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第22話 その後の事


 無事地上に戻ってきた[迷宮の薔薇]と群れの監視をしていた冒険者は、ギルドに群れが地下十階まで上ってきていた事と更なる群れの増大を報告し、ギルドを一時騒然とさせた。

 が、次いで正体不明の人物によって助けられた事と、黒炎によって群れの数が大きく減り、あるいは希少個体も討伐された可能性もあると報告し、ギルドは討伐隊の編成を一時中断し、調査隊を派遣することとなった。


 調査隊は数班に分かれ、地下十八階まで徹底して捜索を続けたが、希少個体とその群れとおぼしきものは確認されず、希少個体は討伐されたものとしてこの件は処理された。




 一夜明け、冒険者ギルドはいつもの雰囲気を取り戻していた。


 ……が、その中で一人、暗い表情をしてうつむくギルド職員がいる。……ラーニャだ。

 彼女は地下十階まで群れが上ってきていた事を聞き、護の事を思い出していた。

 護は出発前地下十階まで行くと言っていた。途中でイーシャ達に会っていれば引き返したかもしれないが、まだ戻ってきていない。


(……マモル君、生きてるよね? 群れが殲滅される前に地下十階まで辿り着いてたりしないよね? ……きっと上ってきてたのも知らずに、今も地下十階にいるだけだよね?)


 ラーニャはそんな風に考えながらも、まさか死んでしまったのではないか、という不安を振り払えずにいた。群れが殲滅された正確な時間は分かっていないし、護が知らず群れの中に飛び込んでしまった可能性が無いとは言い切れないのだ。


(マモル君、早く帰ってきて安心させてよ。知り合いがいなくなるなんて事、慣れたくないんだから……)


 受付嬢をやっていれば、親しくなった冒険者が命を落とす事もそう少なくは無い。

 先輩の受付嬢達も初めのうちは涙をこぼし、悲しんでいただろう。だが今では必要以上に親しくならないよう一線を引き、知り合いが命を落とす事にも段々と慣れてしまっていた。


 ラーニャは護の無事を祈り、暗い顔になんとか笑顔を浮かべながらも業務を続けるのだった。




 そんな心配をかけているとは露知らず、護は地下十階で探索を続けていた。


 護は[迷宮の薔薇]が地上に戻ったのを見届けた後、また地下十階へと引き返していた。


 群れの半数以上の魔力を吸収したせいで、ギルドカードはとっくに真っ黒だ。一日と経たずそれではどう考えても怪しすぎるだろう。

 そこで、ギルドカードの魔力は少々もったいないが、消費した肉体の魔力の回復がてら、二日ほど資源でも集めながらここでおとなしくしておこう。という結論になったのだ。どうせ元より何日かは篭るつもりだったし、問題はない。

 顔は合わせなかったが、途中調査隊が来た事にも気付いていた。フロア中を徹底的に捜索したはずなのに会わなかったなどと言えば怪しいことこの上ないのだが、それに思い至ったのは調査が終わってからだ。……帰るまでに良い言い訳を考えておかねばならない。


(あの子、大丈夫かな……怪我は治ってたみたいだけど、後遺症とか無ければいいな……。ま、そうだとしても俺にはどうにも出来ないし、考えても仕方ないか。)


 時折そんな事を考えながら、探索を続けるのだった。




「ん…んぅ。ここは……宿?」


「レーナっ、目が覚めたのね。調子はどう?」


 その頃、ファスターのある宿では、昏々と眠り続けていたレーナが目を覚ましていた。


「イーシャ……。そっか、あたし、蟲達にやられて……。まだ体が重いかも。皆は?」


「シエーヌは物資の補充、クシーはギルドに話を聞きに言ってるわ。……まだ分からないけど、今のところ大きな異常は無さそうね。安心したわ」


「もう! 怖いこと言うのやめてよっ。……それで、私が倒れてからどうなったの? よく皆無事に帰ってこれたわね」


「あはは。うん、それがね――」


 イーシャはゆっくりと話し始める。

 レーナが倒れてすぐ小部屋に篭り、結界を張って二人の治療を始めたこと。

 レーナが危険な状態だったが、誰かが強固な結界を張ってくれたおかげで治療に専念でき、状態が安定したこと。

 見たことの無い魔術と思われる黒い炎が蟲達を一掃し、その隙に二人を背負って地上へと帰ってこれたこと。


「……そう、あたし達、助けられたのね」


「ええ、誰かは分からないけど、本当に感謝しているわ。……助けが無ければ、きっと私達は全員あそこで命を落としていただろうから」


「そうね。皆無事に帰ってこられたんだもの、感謝してもし足りないわよね。……それにしても、一体誰なのかしら。あんな大規模の群れを焼き尽くすなんて、どう考えても普通じゃないわ」


「うーん……。レーナが寝てる間に私達も考えたんだけど、プラチナランクのパーティーがたまたま通りすがりに助けてくれたんじゃないかなーって」


「プラチナランクのパーティーが通りすがりにい? 確かに実力的にはそれくらい無いと無理かもしれないけど、そんな偶然ありえるぅ?」


「わ、私だってそこまで本気で思ってるわけじゃないわよっ。クシーにはギルドにそれも聞きに言ってもらってるところ! とにかくっ、レーナはしっかり休んで体調戻してよね! ……心配したんだから」


「……うん、分かってる。心配かけてごめん」


 こうして、[迷宮の薔薇]は鋭気を養い、更なる冒険に備えるのだった。




護の反応がややドライな感じですが、理由はそのうち明かされます。……多分。


そんなことより、あんまり癖の強いキャラを出さないようにしてるせいか、おにゃのこの口調分け難しい……!

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