝えたはず』『アーキンの親御さんはどこだったか』『確か地方だったはず』『じゃあ。第1騎士団に頼むか』・・・」
初雪が起伏無く会話の内容を伝える。
「「・・・」」
アーキンとブルックがガックリと頭をうな垂れさせている。
「いつ?」
初雪が首を傾げて聞いて来る。
「まだわかりませんよ・・・向こうに行ってから話を始めるし・・・」
ブルックが目線を下げて言ってくる。
アーキンは何も言わないまま目を瞑っている。
アニータとミルコは「何か言うべきかな?」と場を伺っている。
「と・・・とりあえず。初雪殿。その辺は所長には内密にお願いします。」
アーキンが頭を下げる。
「わかった。
アーキンとブルックの事はタケオには言わない。
他は良い?」
「ええ。この兵舎に来た事については報告して貰って結構です。」
「はい。」
初雪が頷く。
「さ・・・さてと。じゃあ。残るはこのスライムをどうするかですね。」
ブルックが持ち直して話を変え始める。
「・・・」
初雪が5体の朝霧(黒)を作り床に並べる。
そして机の上に置かれているスライムも床に置く。
「お前達。このスライムの親。エルダームーンスライムを見て来なさい。
そして2体は戻って来なさい。わかりましたか?」
初雪が言うとスライムがくるくると右回りをして先ほどのスライム達が壁の隙間から退出して行ってしまう。
「・・・スーに教えて貰ったのですが、これは確認が楽。」
初雪が頷く。
「うそ・・・スライムが意思を表明していたわ。」
「意思疎通は出来ないと思っていたのに・・・」
「へぇ~。」
「なるほど~。」
ブルック他3名が初雪とスライムのやりとりを見て驚いていた。
「とりあえず・・・あとは。」
初雪がスライムを数体出し床に並べる。
「お前たちはこの建物の監視を。」
そう言われてスライム達が壁の隙間から退出して行った。
「アーキン。ブルック。終わった。
これで監視は問題ない。」
「そ・・・そうですね。
じゃあ。湯浴みをして寝ますか。」
「「は~い。」」
皆が就寝の準備を始めるのだった。
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