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第2話 脱兎のごとく




 まずは森を抜けるべく歩き始めた護は、土が均され、街へと伸びる道を見つけ、今は体調を確認しながら、そこを進んでいる。


 街までの距離は、1kmから2kmといったところだろうか。


(んー、やっぱり、やたらと体調がいい気がするな。さっきまで気分が悪かったからか? それともこれが、魔力による活性化ってやつなのかな)


 そんなことを思いながら歩く護の耳に、微かにだが、わずかに違和感の残る葉擦れの音が聞こえる。


(……風、か?)


 気のせいか。と、思いつつも、音の聞こえたあたりを注視する。


 途端、茂みから茶色の何かが首元に向かって飛び出してきた。


「うわっ!」


 少なからず警戒していた賜物か、咄嗟に横にずれ、回避する。


 振り返った護の見たものは、自分に向け唸り声を発する、中型犬ほどのサイズで茶褐色の狼、らしき獣だった。


(お、狼? 狼って絶滅してたはずじゃ! ……いやそれはニホンオオカミか。というかそもそもここは異世界って話だから地球で言う狼とはまた別の種なのか? それに狼じゃなくて野生の犬って可能性もあるか!?)


 唐突な状況に、護はどうやってこの場を脱するか、ではなく対象の種族に関して頭を回していた。混乱している。


 当然、野生の獣が、獲物が落ち着くのを待ってくれるはずもなく、護に襲い掛かる。


「わああ!」


 咄嗟に突き出した拳が、運良く獣の鼻面を叩く。


 叩き落された獣は小さく悲鳴を上げ、若干後退して距離を取った。

 大したダメージは無いようだが、少し怯ませることが出来たようだ。


(――逃げないと!)


 ここにきてようやく護の混乱が収まり、思考は逃げの一色に染まる。

 地球ですらほとんど取っ組み合いの喧嘩などした事のない護だ、野生の獣に勝つ自信があるわけもなかった。


 幸い、もう少しで森を抜けられる所まで来ている。

 全力で走ればなんとかなるかもしれない。と、威嚇する獣からじりじりと後ずさり、ある程度距離が開いた所で、脇目もふらずに全力で走り出す。




 実際のところ、本気で獣に追われていれば逃げ切れなかったかもしれないが、街からさほど離れていない事や、先程の反撃で獣も消極的になっていた。

 そして必死な護は気付いていないが、火事場の馬鹿力か、魔力による活性化の影響か、十二歳程度の肉体で出すには難しい程の速度で走ることが出来ていたからである。



 森を抜け、しばらく走り続けたところで獣の足音が聞こえない事に気付き、走りながらちらりと後ろを振り返る。


「……ふはぁ。なんとか逃げ切れたか」


 安心したことでその場にへたり込む護。そのまましばらく休憩して息を整え、これまで走っていた道の先を眺めた。

 街までもう1kmもない、傍らに門番の佇む門が見える。


「さて、行きますか」


 よっこいせ。と立ち上がり、護はゆっくりと門へ向かって歩き始めた。




これを戦闘描写と言っていいのかは分からないけど、

いずれ本格的な戦闘を書くことになるかと思うとやや憂鬱に……!

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