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迷惑な僕の女王様  作者: 楓 那夏
第1章 青春SENSATION!!!!
10/24

第8話 WHY&WHAT

少し進展が……


どうなる?!詩羽と彗悟……

 コンコンっ


 誰もいないのをわかってか、その人は図書室だというのにご丁寧にドアをノックした。


「し、失礼しますっ!」


 これで昼休みに会うのは通算8回目。

 そろそろ、慣れて欲しいんだけどな……


「はい、どうぞ」


 申し訳なさそうに顔を赤く染めた彼女が入口をくぐる。


 灰色のセーターに赤いリボンが今日もよく似合っていた。


「こんにちは」


「こここんにちは……」


 手の中には筆箱とノート3冊が抱えられていて、一見普通の受験生が昼休みに図書室に勉強をしに来ているように見える。


 まあそれは一見、の話。


「じゃあ、早速始めますか」


「っはい!」


 困ったような、喜んでいるような、表情はずっと変わらず強ばっているからなんとも言えないけど、この声は緊張しているのではない喜びの声なんだと僕は勝手に思った……


「今日のお題は何でしょうか?」


 先日、彼女にお願いされて彼女の小説の先生をすることになった僕。

 具体的にそれがどのようなものか僕にもわからず、彼女自身も詳しいことまでは考えてなかったらしくて、それなら……ということで、あるラノベの真似をしてお題を3つだしてそれに沿って自由に創作をしてもらうことにした。


 お題は様々。


 昨日なんか……


 たらこ

 ライブ

 学校


 これは僕がとっさに、ホントに突然に思いついたものをお題にしただけ。

 僕なんて絶対にかける気がしないけど、彼女は文句言わずに黙々と書きはじめた(内容がどんなものであったかは別問題)。


 案の定、話は読めたものではなく何言ってるのかさっぱりわからなかった。

 でも僕は日を追ってく事に驚かされる。


「じゃあ今日のお題は……


 お寿司

 マンゴー

 ことわざ


 いいかな?」


「……ふふ。

 はい!」


 彼女の言葉はとても美しかった。

 話の内容は別として選ぶ言葉が作家の僕も驚くほどきれいな使い方だった。


 そうだな……

 言うならばラノベではなく、少し重めの小説に向いた言葉。


 シャーペンを握ってまっすぐ背筋を伸ばしてノートに向かっている姿に目を奪われる。

 長い髪を左手で抑えながら、彼女は自分の世界に入っていた。


 小説を書いている時は途中で覗かない約束になっているから目に入らないようにしているけど、なんせこの距離感……


 どうやら今日はパラレルワールドが舞台みたいだ……


「先生……

 見ないでって……」


「あっ……

 気づいてたんだ」


「もう書き終わりますから」


「うん」


 とにかく彼女は仕事が早い。(って言ってもこれは仕事じゃないのか……?)

 尋常じゃないほどの速さでストーリーを思いつきそれを言葉にする。


 僕が先生というよりはむしろ尊敬しなくちゃいけない相手だよな……


「はい、できました」


「うん、じゃあ明日またノート渡しに行きます」


 教え方はどちらかといえば交換ノートのような感じ。

 僕が彼女の小説にコメントを書いてその都度質問してもらう。

 字はうまいほうじゃないから正直恥ずかしいんだよな……


 プルルルルル プルルルルル


 僕が彼女のノートにさっと目を通していたその時、サウンドonにしていた僕の携帯が細かく震えた。


「……はい、もしもし」


 電話の相手は巴衛さん……

 今はオフシーズンなのに……どうしたんだろ?


『もしもし?正木さん?』


「どうしたの?」


『決まりましたよ!Primulaっ!

 漫画化です!』


「マジで?!担当誰になったの?」


歌詩(うたうた)さんって知ってますか?』


 それはアニメ化までされた有名漫画の作家の名前だった。


「う……そ?

 ホントに?!詩羽先輩!!!!漫画化ですよ!Primula!

 歌詩さんに描いてもらえるんですっ!」


「え……うそ」


 きっと一緒に喜んでくれるだろう、そう思って僕は喜びを彼女に伝えた。

 でも彼女が返してきたのは間違いなく、驚きの声と戸惑いの表情。終いには手に持っていたノートまで落としてしまった。


「やめてよ……私、まだ描けないよ……」


 そう、言ったように僕には聞こえた。

 その声は泣いているのかと思うくらい震えていて、か細く頼りのない声だった。


『正木さん?』


「……」


「詩羽先輩?」


 そのまま彼女はノートも持たずその場から走り去った。今まで僕に取ったことのないような態度……


 僕は全く状況を理解出来ないままその場で立ち尽くしていた。


『センセーい、聞こえてますか?また後日伺いますね〜』


「あ……はい」


 わからない……


 もっと知りたいのに……


 僕は彼女に1歩も近づけてない……

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