第997話 124日目 強行軍チャレンジ。(地面と空。)
朝食後のエルヴィス伯爵邸の玄関にて。
「では。伯爵様。アリス様。行ってまいります。」
アーキンがエルヴィス爺さんとアリスに声をかけていた。
「うむ。気を付けての。」
「無事に行ってください。」
「はっ!」
「ユウギリ。行ってきます。」
「ん。ハツユキ。無理はダメ。
一応練習はしたけど本気で走る馬は初めて。
ダメなら皆に相談する事。」
「はい。わかりました。
ではスライムに。」
初雪が瞬時にスライム形態になり、夕霧の手の上に乗る。
着ていた服は器用に時雨が手に持っている。
武雄が見たら「体積が違う」と不思議がると思うが、特にこのメンバーでは思う者は居ない、一様に「そういう物でしょう」と見ている。
そして夕霧がブルックの馬の腰についているバックの片方に初雪を入れている。
「初雪様の制服と小瓶はご本人が入るバックの逆側のバックに入っています。
後はよろしくお願いします。」
フレデリックがブルックに言う。
「はい。それは問題ありません。
あとは・・・所長の小太刀と拳銃と伸縮警棒ですね。
小太刀は私が装備して、残りの2つはミルコの方のバックに入れておきました。」
「はい。お気を付けて。
あと何かありますか?」
「えーっと・・・所長への伝言は一応書面で貰いましたけど・・・
王都の西の町に向けて彩雲殿も行くのですよね。」
「はい。
この後、出立予定です。」
「私達が王都に着く頃には王都の西の町まで行ける予定なんですよね。
効率が良いですよね。」
「それは確かに。
少なくともゴドウィン伯爵家とは国境防衛で連携が必要ですので研究項目になるでしょう。
ですが、それはどちらかというとミア殿の配下がすると思いますね。」
「なるほど。
確かに伝文のみなら鳥でも良いかもしれませんね。」
「そこはタケオ様が戻られてからでしょう。」
「はい。
では。フレデリックさん。行ってきます。」
「はい。お気を付けて。」
フレデリックとブルックが会釈をしあう。
「お姉ちゃん。大丈夫だよね?」
「やるしかないわ・・・魔法の訓練に比べれば強行軍も大したことではない・・・はず。」
「・・・そうだね。
魔法の訓練・・・すっからかんになるものね。」
ミルコが若干遠い目をする。
「ええ。毎日毎日限界を超える魔法を行使させて・・・
石を作るのが上手くなったし、正確な位置に置けれるようになったから成長はしているのは理解しているんだけど・・・
あれは地獄だわ・・・あれに比べれば・・・」
「うん。頑張ろう。」
ミルコとアニータがやる気を見せるのだった。
「よし。出立するよ。」
挨拶も終わったのかブルックが騎乗を促し、4人が馬に乗る。
「では。出立!」
アーキンが言うと一行がゆっくりと門前に向かうのだった。
・・
・
門前を抜けるのをエルヴィス家の面々が見送っていた。
「行きましたね。」
「さてミルコとアニータが無事に帰ってくれば良いの。」
フレデリックとエルヴィス爺さんが言う。
「夕霧。初雪は大丈夫ですかね?」
「練習の時は問題なかった。
不測の事態が起きなければ問題ないでしょう。」
ジーナと夕霧が話している。
「それにしても拳銃が出来ていたのじゃの。」
エルヴィス爺さんがジーナに聞いて来る。
「はい。
新品の警棒を取りに行った際にスズネ様から渡されましたので今回運んで貰いました。」
「うむ。
タケオが評価しないと改良も出来ないだろうからの。
それとヴィクターは研究所の見取り図じゃの。」
「はい。
部屋割りが載っている概要図になります。
詳しくは戻って頂いてからになるかと。
建て方の親方殿もハワース商会の方々も待っています。」
「うむ。
それで良かろう。
と。では客間に戻ろうかの。」
「「はい。」」
皆が屋敷内に戻って行くのだった。
・・
・
客間にてお茶を飲みながら彩雲の食事が終わるのを待っている。
「・・・彩雲。どうじゃ?」
「はい。
もう少しになります。」
「うむうむ。
それと上から街道を見ていて何か変わった事はあるかの?」
「王都からエルヴィス邸までの飛行は順調で空から見た時に街道での故障個所等はありません。」
「そうかの・・・」
「お爺さま。どうしたのですか?」
スミスが聞いて来る。
「いや。王都から来ている街道整備計画なのじゃがの。
少なくとも王都―エルヴィス家までの街道を拡張をするようにとの指示なのじゃ。」
「エルヴィス領内で良いのですよね?」
「そうじゃがの・・・領内の魔法師を使う事業として人工湖が4月以降の予定なのじゃ。
これに街道整備・・・それも西と東で極端じゃからの。」
「ですが、全く手を付けないという訳にも行きません。」
フレデリックが言ってくる。
「そうじゃの。
2小隊しかないからのぉ。
2手に振り分けると人工湖の完成が延びるの。」
「それは致し方ないかと。
次回の局長会議は・・・3月の挙式後ですね。
それまでに総監部で工程の修正をしておきます。」
「うむ。
そうじゃの。どちらにしてもやらなくてはいけないからの。
兵士には無理を言うがやってもらうしかないじゃろうの。」
エルヴィス爺さんが頷くのだった。
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