幕間 彼女達から見た不審者
槍斧使い=イーシャ 盾剣士=覗かレーナ 宝掘師=クシー 支援術師=シエーヌ ネーミングセンスについてはツッコまない方向で!
「――クシー、どう?」
「付いてきてはいない……と、思う。移動中ならある程度近づけば分かるだろうけど、一定以上の距離をあけられたらアタシにゃあお手上げだね」
「そう……。シエーヌ、次に入る部屋では一度先に『閃光』をお願い」
「分かった」
イーシャ率いるパーティー[迷宮の薔薇]の四人組は護のいた部屋を出てからも、十分な距離をとるまで護への警戒を続けていた。
護の話が全て本当ならそんな必要は無いのだろうが、そんな保障は誰もしてくれない。女だけのパーティーとなれば舐める輩も大勢いるし、不埒な事を考える輩もいないわけではない。そう簡単に人の言葉を鵜呑みにしていては、自らの身など守れない。
もし護が本当は一人ではなく、同等の技量を持つ仲間と共に自分達を狙っていたとしたら、恐ろしいなんて話ではない。気付かぬうちに寝首をかかれているという事もありうるのだ。
(とはいえ、一晩中警戒するわけにもいかないわよね。休める時に休まないと)
「クシー、次にモンスターのいない部屋を見つけたらそこまで誘導をお願い。そこの安全が確認できたら今度こそ夜営しましょう」
「りょーかい、それなら少し先に丁度良さそうなとこがあるよ。こっちだ」
辿り着いた部屋を念入りに確認し、安全を確保したところでようやく少し気を緩める。
「ふー。……またあいつ覗いてたりしないわよね?」
「少なくとも、さっきの今で近くにいれば気付かれる事は分かってるんだから、部屋の中にはいないと思うよ」
未だ強く警戒していたレーナだったが、クシーの言葉でやっと警戒を緩める。と、そこでまた先程の憤りを思い出したのか、
「にしても本当腹立つわねあの覗き魔術師! いるならいるって言いなさいよ!」
「あはは、まあまあ。あの子が本当に一人だったなら、数で勝る私達に警戒するのも仕方ないよ、ダンジョンじゃ何が起こるか分かんないんだし」
「皆はまだだったからいいかもしれないけど、あたしは体を拭いてたのよ! 影の中から覗かれてたかと思うと……! ああ、もう、一発ぐらい殴っとけばよかったわ!」
「くくっ、まあこっちも気付かなかったんだ、事故ならしゃあねえさ。それに薄暗かったし裸になったわけでも無い。子供にちょっと肌見られたくらいでそんなに怒るなよ」
「怒るわよ! 乙女の肌はそう簡単に男に見せていいものじゃないんだから!」
イーシャやクシーが宥めるが、中々レーナの怒りは鎮まらないようだ。
「それにしても、彼の結界は本当に見事だった。解除されるまで全く認識できなかった」
「そうよね、私も出てくるまでクシーの言った事に半信半疑だったわ」
「ひどいなぁ。アタシも運良く気づけたようなもんだけどさ」
「一人でダンジョンに潜ってる上、あの技量でシルバーランクってところもまた信じがたいところよね」
「ふん。どうせ隠れて資源系の採取ばっかりしてるからランクが上がらないんでしょっ」
「ま、とにかく帰ったらギルドに話でも聞いてみようか。本当に一人で探索してるようなら私達も少し安心できるし」
ちょっと次の話書くための布石も兼ねてます。あ、そんな深い意味とかは無いです。




