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第3話 街を行く

 とうとう門の前にたどり着いた護。


 門番からの視線を感じる気がし、緊張と不安と怯えに、ほんの少しの興奮と勇気を搾り出し、いざ。と門を潜ろうとする。


「よお、坊主。さっきは随分必死に走ってたみたいだが、大丈夫か?」


 声をかけてきたのは門番の片割れであった。

 坊主という呼称に、一瞬別の誰かに話しかけているのではないかと思ったが、門番の顔はしっかりと護の方を向いていた。


(坊主? ……ってああ、今は十二歳前後の体なんだっけ。


 ――というか見られてたのかよ! 恥ずか死にたい……!)

「あ、えと、はい。森を抜ける直前に獣に襲われまして……」


 内心の恥ずかしさはひとまず棚上げし、なんとか門番に答える。

 門番は見た感じ、三十台後半といったところだろうか。

 今の護からはやや見上げる形になるが、鎧の上からでも分かるほどにガタイがよく、無精髭を生やした、中々シブい面構えのおっさんだ。


「おう、無事でよかったな。

 しかし、武器も持たずにそんな軽装で、どっから来たんだ?」


 街に入るのに身分証明は必要無さそうだが、出身を聞かれてしまった。


「この道の先を外れて、山をいくつか越えた、麓にある村からです。

 ここへは冒険者になりに来ました」


 咄嗟に、もし身分の証明を求められた時には答えられるよう、道中考えていた設定を話す。

 世間話はろくに続かないくせに、嘘はすらすら出てくる。相変わらずの残念さである。


「そうか――となると、この街にしばらく滞在するんだろう? 門はここだけじゃないが、冒険者になるってんなら、依頼で街の外に出る時にでも何度か顔を合わせるかもしれんな。俺の名はゲートルだ、よろしくな坊主」


「あ、はい。俺は護と言います、よろしくおねがいします」


 ゲートルに合わせ、護も名乗り返す。


「おう。冒険者になるんなら、門を抜けた後、大通りを進めば一つだけ石造りの建物が見えてくるはずだ。その近くにある、一際大きな建物が冒険者ギルドだから、まずはそこに行くといい」


「あ、ありがとうございます、助かります」


 どうやって辿り着くかも考えていなかった護は、親切に教えてくれたゲートルに、慌てて礼を言う。


「いいってことよ。街の施設案内も門番の仕事の一つだからな。――ようこそマモル。ダンジョンの一つを擁する街、ファスターへ!」




 朗らかに笑うゲートルと別れ、門を抜ける護。

 そして今更になって、ゲートルと違和感無く会話していたことに気付く。


(普通に会話出来てたけど、全然違和感無かったな。……くっ、英語もこれくらい簡単に覚えられればよかったのに!)


 元々異国語が苦手だった上、中学校からほとんど勉強していない護の英語の成績は壊滅的だった。高卒の資格を得るのにも苦労したものである。

 今となっては覚える必要も無い言語ではあるが、異世界語を覚えさせてくれたアマテラスに感謝しつつ、悔しがる護であった。


 門を抜けた護の視界に映るのは、立ち並ぶ木造の家屋、商店、まばらに行き交う人々。

 それもよく見ると、どこか人間とは違って見えるシルエット。


 数瞬、足を止める護だったが、わずかに胸を高鳴らせ、大通りに歩を進める。

 行き交う人や、見たことも無い道具、嗅いだ事の無い匂い、様々なもので、異世界に来たのだ、とようやく実感をし始める。


 きょろきょろと落ち着き無く、興奮を増しながら大通りを進む護の目に、サッカーグラウンド二つ分程の大きさをした広場と、その中央に鎮座する、石造りでドーム状の建物らしきものが見えた。


(あれがゲートルさんの言ってた建物かな? となると……あれがそうか!)


 広場の外に立ち並ぶ建物の中に、一際大きなものを見つけ、護は逸る心を落ち着けながら、冒険者ギルドに入っていった。




ようやく人と接触した護。

自分から話を振ったり、会話を繋げたりするのは苦手な彼ですが、

礼を言えなかったり、返事すら出来ないほどではないです。

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