番外編 詩羽の小説〜タラコヲタクと彼ヲタク〜
今日は番外編で詩羽が書いた小説です!
カオスってものを狙ってみたんですがなかなか難しいですね……
今日のお題は
ライブ
たらこ
学校
大好きなアーティストのライブにきていた私、大染夏希はファンの友達が欲しくて会場の周りをうろうろとしていた。
誰か友達になってくれないかな……
ライブ開始まではあと2時間。
会場前でひとりで2時間はつまらないしな……
「あ、あの!」
思い切って入口の前に立っていた同年代くらいそうな男の子に声をかけてみた。
「よ、良かったらお話しませんかっ?」
振り返ったその男の子はとても顔が整っていて
「はい。俺も退屈していたところです」
と答えた声はアニメとかに出てくる主人公のようにいい声だった……。
優しい低音ボイスに塩顔イケメン。
でも私は面と向かって挨拶をして彼の違和感に気がついた……
「その……Tシャツ……」
「あ、可愛くないですか?
俺めっちゃタラコ好きなんですよ!」
白いパーカーの中に着ていたのはピンクのタラコをモチーフにしたTシャツ。
タラコが好きってなんだよ?!
てかタラコのTシャツとかキモすぎんだろっ!
「タラコはお好きですか?」
「あ……はぁ、まあ、好きです」
「いいですよね〜あのつぶつぶとした食感といい、まろやかな味といい文句のつけようがないですよね〜」
いや、お前に文句をつけたいよ。
今はライブに来てんだよ!
お前のタラコの話なんて聞きたかないよ。
「……あ、はい。そうなんですか……」
結局、ライブが始まる前までさんざんとタラコについて熱弁され、ずっと楽しみにしていたライブの楽しさは半減してしまった。
最悪だ……。
話しかける人間違えたな……
もうあんな人に二度と会いたくない。
心の底からそう思った。
「……え?」
「あれ?こないだのライブの子じゃん!?」
季節外れの突然の転校生に胸をドキドキとさせていた私の心は驚きと憂鬱でぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。
うそ……
泣きたい。
もう二度と会いたくないし、会うこともないだろうと思っていたのに……
まさか学校で同じクラスになっちゃうなんて……
「じゃあ鮫島は大染の隣の空いてる席に座れ」
「はい」
……
「まさか同じクラスで隣の席になるなんてね!
もう運命かもしれないね」
最悪な運命だな。
不運だ。
「ほんとにね(笑)
びっくりしたよ……」
こんなことってあるもんなのかな?
神様は意地悪すぎる……
「これから、よろしくね♡」
タラコヲタクであることを除けば確実に完璧な彼は転校してきたその日から学校中の女子に素晴らしくモテた。
『ねえ、大染さんっ!
大染さんって鮫島くんと友達なの?』
『どういう知り合い?
もしかして付き合ってたりするの?』
「ままさか、まさか。
たしかにかっこいいけどね……」
あーそうですか。
皆さんそんなにあの鮫島くんが好きですか。
私はあいにくあの人のことがあまり好きではないのでアイツの話をして欲しくないのですが……
「大染さん、ごめん。
ここの問題わからないから教えて欲しいんだけど……」
「あ、うん」
口を開かなければどちらかといえば好きな方。
優しいし気軽に話しかけてくれる。
タラコを除けば趣味も合うしなんせイケメンだ……
「大染さん、今度一緒にライブ行かない?」
「え?」
「俺もねこないだ反省したんだ。
タラコの話ばっかりしちゃってごめんね」
「……」
彼の口からこんな言葉が出るとは思ってなかった。
まさか人のことを考えてるだなんて……
「話ばっかりじゃつまんないよね?
実はタラコパスタの美味しいお店を知ってるんだ!
ライブの前に2人で食べに行こうよ?」
「え?……」
やっぱり彼は彼だった。
「ごめんね?私、タラコの話しよくわかんないしそれに……」
どうでもいい
その言葉が口からこぼれそうになって、ギリギリのところで自制した。
「……あ、そう……だよね
うん、ごめんね?」
寂しそうな顔をした彼がまるで親を失った子羊のような弱々しい表情を見せた。
そ、そんな顔したって私はタラコなんて……
「つつ連れてって!
私も食べてみたい、そのタラコパスタっ!」
どうやら私……自分が思っている以上に彼のタラコ以外のところが好きみたいだ。
彼の見た目と優しさが、私はとっても好き。
大好き
「楽しみにしてるねっ!」




