第11話|思っていたよりも
── コンコン
父の部屋を訪ねた私は、返事も待たずに扉を開ける。
「おお、ロゼリア、どうし……」
「お父様。……なにか私に言うことはありませんか?」
笑顔を浮かべ、言葉とともに少し詰め寄る。
父は一瞬、目を泳がせた。
「いや、あー、その、お、落ち着きなさい」
「お心当たりありそうですわね?」
「う、む……」
私の迫力に押され、父はしどろもどろに言葉を探す。
私は笑みを崩さないまま、じっと父を見つめた。
「ロヴァルド殿下のことか……?」
バツが悪そうに呟く父。
「お父様、いつの間に殿下とあの様な約束をしたんですか?」
「2回目に殿下が来られたときに……」
「それに案内もなしにお招きするなんて、不敬が過ぎると思うのです」
「それは……だって殿下がそうしたいって言ったんだもん……」
明らかにしょんぼりしてるのが分かる。
いつもは威厳のある父なのに、時折こうなる。……可愛いのだけれども。
そんな父を見て、ふぅ、とため息を一つ。
「お父様、顔を上げて下さい。きちんと説明してくれれば、私も怒りませんから」
「うん……」
まだしょんぼりしている。
圧を掛けすぎたかしら……。
「殿下が婚約を申し込んで来た日、政略結婚と言っていただろう?」
「ええ」
「でも婚約破棄されたばかりのロゼリアを、政略に巻き込みたくなくてだな……」
「はい……」
「でも殿下もロゼリアも、好き合うなら問題ないだろう?」
「はい……?」
「普段のロゼリアを見て好きにならない男など、いるはずがないだろう?」
「お、お父様……?」
「だから通い詰めれば、ロゼリアの心も動くかもしれないと……」
「…………」
「そしたら殿下が、通うから自由にさせてくれって……」
…………。
め、目眩がしそう……。
「お父様、親バカも大概にして下さい……」
「何を言う。ロゼリアより良い娘など、この世にいるものか!」
「そういうのを親バカと言うんです!」
……まったくもう。
殿下が連日通っていたのは、父のせいだったのね……。
申し込まれている側とはいえ、相手は王太子殿下なのよ?
よりによって、こんな提案をするなんて!
殿下の性格によっては、処刑されても文句は言えないのでは……?
でも、そんな親バカの提案を受け入れた殿下も殿下だわ。
きっと私に気を使ってくれたのね……。
「お父様のお気持ちは分かりました。とても有難いことだと思っていますわ」
「ロゼリア……」
「私もエルフォルド家の人間ですもの。結婚が避けて通れないことも分かっています」
しばらくは未婚のまま、この生活を楽しみたい。
そう思っていたけれど。
父の立場も、家のことも考えると、このままで良いわけないのは分かっている。
「私は以前よりも、婚約については前向きに考えていますから」
「本当はまだまだ嫁になんか出したくない……」
「まだそんなことを仰るんですか、お父様……」
そう。
私は断れるなら断りたいと思っていた。
エルフォルド家は、かつての功績によりエルディオール王家から家名を賜った由緒ある公爵家。
その縁もあり、第一王子キリギルス殿下に嫁ぐため、小さい頃から様々な勉強をしてきた。
そして先日の破談。
肩の荷がおりた気がした。
前世の記憶を取り戻したことも相まって、誰であろうと再び婚約なんてしたくもない。
そう、思っていたのに。
自分でも不思議なくらい、変わってきている自覚がある。
冷たいと感じる振る舞いも、ちゃんと見れば真面目で誠実だった。
不器用で、照れるとほんの少し可愛いところ。
そんなロヴァルド殿下のことが、気になっているなんて──
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