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迷惑な僕の女王様  作者: 楓 那夏
第1章 青春SENSATION!!!!
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第7話 COLD&MORNING

 重いまぶたを無理やりこじ開けて、ふかふかの布団から顔を出した。

 目覚し時計に搭載されている温度計は部屋の中なのに8度を示していて、そこから1ミリたりとも動きたくないと思った。


 久しぶりに翠乃の夢を見たな。


 体が動かないのは寒いからだけではない。気分が上がらない……

 僕にとって辛い経験であった大好きな人との突然の別れ。

 失恋と言っても過言ではない。

 でも今の僕がある原因となった悲しい過去。


 きっと2度とあの日々を苦しいと思えなくなる日は来ないんだろうな……


 会いたい?

 と聞かれたら正直会いたい。

 思いがなくなったと言ったって大切な友達だ。今どうしてるのか、夜逃げしてからの生活苦、色々話を聞きたいし愚痴だって聞いてあげたい。

 そう思うのは僕のエゴなんだろうか?


「けいごーーー?!

起きたのーー?」


「……起きてるよー!」


 少し考えすぎたかな?

 気がつけば目が覚めてから10分も経っていた。


「やべッ」


 とりあえず今は今の生活だ。

 今のままじゃ翠乃に会ったってろくに話もできないだろうから。

 目の前にある仕事を片付けよう。




「むー。慧悟お寝坊さん。」


「あ、悪い。待っててくれたんだ……。」


 いつもより少し遅めに家を出ると、玄関の前で花恋と空恋が待っていてくれた。


「昨日頭怪我したって聞いたから心配して来てやったんだぞ。」


 得意げにそういうのは空恋。

 まったくいつも偉そうなんだから。


 「それはそれは、どうもありがとう。」


 だからぼくも皮肉そうに返してやった。


 ほら……

 このくだらないやりとりが今日は心地いい。

 困っちゃうな……


「んじゃ、行こっか。」


「うん!」


 いつもの通学路をいつも通りに歩く。


 今日は少し寒さが厳しいかなって思うけど、心は暖かい。

 今日も平和な1日でありますように……


「てめー自分は可愛いからって何言っても許されると思うなよッ!」


「へー

こんな事言われても可愛いと思ってるんだ……

マヌケね」


「……っく」


「せいぜいその馬鹿ヅラぶら下げて学校まで行きなさい

ほら……みんな見てる」


 朝から通学路で何をしてるんだ……

 声の主は一人の男子生徒と詩羽先輩。


「あちゃー

あれはヤババ……」


「そいえばあの男の子、空手部の主将じゃ……」


 ふふふと不気味に笑い続ける詩羽先輩。

 男子生徒の顔がどんどんと怒りで赤くなっていく。


 まったく、どうしてあの人はあんななんだっ!

 まるで別人じゃないか……


 さすがに見て見ぬふりはできないな……



 僕はコッソリと詩羽先輩の後ろへと向かって彼女の手を取った。


「そのへんにしといたらどうですか?

詩羽先輩の言う通り、みんな見てますから」


「……っ!先生っっ!」


 彼女は振り向くと肩を5cmくらい上げて驚きの声をあげた。


「す、すみません。

朝から不愉快でしたか?

まさか先生に会うとは思っていなくて……」


 男子生徒は苦痛(精神的な)に顔を歪め、バツが悪かったのか、そそくさと逃げていった。


「っさ、僕は連れがいるんで先に行ってください。

また図書室で会いましょ」


「っはい!

失礼します」


 早足で立ち去る彼女。

 

 ホントに大丈夫なのかな……あの人。


 立ち止まったまま詩羽先輩の背中を目で追っていた僕の足に突然衝撃が走る。


「……ッタ」


 足を蹴ったのは空恋。

 まあなんとなく想像はついていたけど……


「けい、両堂詩羽、知ってるの?」


「なんであの女があんたに敬語使ってるわけ?」


 花恋と空恋の問い詰め具合がすごい……


「ちょっとな……」


「ちょっとなって何よ!

まさか付き合ってるとか言わないよね?!」


「んなわけあるかよ」


「ならなんで……」


 二人の質問にどう答えようか迷った。だって小説を教えてるなんて言えない。


……。


いや、ちょっと待てよ。

 僕は今日、いつもより家を遅く出た。

 そしてさっきのひと悶着。


 「今……何時だ?」


 「話しそらさないで……ょ」


 「……やばいーーー」


 携帯をポケットからだし時間を確認すると始業チャイムの3分前だった。


 まったく、平和な1日になればいいなと願ったばかりだったのに……

 今日もどうやら普通の生活は送れないみたいです。


(結局僕らはチャイムと同時に校門をくぐり担任の先生に怒られました……)

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