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迷惑な僕の女王様  作者: 楓 那夏
第1章 青春SENSATION!!!!
15/24

第11話 CORRIDOR&MISUNDERSTANDING

題名は

廊下と誤解

という微妙な組合わせ……


楽しんでお読みください(*´╰╯`*)♬*゜

「両堂詩羽」


 それは昼休みの終わり、僕と先輩が図書室から教室に戻る廊下の途中だった。


 人気のない廊下、僕ら以外の人は視界の中にはいなくて、生徒達の笑い声は小さく、微かに聞こえていた。


「え?花恋?」


 僕らの前には普段は着ていないブレザーを羽織った花恋が立っていて、面識もないというのに先輩の名前をしかもフルネーム呼び捨てで好きな呼んでいた。


「な、何?どうしたの?」


「けいには用はないから。

 帰っていいよ」


 いつもと同じように僕の名前を呼ぶけど、いつもとは全く違うはっきりとした声で話す花恋。


 正直目の前にいるのはカツラを被って縮こまっている空恋なのかと思うほど、今の花恋は堂々としていた。


「は?え、待ってどういうこと?」


「両堂詩羽、私はあなたを認めない」


「……」


「私たちは、あなたがけいの隣にいることを認めないわ」


 花恋の大きな声が廊下の壁に反響してより大きな音となって僕の耳に侵入してきた。

 強く鋭い目つきで詩羽先輩を見つめる彼女の目には今までに見たことのないような熱がこもっていた。


 どうしたんだよ?


 自分が置かれている状況をうまく飲み込めなかった。


 この女の子は一体誰?


「どうしてけいなの?

 あなた達が昼休みに何をしてるかは知らないけど、遊びたいなら他に代わりなんていくらでもいるじゃないっ!」


「ちょっと、花恋」


 僕がずっと言わなかったから、勇気がなくて言えなかったから招いた結果でもあるのだ。

 大きな勘違い。

 僕らは遊んでいる訳では無いのに……


「私たちからもう、けいを奪ったりしないで……」


 泣き出すのかと思った。

 声は確かに震えていたけど、それでも低く心の底から叫ぶように言葉を放った。

 ゛もう゛

 そう、花恋達もずっと僕のことを見ていてくれたのだ。


 翠乃に飲み込まれた僕のことをしっかりと見ていてくれてた。


 だけど違う。

 先輩は翠乃とは違うのに……


「……花恋、僕らは遊んでるわけじゃな……」


「けいは黙っててッ!」


 僕のことをキッ、と睨んで小学校からずっと一緒だというのに初めて幼なじみのことを怖いと思った。

 今更怖いと感じたんだ。


 何もわかってなかった。

 ずっと、ずっと友達だったのに……

 僕のことを大切に思ってくれていたのに……


「花恋、あのね僕らは……」


「花恋ちゃん、って言うのかしら……?」


 ここでいうのはズルイと思ったけど、ありのままに僕の本当の姿を話そうと思った。

 でもその声はまるでわざとそのタイミングを待っていたかのような、先輩のそれにかき消された。


「はい、鏡花恋(かがみかれん)です」


「誤解よ、私たちは別に図書室で遊んでいるわけでもなければ花恋ちゃんが考えているような関係でもないわ」


「……」


「ほら、せ……彗悟くんって国語が飛び抜けてできるでしょ?

 私は受験生で国語が苦手で単純に先生をしてもらってただけなの」


「そ、そんなわけない。

 そんなことでけいがあんなに楽しそうな顔をするわけないっ!」


「嬉しそうな顔……、先生そんな顔してました?」


 からかうようなおどけた笑顔で僕に笑いかけた詩羽先輩。


「し、してないですよ」


 僕も愛想笑いで返す。

 花恋だって僕のぎこちない笑顔で気がついてはいるけど、もう出す手がないのかうつむいたまま廊下には僕らの笑い声だけがこだました。


「冷徹女のクセに……

 笑顔なんて似合わないのよ……」


 花恋は負けを認めたのか悔しそうにボソボソと下を向いて呟そういた。


「冷徹女か……」


「こないだ見た朝の言いあいはなんだったのよ?

 演技なの?」


「……違うの……。

 だって気持ち悪いじゃない。モテたくてチャラチャラしてる男の人なんて大嫌いよ。

 私は人に触られるのがとても嫌いなの」


 初めて彼女からなぜそんなにも人を嫌うのか聞いた。たしかに彼女の目にはそう写ってしまっているのかもしれない。


 じゃあなぜ僕は……


「けいは?どうしてけいは大丈夫なのよ?」


「先生はその他の誰よりも尊敬している人です。そんな人を気持ち悪いと思うわけないじゃないですか……」


「……」


「しかもそれだけじゃないんです……

 先生は私にとって特別な人だから」


 胸がドキッとした。


 特別な人……ね。


 きっと僕の心に抱き始めた思いとは違う意味の特別。


「まあなんでもいいわ。

 これ以上、けいの生活には干渉してこないでください」


「……気をつけますね」


 カツカツと脚を鳴らして去っていく花恋。


 その足音が遠くなったのを確認してからようやく息を吐き出すことが出来た。


「はぁー驚いた!まさか花恋があんな1面も持っているとは……」


「ホントですね。

 私もとても驚きました……」


「幼馴染だと思ってたのに全然気が付かなかったな〜」


 すると会話をしていたはずの詩羽先輩が急に黙り込んで俯き下を向いた。


「……先生はそれだけみんなから愛されてるんですよね……」


 また、だ。


 最近、彼女がこの表情をすることが多くなった。


 悩み事でもあるんだろうけど、僕のことを見て時々こうやって暗くうつむいてしまう……


 いったい僕に何を言いたいのだろう?


「もうすぐ、約束の1ヶ月も終わってしまいますし……

 クリスマスなんですね」


 そういえば聞かせてくれると言っていた彼女の話。今の今まで忘れてたけど、聞けるんだ。


 やっと僕は先輩で1歩近づくことが出来るんだ……

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