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迫りくるガマガエル

雪に閉ざされたこの国に、ようやく静かな時間が戻ってきた――はずでした。


けれど、平和は長くは続きません。


遠くから、重たい足音が近づいてきます。

それが何を意味するのか、まだ誰も知りません。


女王は、次に来る“厄介な相手”にどう向き合うのか。


少しだけ、様子を覗いてみてください。


王宮の静寂を切り裂いたのは、伝令の荒い足音だった。

「報告! 西の強国、ガワイーマ連合王国が動き出しました! 指揮を執るのは国王イーガ・モートヨシ。一万の精鋭を引き連れ、我が国境を侵犯。こちらへ進軍中とのことです!」

女王は、手にしていた紅茶のカップをソーサーに戻した。磁器の重なる鋭い音が部屋に響く。

「一万? ……この雪深い時期に?」

女王はすぐさま鏡の前に立った。

「鏡! どういうことなの。なぜこの動きを今まで教えなかったのよ!」

鏡の表面が、面倒そうにゆっくりと波打つ。

「ああ、それか。……すまん、忘れていた。お前があまりにも楽しそうに豚を転がしているものだから、ついな」

「わざとね……絶対にわざとだわ」

女王は奥歯を噛みしめ、鏡に映し出された敵軍の姿を凝視した。

そこに映っていたのは、軍勢の中央、何十人もの兵に担がれた豪華な輿こしにふんぞり返る一人の男だった。

顔はむくみ、目は突き出し、口はだらしなく横に広い。まさに巨大なガマガエルを擬人化したような醜悪な容姿。だが、その肌には白粉おしろいが厚く塗られ、歯にはお歯黒、豪華絢爛な公家装束を纏っている。

「あれが……モートヨシ?」

「そうだ。奴は『海道一の魔法弓取り』と謳われる名将。見た目はあんなだが、法整備によって家臣団を鉄の規律で縛り、近隣の怪物たちと渡り合ってきた化け物だ。……そして何より、お前のような『美しい女』をコレクションするのが、奴の最大の趣味でな」

鏡に映るモートヨシは、不気味に舌を出し、手に持った扇で自身の腹を叩きながら笑っていた。軍勢は一万。対するこちらの防衛戦力は心許ない。

「……私の国に攻め込んでくる理由は? 」

「単なる強欲さ。そして、お前という『獲物』への執着だ。奴は、お前がこのブラックスノー国を立て直しつつあると聞き、最高の状態で奪い取ろうと考えたのさ」

女王は鏡を睨みつけたまま、静かに笑った。その笑みは、凍てつく風よりも鋭い。

「面白いじゃない。豚の次はカエル。私の周りには、どうしてこうも不潔な生き物ばかり集まるのかしら」

女王は側近を呼ぼうとしたが、ふと足を止めた。

「そういえば、あの豚……イグナティウスはどうしているの?」

「神父か? 奴なら今、地下室で**『自家発電』**中だ。お前の教えた『聖女の妄想』に脳を焼かれ、全身全霊で魔力を結晶に注ぎ込んでいる。廃人一歩手前だが、そのおかげでこれまでにない高純度の結晶が次々と産み出されているぞ」

女王は唇を釣り上げた。

「……ちょうどいいわ。その結晶、カエルを仕留めるための『毒』として使わせてもらいましょう」

女王は再び鏡に向き直る。

「鏡、モートヨシの進軍ルートを詳しく出しなさい。一万のカエルを、料理してあげるわ」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回の相手は、これまでとは少し違います。

見た目だけでは判断できない存在です。


女王がどう動くのか、そして何を選ぶのか。

引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。

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