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第31話 魔術訓練


「あら、今日は珍しく低階層の依頼なのね?」


「ええ、ちょっと戦闘の基礎を見直そうかと思いまして……」


 あの肉祭りが終わって数日後、護はギルドで地下八階相当の依頼を受けていた。

 シルバー+ランクになってからはいつも地下十六階相当の依頼を受けていたし、依頼とは別に、腕試しに地下二十四階まで行ったこともある。多少疑問に思われてもおかしくはないだろう。


「そっか、基礎は大事って言うもんね。

 大丈夫だとは思うけど、それでも気をつけてね?」


 そう注意を促すラーニャに見送られ、護はダンジョンへ向かった。




 ダンジョンの地下一階から地下十二階では主に魔蟲型モンスターが湧出している。

 更に下に行くにつれ、獣型と魔物型が魔蟲型と混ざって出てくるようになる。それも階層を下れば下るほど、同じモンスターでもより大きく、より力強くなっていく。


 この日護は地下八階で基礎訓練すると言ったが、それは格闘の訓練ではない。それならばもっと下の階層でも良かっただろう。

 今回する訓練は、魔術の訓練だ。


 魔力の最大値を伸ばすために、普段は魔力を消費しない魔力操作関連のスキルのみ使い、訓練している。確かにそれだけでも魔術の腕も一応は向上する。

 しかし、先日の肉祭りで護はふと思った。自分もあんな風に魔術を使いこなしてみたいと。

 そうなれば、やはり魔術の腕を伸ばすなら普段から実戦で使うのが一番だ。ということで、あまり素早くない魔蟲型の多い、浅い階層から試していくことにしたのだ。


 ダンジョンに入った護は簡単な魔術を試しながら地下八階を目指して歩いていく。


「『氷の矢』」


 先端を鋭く尖らせた氷の矢は音を立ててあっさりと迷宮蟻の頭部を貫く。まだ階層が浅すぎるのか、敵が柔らかすぎて参考にならない。

 護は雑魚の頭を蹴り一発で吹き飛ばしながら、さっさと地下八階に向かうことにした。




「『風の刃』」


 空を切り裂いて飛来する風の刃が芋虫型モンスターの身を切り裂くも、絶命させるには至らない。


 地下八階に着いた護は、早速遭遇したモンスターに魔術を放っていた。


「よし、ここなら丁度良さそうだな」


 まずは初歩の攻撃魔術の威力を高めるべく、魔蟲達の攻撃を軽くあしらいながら何度も、何度も初歩魔術を繰り返す。

 一撃で倒すどころか、中々深い傷を与える事も出来なかったが、繰り返すうち、徐々に狙いは正確になり、その威力も増していった。

 時々休憩したり、時々邂逅しそうになる冒険者を避けたり、稀にモンスターから剥ぎ取れる魔力結晶から魔力を吸い取りながら、護は腕を磨き続けていた。




「『火の玉』」


「……『燃え盛る火の玉』」


 何を思ったのか、護は魔術名を装飾してみる。すると魔力の消費量が僅かに増えたものの、明らかに威力が上がっていた。


「おお……!」


 その結果に喜んだ護は次々と魔術名を改造していき、……果てには調子に乗ってテンション高く詠唱まで唱え始めた。


「その穂に纏いし風の助けをもって敵を貫け! 『渦巻く風塵纏いし氷の槍』!!」


「その身に蓄えし雷撃によって我が敵を滅ぼせ! 『雷呑み込む水の蛇』!!」


「その刃を蝕む灼熱の炎は如何なる強固も斬り開く! 『焔蝕む岩の刃』!!」


「あらゆる生命を支える安息の大地は、今! この時をもって汝に牙を剥く! 『爆ぜる大地の逆鱗』!!」




 結果的には詠唱によって威力はかなり上昇した。が、


「はぁ、はぁ……ハッ!? 俺は一体何を……!」


 散々やらかしてしまってから護は我に返った。


(これじゃあ歴代ミスリル達の中二ネームを笑えない……!)


 近付く冒険者は全て避けてきたが、もしかしたら大声で叫んでいた詠唱が聞こえていたかもしれない。

 そう考えると護は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら走り回りたくなった。魔術の詠唱は封印しなければならない。

 まあ実のところ、魔術名の改造も詠唱も魔術師であれば個人で好き勝手にチューニングするのが普通なのだが、聞く相手のいない護は知る由もなかった。


「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 結局走り回る事にした護の絶叫が、ダンジョンに空しく響き渡る。




こうしてワンマンアーミーになっていく護でしたとさ!

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