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第6話 街を巡る2


 ドアを押し開け、宿へ戻った護を、受付の子供が迎える。


「あ、えっと。……おかえりなさい、マモルさん。冒険者だったんですね」


 抱えた装備を見て、見当をつけたようだ、どこか羨むように眺める。


「ん、うん。見ての通り、駆け出しだけどね。荷物を一度部屋に置いて、次は道具を揃えに行くつもりなんだ」


「へー、いいなあ。うちはおかーさんが許してくれないから……」


 残念そうに呟きながら鍵を手渡される。相当に残念なのか、喋り方が崩れていた。



 宿に荷物を置いた護は、道具屋へと向かう。

 教わった道具屋は、比較的冒険者向けのものをメインに品揃えをした店のようだった、それなりに広いはずの店内が、雑多に置かれた大量の商品で窮屈になっている。


「いらっしゃい! 見たところ新人冒険者かい? ならこれとこれ、それにこれと、これに、……ああ、これもあったね!」


「あ、……え、えっ!? あ、うわっ、わわっ」


 やたらがっしりとした店員(女性)が護を迎え、瞬時に身なりを観察し、新人であることを見抜き、次々と必要と思われる物を商品の山から引っ張り出し、護に手渡していく。

 その勢いに、護は呆然としながらも受け取り、いつの間にか購入を済ませ、店を出ていた。


「お、おおう、商売人怖い……!」


 我に返った護は戦慄に体を震わせつつも、最後に薬屋に向かう。



 そこは多くの薬品の臭いが混ざり合い、充満する空間だった。

 微かに眉をしかめ、中に入った護は、何か作業をしているのだろうか、受付の奥でこちらに背を向ける女性に声をかける。


「あの、すみません、ちょっといいですか?」


「あら、いらっしゃい。なにかな?」


 振り返った女性は、腰まで届きそうな程長い金の髪を翻し、用件を尋ねた。

 予想外な金髪のお姉さん系美人との遭遇にたじろぎながら護は答える。


「う、えと、明日から冒険者になるんですけど、必要そうな物があれば教えてもらえませんか?」


「んー、そうねえ……。新人ならそんなにお金持ってないわよね?

 だったら浅い擦り傷、切り傷によく効く軟膏と、――あら、それなら道具屋で買った? ふふ、あの人は相変わらずねえ」


 道具屋で半ば押し付けられるようにして買った中に、小さめの容器に入った軟膏が五個セットで入っていた。

 これは新人だけでなく、熟練の冒険者も常備している、冒険者御用達の薬だ。清潔にした浅い傷に塗っておけば、一晩でほぼ完治している。そして安い。


「後は重い傷や骨折によく効くヒーリングポーションと、この街周辺の毒に対応したアンチドートポーションを緊急用に数本持っておくのがいいかしら。……とは言っても、効果の高い物は値段も高くなっちゃうから、お財布の中身とよく相談してね?」


 いくつか効果の高いポーションの値段を教えてもらったが、今の護には手の出せない金額だった。

 重傷に効く薬の中でも、比較的手頃な価格の物をいくつか購入し、店を後にした。


「お金を溜めてまたきてねえー」


 後ろからお姉さんの声が聞こえるが、


(聞こえない、断じて聞いていない……!)


 護は逃げるように宿へと帰っていった。



 宿に戻った護は部屋に戻り、荷物を整理しようとするが、街に六の鐘が響き渡る。

 思い返せば、目が覚めてからまだ何も口にしていない。

 よくもまあ今まで気にならなかったものだ、と少しばかり自分に呆れながら、階段を下りる。


 また出かけるのか?と、こちらを見る受付の子供に、食事の採り方を尋ねる。


「えっと、とまってるおきゃくさんは、ここに声をかければいちにち二枚の札をわたします。それをさかばのちゅうぼうにいるおとーさんにわたせば、日によって決まったメニューが食べられます」


 護は説明を受けて交換札を一枚受け取り、酒場に向かい、食事を済ませる。

 今日のメニューは丸いパン、焼いた何かの肉に、果汁や香草、他多数の調味料を混ぜ合わせたソースがかけられた物、それと似たようなドレッシングがかけられたサラダだ。


 腹を満たした護は部屋に戻り、ベッドに腰掛けて荷物の整理を始めた。


 武具は明日起きてから装備するとして、道具屋で購入した大きな背負い袋に軟膏を初めとする多数の道具を整理しながら収めていく。

 最後に、メモ帳の入っていた小袋を空にして、ポーションを詰め込む。ポーション瓶も結構な強度があるが、念のために緩衝材代わりの手拭いも詰める。

 取り出したメモ帳に、今日色々説明された事や、気付いた事を日本語で書き記していく。


 そこで、昼に読み終えた際、アマテラスのメッセージが消えると共に白くなっていたはずのページが、再び青みがかっている事に気付いた。


『やっほー! みてるー? まずは無事に初日を終えられたみたいでなにより!』


 あれがアマテラスの言葉を受け取る最後の機会だと思っていた護は、慌ててページをめくる。


『ギルドカードはまだみたいだけど、登録はちゃんと出来たみたいだね。詰め込んだ常識もちゃんと機能してるみたいで安心したよ』


『ほんとはギルドカードを受け取ってからメッセージが現れるようにしようと思ってたんだけど、護君は一日の終わり以外はあんまりメモ帳を取り出さないみたいだから、前に書いたサプライズについて教えてあげるね!』


 駆け出しの冒険者が持っていないようなメモ帳を人前で出す事を躊躇ったのが災いしたようだ、サプライズを発覚する前に暴露されるという残念な事になってしまった。


『普通は冒険者登録したての新人のギルドカードは魔力も想いも溜まっていない、まっさらな状態なんだけど。……なんと! 君のカードには想いが溜められていまーす!』


『マイナスの想いは、君の地球で送り込んだ念で、未処理の分をそのまま。プラスの想いは、そっちへ送った時に削った魂の、余剰分。そっちでどれだけのポイントになるか分かんないけど、普通の新人よりは一歩リード、だよ!』


(未処理の想いそのままって、それめんどくさくてこっちの世界に丸投げしただけだろ!? というかプラスの想いに余剰分が出るって事は、必要以上に魂削ったって事なんじゃ……?)


『最後にひとこと。


 女の子といっぱい知り合えてよかったね!』


「やかましいわ!」


 たまらず護は声に出してツッコむ。

 メモ帳の内容を読み取られたのか、護の行動を見られているのか分からないが、余計なお世話である。


「はー……」


 アマテラスの真意はどうあれ、スキルの取得に必要な想いがあるのは助かる。

 護はアマテラスへ少しだけ感謝し、一日を終えようとしていた。


 ……が、そこでふと気付く。


(冒険の必需品は買ったけど、生活の必需品も代えの服も全然買ってない……!?)




[アマテラス様がみてる]始まります。


嘘です、始まりません。


今回は結構会話を省略してます。まきまき!

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