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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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9/19

9話

◇神界TV


「ゴッズタイム! 今日もやってきました。

莫大な金を手にできるのはどの神か? 解説のパニスです。レッツエンジョイ!」


 画面の端で、別の映像が高速で切り替わる。

 いくつかの名前がオッズ表から消えた。


「今のは?」

「……映す価値がなかっただけだ。短すぎてな」


 オッズ表の更新が止まり、クロ―の欄だけが残る。

 他の名前は、次の更新でまとめて消えた。

 倍率だけが、ゆっくりと動き続けていた。


 この瞬間、人間を駒にした賭場は神たちで溢れかえる。

 熱気がさらに増す。


 場内の照明が落ち、メイン映像が切り替わる。

 そこに、クロ―の映像が映し出される。


 画面には詳細は出ない。

 演出用のぼかしと、数値だけが重ねられていた。


 ――視聴維持率:上昇

 ――感情反応値:低

 ――演出成立判定:未達

 ――感情消費効率:低


「……数字が伸びないな」

「形式は踏んでいるが、反応が薄い」

「“条件”は満たしたが、“見せ場”になっていない」


 誰も画面を食い入るようには見ていなかった。

 神々が見ているのは、映像ではなく――横に並ぶ数値だけだ。


「注目株のクロ―です」

「……ですが、今回は“感情”が足りませんでした」


「形式的な反応は確認できましたが、

 内的変動が観測できない」

「世界側としては、成立扱いできませんね」

「これは世界側の判定が分かれるところですね」


「果たしてこの追放は打倒なのか、システム側の動きが注目されます」


 神々たちはざわつく。

 映像に対してでなく、処遇について追加を求める声が多い。


「いいじゃないか、このヒヤヒヤ感が」


「調子に乗らせすぎると、収拾がつかん」


「まだ見ていたい」


「追放イベントや襲撃イベントの追加はないのか?」


 方々で共通しているのは足りないということだった。


「様々な声が上がってきました。

システム側がこれをどうするのか、今後の動きに注目していきましょう」


 神はニヤつく者が多い。

 それは分かっているからだ。


「……ああ。世界が、次を用意し始めた」

「もう走り出しているな。止められん」


「新しい情報が入ってきました。今回の長きにわたる勇者チームは全滅しました。

したがって全滅エンドに賭けた皆さんの最終オッズはこちらです」


「おおぉお」


 神々の声があふれる。

 安定的な運用がされていた勇者が全滅というのは穴に近い。


「これだから、勇者はわからねぇんだよな」


「これまで結構勝ってただろ?」


「いや~こいつらは決定打に欠けるんだよな」


「もっとこうさ、クロ―のように何しでかすかわからない奴じゃないとな」


 今日も神の賭博場は熱気に包まれていた。




 一方その頃クロ―は――


 夜伽の女が去ってから、ぼんやりしていた。

 与えられた部屋でごろ寝をし、天井を眺める。

 

「わけがわかんねぇ」


 なんで追放された?

 何が今回お礼として足りなかった?

 その直後の助言はなんだった?

 しかも誰だ?


 疑問は解消されない。

 ただ言えるのは――


「俺、追放されても怖くなくなった」


 ――いや、違う。

 怖がる“余地”が、もう残っていない。


 というより、あらゆることで怖さが激減した。

 怖いと思う感情が削れていること自体、危ない。

 自分自身を守る感覚というか危機感か。

 それが、薄れているんじゃないかと。


 でも――


「白い空間に行ってない。

……つまり、まだ大丈夫なはずだ」


 堂々巡りの考えを一旦落ち着かせるため、立ち上がる。

 その時不意に響いた。


 パリンッ。

 まるで空間の一部が割れたかのような感覚。


 唐突に脳裏にいつもの声が響く。


【おめでとうございます! 襲撃イベントが発生しました。

今から24時間以内に発生します。勝利条件は、襲撃者の死亡。

手段問わず駆逐してください。

勝利時1体につき、1万追放ポイントが獲得できます】


 なーマジか?

 襲撃しゃうって、アホなの? バカなの?


 今の手持ちは、カードは2枚。追放ポイントは61,000ポイント。

《誤認ラベル》(弱)

《追放ノイズ》(弱上)


 何が最善だ?

 今回は賭けだ。

 追放ノイズを使えば……

 ――流れを変えられる、

 かもしれない。


 どっちにしろ、追放は避けられない。

 ポイントも減る。

 ――だからこそ、選べるのは“その後”だけだ。


 ……クソが。


「あいつら、見るものしか信じねぇ」


 なら――

 見るものを、壊す。


 あいつらは、

 次に何を打つべきか、分からなくなる。


 なら決めた。

 俺は切る。


「《追放ノイズ》(弱上)行けッ!」


「得はしねぇ」


 でもかまわねぇ。


 ……正しい判断ができなくなったな。ざまーみろ。


 そう思った瞬間、こめかみの奥が、ぎゅっと締めつけられた。

 視界の端がざらつく。

 音が、少しだけ遅れて届く。


 ああ、これが反動か。


 吐き気はない。

 立っていられないほどでもない。

 でも――確実に、何かが削れた感覚があった。


 怖くは、ない。


 それが一番おかしかった。

 命を弄ばれて、次は襲撃イベントで、逃げ場もない。

 普通なら、喉が詰まる。

 息が浅くなる。

 足が震える。


 なのに、何も起きない。


「……本当に、削れてきてやがるな」


 自分で言って、少しだけ眉をひそめた。

 慣れちゃいけない。

 これは、慣れる類のもんじゃない。


 でも、もう戻れない。

 

 あいつらは、見るものしか信じない。

 なら、見せるものを壊した。

 それだけだ。


 勝った気はしない。

 得もしていない。

 ただ――向こうが、間違える。


 それで、今は十分だった。



◇神界


「おかしいな。ゴッズタイムの内容と少し違うな」

「追放ログが欠損している」


 ログの確認をする神は一瞬思考する。


「だが、今は異常はないな。観測値は安定している」

「それに――面白い」


 ならば問題ないといいたげにつぶやく。


「軽い追放だった」

「精神はまだ保っている」

「なら、壊れるまで続けよう」


 一瞬思案する様子を見せる。


「それならば、より過激なイベントの投入でいいのでは」


 神は過激なイベントを世界システムに要求をした。

 それが誤判断であると、知る由もない。



◇ミレーヌ


 ログを見て迷う。


 正確に書くと

 神が“危険”と判断する。

 でもログは壊れている。

 書きようがない。

 それなら仕方ないわ。

 正確に書けば、

 この人は“反応しない”。


 でも、それは危険判定になる。


 だから私は、

 分類できる言葉を選んだ。


 クロ―を守るために黙る。

 これは正当な方法よ。


 ――正当だと思わなければ、私は壊れてしまう。

 それだけは、許されない。

 だから私は、“危険”よりも“面白い”を選んだ。


 ――神と、同じ基準で。


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