第12話 消えないで
タイトルが英語じゃない?!
こっから第1章は終わりに向けて展開していきます!
でも別に急展開ではないと思うんですが……
クリスマス関連なのにもう年末です
久しぶりの投稿、ぜひ楽しんでお読みください!
花恋とのいざこざがあった次の日、花恋と空恋は学校を休んだ。
二人一緒に学校を休むのはどうかと思うけど今日の今日ではきっと僕には会いたくなかったんだろう。
今日は由宇も見当たらず、寒くて寂しい朝に少しだけ憂鬱になった。
「先生っ」
そんな朝が一瞬で明るくなったのは、3人には申し訳ないけど詩羽先輩の声が聞こえたから。
今日は周りに誰もいなかったせいか、いつもは声なんかかけてこないのに詩羽先輩の方から肩を叩いてくれた。
「詩羽先輩、おはようございます」
「おはようございます、先生!
今日も寒いですね‥‥」
セーターのさきから出ている手を口元に持ってきて、白い息を吹きかけている先輩の姿は、漫画のヒロインを切り取ったように美しくて僕ははっと息を飲んでしまった。
「今日は今年一番の冷え込みらしいですよ?」
12月も中旬、しだいに寒さが厳しくなっていく中で先輩との「別れ」が近づいていることを最近頻繁に考えるようになった。
昨日、花恋にしてた言い訳がまさか本当のわけはないだろうから先輩の進路はきっと小説に関わることなんだと思う。
それでもやっぱり確信は持てなくて、好きだという思いが募るほど僕の不安は宙に浮いたまま行ったりきたりと宛もなくさまよっている。
「先生は今年のクリスマス、なにかご予定はあるんですか?」
「‥‥。
え?今なんて?」
「クリスマスですよ!
その‥‥お話したいことがあるので予定を明けておいて欲しい のですが……」
「あぁ‥‥
特に用はないので大丈夫ですよ?
また図書室でいいですか?」
「はい。
では残り少ないですけど最後までよろしくお願いしますね!」
さして学校から遠くない僕の家は、先輩のことを考えているうちに気がつけば校門を通り過ぎていた。
3年生の下駄箱の方へと小走りしながら僕に手を振る先輩はまた、昨日と同じ寂しそうな顔をしていた。
クリスマスまであと1週間……
いったいどんな顔をしてまっていればいいんだろう……
〜昼休み〜
詩羽先輩の話を聞くのは決して嫌な訳では無い。
このまま理由を聞かないでダラダラと小説を読んでいるのであれば、きちんと理由を聞いてその後でまた教えてあげるのもありだと思う。
もしも彼女がそう望むのであれば、の話だけど……
「今日のお題は
雪
クリスマス
恋人
です。
ちょっとロマンチックな話が読みたいんでいい話を書いてくださいね」
「ふふ、先生らしくない」
「……そんな気分なんですよ」
なのにどうしてなんだろう。
自分のなかできちんと気持ちの整理はついているはずなのに、クリスマスなんか来なければいいのにと思う自分がいる。
「それじゃあ、とびっきり感動するお話を書いちゃいますねっ!」
シャーペンを握る細くて綺麗な手、凛と伸びた背筋。
僕は怖いんだ……
「私、クリスマスは結構悲しいお話も好きなんですよね〜」
彼女を知ることでその姿を見ることさえも出来なくなってしまうのが、ただどうしようもなく怖かった……
もしもこの関係を彼女が望んでいなかったとしたら……
「詩羽先輩は……
クリスマスがきても消えたりしませんよね?」
「え?」
僕の言葉を聞いて、彼女の表情が固まった。
まるでメデューサに石にされてしまったように体も呼吸も全てが止まっているようだった。
「消えませんよ……
私はあなたの前から消えられませんから」
はじめて見た。
みんなから女王様と呼ばれる時の表情でも無い。
きっと彼女の素の冷たい目。
「このお話、ちょっと手をかけたいんで少し待ってもらってもい いですか?
私が先生に見てもらう、最後の作品にしたいんです」
ねえ、詩羽先輩
あなたは僕のことをどう思ってるんですか?