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プロローグ-兄の幻影-

 リダ。

 それは僕の名前。母が名付けた僕の名前。


 リダ。

 それは兄の名前。母が名付けた最初の名前。


 僕の名前はリダ。

 兄の名前はリダ。


 ふたりのリダ。違うのは、僕はここにいて、兄はここにいないこと――




 僕には兄がいた。僕が生まれる前、死んでしまった兄が。

 兄の名前は「リダ」。僕と同じ名前の「リダ」。兄の死に悲しんだ母が、その後に生まれた僕に「リダ」と名前をつけた。


 兄の命日が来るたびに、僕は僕と同じ名前の刻まれた墓へ母と参りに行った。

 その行事は、とても複雑な気分になる。


 自分の名前の兄の墓。

 それがいつも僕を苦しめる。



 (リダ)(リダ)なの?


 リダ(ぼく)リダ(あに)のかわりなの?

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