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第29話 祭り2



 宿を出た二人は真っ直ぐ大通りに向かう。

 つないだ手から、今にも駆け出しそうにそわそわするカリーナの様子が護には伝わっていた。


「マモルお兄さん、はやくはやくっ」


 普段は十歳にしては落ち着いている方だが、やはりカリーナもまだまだ子供なのだろう。手を離せばあっという間に見失ってしまいそうだ。


「あはは、そんなに急がなくても大丈夫だよ、時間はまだまだあるからね」


「うー。それでもはやく行きたいんですっ」


「そうだね、わかった。じゃあちょっと急ごっか」


 ぱあっとにこやかな笑顔になったカリーナと共に、まばらに人の行き交う脇道を駆け足で進み、ようやく東の大通りにたどり着く。


 まだ日が顔を出したばかりだというのに、そこにはたくさんの人で溢れていた。

 いかにもたらふく肉を食べそうな虎頭の獣人や、今まで見たことが無かった蜥蜴頭の魔人。中には群集から頭二つ分も飛び出たワイルドな女性が、いくつもある肉の屋台を前に舌なめずりしている。


 また、肉祭りとは言っても、オーク肉の屋台ばかりではない。食休めに果実をそのまま出す店や、絞った果汁を出す店、魔術を使ったデザートを出す店。

 他にも街の外から集まる外来客を対象にした露天商など、とにかく多くの店が軒を連ねている。


(ぬう、めちゃくちゃ人多いな……)

「さてと、カリーナちゃん、どこから行く?」


「あっ、はい。そうですねー、まずは朝ごはん代わりにいくつか食べましょう。それからしばらく露店とか覗いてみたいです!」


 この祭りのメインは肉。当然二人とも朝食は抜いてきている。


「了解、店選びはカリーナちゃんに任せるから、好きなところ選んでいいよ」


「わはっ。はい!任されましたっ」


 はしゃぐカリーナと共にいくつかの露店を巡り、レタス風の野菜と肉を挟んだバケットサンドのような物や、口の中でとろけるほどに柔らかく煮込まれた肉がたっぷり入ったスープ、爽やかな酸味のあるシャクシャクとした食感の果実などを食べて周る。注文した時の声が若干おどおどしていたのはご愛嬌だ。


 ある程度腹の膨れた二人は中央広場に向かって、露店を冷やかしたり、大道芸人におひねりを投げたりしながら大通りを進んでいく。

 中央広場では昼過ぎに何やら催し物があるそうだ。それ以外の時間にも、演舞や魔術による見世物に使われていて、祭りの空気を賑わせている。



 大道芸人の密集する場所を通りがかった時だ。

 カリーナが大道芸に気をとられてよそ見をし、向かい側から背の高い竜人が彼女に気付かずにぶつかろうとしていた。


「あ、カリーナちゃん、危ないよ」


 よそ見をしている時に手を引かれ、カリーナはバランスを崩して危うく転びそうになるも、慌てて護が受け止める。


(ああ、この偶然を神に感謝します)


 何か護が危ない事を考えているが、それはともかく。


「す、すみません、ありがとうございます」


「いいよ、気にしないで」



「あらあんた、覗きかと思ってたけど幼女性愛者(ロリコン)だったのね」


「は!? って、レーナさん? あ、いえ違います違います!」


 そこにいたのは訝しげにこちらを見るレーナと、[迷宮の薔薇]の面々だった。


「ふん……。冗談よ」


「ふふ、こんにちは。奇遇ね、マモル君」


「あ、ああ、こんにちは、イーシャさん」


 彼女達も必要最低限には身を守る物を身に着けているが、祭りにまで武装をしてくることもなく、どこか華やかな衣服を身に纏っている。


「そっちの子は妹ちゃん? それとも迷子ちゃん?」


「はは、いやいや、お世話になってる宿のお子さんで、一緒に祭りを見て周ってもらってるところですよ」


「あら、そうなんだ。

 そうそう、この間は依頼の途中だったからそんな暇なかったけど、今日は折角だからうちのメンバーを紹介するわね。

 まず私から。槍斧使いでシルバー+ランクパーティー[迷宮の薔薇]のリーダーやってます、改めてよろしくね。」


「あ、はい、よろしくお願いします、イーシャさん」


「それから――」


 シエーヌとクシーを紹介され、それぞれ挨拶を交わしていく。


「――で、知ってると思うけど、盾剣士でパーティーの盾役やってるレーナね」


「……ふん、よろしく」


「よ、よろしくお願いします……」


 なんとなく気まずい空気の中、それまで待ってくれていたが、堪えきれなくなったのかカリーナが物言いたげに左手をくいくいと引っ張る。

 カリーナも多くの客と話す事から、人見知りするわけではないのだが、今は祭りを楽しむことが優先されたらしい。


(くっ、かわいい……!)

「あ、待たせてごめん、カリーナちゃん。……すみません、今日はこのへんで」


「折角だし一緒に周ってもよかったんだけど、お邪魔しちゃ悪いわよね。それじゃあマモル君、またね」


「はい、また。失礼します」


 イーシャ達とわかれ、二人は再び広場の方向へ歩き出した。




これで終わるはずだったんですが、まだ続きます。


それにしても、気のせいか護が変態になりかけてるような……

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