どこぞの孤児娘の一幕
法務官様
如何して貴方様ほどの御方が私達如き孤児や貧民に気をかけてくださるのでしょうか?
継承権を放棄なされての道楽だとか先祖伝来の遺訓に従ってとか言われましても、貴方様ほどの御方が御身を省みず下手すれば御実家の廃絶すら覚悟なさって私達のために立ち上がってくださるなんて・・・・・・・・・・・・
出会いの時も私の弟分が罪を犯そうとしたときに貴人聖域法を適用して守ってくださったのみならず、私達姉弟を許してくださり償いをという私の純潔すら守ってくださりました。
その後に孤児院を訪れてその惨状に涙を落としてくださり、私財を投げ打ち飢えと寒さから守ってくださいました。
更には孤児院の運営を任された貴族や王家に対して単身挑まれ、満身創痍で私達の為の法を認めさせたなんて・・・・・・・・・・・・・・なんて礼を申し上げてよいのやら・・・・・・・・・・・
貴方様は自身の持つ縁故や権利を行使しただけで何もしていない。
貴方方の現状に涙して力を貸してくださる方々のおかげだから私自身は感謝に値しないよと嘯き。
寧ろ国が私共に対して気を配らぬばかりに弱気者達が止むを得ず罪を犯し苦難を歩むことになってしまい本当に申し訳ないと頭を下げて真摯に詫びられる姿は一国の主ですらできないことでありましょう。
貴方様は私達に対して仕事と称して教育を授けてくださり、忠義をという申し出に自らの幸いのために生きなさい御身はそれに値しないと善き受け入れ先を探してくださりました。
でも、法務官様
貴方様が居てくださったからこそ私達は今ここで生きて幸せを受けることができるのです。
御身を損なって尚、私たちに気をかけて幸いの道をと切り開くその姿こそ私の心身ともに使えるべき御方だと確信するのです。
ですから、法務官様。
いくら打ちぶれようと滅びの道を歩もうと私は針に従う糸のように就き従います。
弟妹達!
貴方達のために流してくださった血と涙の分!!
法務官様を守り立てていくのですよ!!
注)貴人聖域法 犯罪者や社会的弱者、保護を必要とする者が一時的に貴族の庇護下に入り心身の安全を守る法律。そのものに対する安全や被害に対する責任を貴族側が負うため拒否することができるが、無実のものややむをえないもの社会的弱者が一方的に搾取される現状に対して無視するとその貴族の名誉自体が損なわれたりするので貴族側から廃絶を求められているのである。