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鏡の夢

もし未来が、夢のように断片的に見えるとしたら。

そしてその夢が、国の滅びを映していたとしたら。


これは、鏡に未来を見せられた女王が、

その運命を書き換えようとする物語です。

冷たい石造りの部屋に、女王の声が響いた。


「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰?」


それは儀式だった。


王冠と同じくらい、

当然の事実を確認するための儀式。


鏡はいつも同じ答えを返す。


この国で最も美しいのは――

女王。


それは疑う余地のない秩序だった。


しかし、その朝。


鏡は沈黙した。


銀の表面が、ゆっくりと曇っていく。


女王は眉をひそめた。


「どうしたの?」


鏡の奥から、低い声が響いた。


「お前……そんなことを聞いている場合か?」


空気が凍った。


女王の目が細くなる。


「今のは……冗談?」


鏡は答えない。


その代わり、表面が波打った。


そこに映ったのは――


泥だらけの寒村だった。


女王は鼻で笑う。


「田舎ね」


鏡は言う。


「お前の国だ」



鏡の夢


古びた納屋。


農民たちが集まっている。


痩せた腕。


裂けた服。


そして手には鎌。


女王は不機嫌そうに言った。


「農民が武器を持つなんて珍しくないわ」


鏡の声が低くなる。


「よく見ろ」


中央の老人が叫んだ。


「子どもが死んだ!」


怒声が広がる。


「税を払ったのにだ!」


鎌が床に叩きつけられる。


女王は肩をすくめた。


「冬は厳しいものよ」


鏡は静かに言う。


「夢だ」


少し間を置いて続けた。


「だが未来の夢だ」


女王の目が鋭くなる。


「未来?」


鏡の中の農民の一人が顔を上げる。


その目は冷たかった。


そして納屋の扉が開く。


外には松明の光。


女王は一瞬だけ沈黙した。


しかしすぐに笑った。


「面白い夢ね」



鏡の警告


鏡の声が低く響く。


「空腹の羊は狼になる」


女王は腕を組んだ。


「羊は羊よ」


鏡の表面に炎が映る。


王宮が燃える。


旗が落ちる。


女王の瞳が細くなる。


「……悪趣味ね」


鏡が言う。


「お前がまつ毛を整えている間に」


炎が広がる。


「奴らは松明を用意した」


女王は鏡に近づいた。


「つまり?」


鏡の声が冷たい。


「燃やされる未来だ」


女王は数秒黙った。


そして笑った。


「農民が王宮を燃やす?」


その笑いは、氷のように冷たい。


「その前に騎士団が十回は皆殺しにするわ」



分かれた未来


鏡の表面に、いくつもの光景が浮かぶ。


農民の反乱。


雪に覆われた村。


断頭台。


そして黄金の光に包まれた村。


鏡が言う。


「未来は一つではない」


女王はしばらく見つめた。


やがてベルを鳴らす。


扉の外から騎士の声。


「お呼びでしょうか、陛下」


女王は鏡を見たまま言った。


「蔵を開けなさい」


「小麦を村へ送るの」


騎士が戸惑う。


「農民を救うため……ですか?」


女王は笑った。


その笑みは冷たい。


「違うわ」


鏡を見つめる。


「私の国が燃えるかどうか試すためよ」


窓の外で風が吠えた。


女王は最後に鏡に言う。


「もしこれが本当に未来なら」


王冠の影が床に落ちる。


「その未来は――」


静かな声。


「私が書き換える」




鏡が見せた未来は、まだ「一つの可能性」に過ぎません。

女王がその通りに動くこともあれば、まったく違う選択をすることもあります。


この物語は、いくつもの未来の分岐を辿りながら進んでいきます。

もしよければ、女王がどの道を選ぶのかを想像しながら読んでいただければ嬉しいです。

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