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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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8話

◇神々の賭博場


「ヤレ! ヤレ! そこだ!」


「これはなかなか、しぶといですね。確か倍率は」


「ギャー俺の掛け金、全部パー! パッパラパー!」


 思惑が入り乱れたまさに場末。

 ここは監視魔眼を利用した賭博場。


「今日の駒は何人だ?」

「三十六。うち半分は一刻も持たんでしょうな」


 賭けの選択肢は単純だ。

 追放か、生存か、死亡か。


「安心したまえ。私は賭ける側ではない」

「――“司会”だ。場を回すだけの役さ」


 娯楽としている神々の熱気と狂喜は凄まじい。

 それを神々の娯楽番組として神界では配信されていた。


「ゴッズタイム! 今日もやってきました。莫大な金を手にできるのはどの神か? 解説のパニスです。間違わないでくださいね」


 神々は配信に釘づけだ。

 オッズ表が開示。

 宙に光の板が展開され、

 名前と生存率、追放予測時刻が無機質に並ぶ。


 解説の予測を聞きうなずく者や笑う者。否定する者様々だ。

 そこで、さらに注目の内容が現れ感嘆の息が一斉にハモル。


 オッズ表の端で、クロ―の欄だけが妙に光っていた。

 数字が勝手に踊る。――視線が、そこに偏っている。


「注目の新人。クロ―。事故枠――つまり早期退場前提の扱いですが、穴から準鉄板へと急上昇」

「ここまで至ったのも心が折れず生き残り、打破し追放されるという、我々でも予測できない動きで生き残っています。今後も注視していく素材です」


 歓声が上がる。

 今回穴の時からかけ続けている神が少なくないのだ。

 こいつは面白いと評価はうなぎ上り。


「問題はですね――

彼、やけに“映える”」


「その彼は今や噂の話題のゴールデンスマッシャー。神官を金的一撃で撃破は笑いのるつぼと化したのも記憶に新しいと思います。さて、今日も注視していきたいと思います」


 神々たちは、配信を横目に今日も熱狂のるつぼの中で自身の娯楽を追及していた。


「……面白すぎるのも困りものだ」


 そう呟いた神に、周囲が一斉に睨みを向けた。

 誰も否定はしない。

 だが、誰も同意もしなかった。



◇クロ―召喚の間


「あなたさまをお待ちしておりました」


 恭しくお辞儀をする女神官。

 おいおい、その服ヤベーって。


 地肌が透けるほどの白い神官服は目に毒だ。

 それが周りを取り囲んでいる。


 俺はどこに視線を向ければいいんだー。

 これは罠か?


 すると他にも複数人召喚されていた。


 何か変。

 ここは、召喚された瞬間から感じる。

 違和感とはまた違う。

 

 体が妙に軽い。

 それ以上に、扱いが俺に対しても非常に丁寧だ。

 ある意味ちゃんと対応してくれている。


 これまでに無かった場所だ。


 半分だけ期待したいが、送られてきた場所だ。

 どうせ追放はある。


 ただ、今この雰囲気と感じ方だと条件がわからねぇ。


 すると背後から声がした。


「クロ―……」


 振り向くと、あの女精霊も一緒だ。

 どういうことだ? 監視役か?

 まあ、今のところ害はないからいいだろう。


 なんでそんな申し訳なさそうな目と態度なんだ?

 止めてくれ。マジで。

 俺は俺で、あがく。


 俺の思惑を余所にミレーヌから念話が来た。


『この世界は、“ありがとう”を言わないと追放が早い』


 え?

 何それ。


「じゃあ俺、今日から“ありがとうマシーン”になるわ」


『ふざけないで』

『本当に、死ぬのよ』


「死ぬのは追放されてから考える」


『考える順番が逆!』


 一瞬、言葉が途切れた。


『……いい?』

『感情は要らない』

『条件反射でいいから、言いなさい』

『……言えなかったら、私の処理が困るの』


「処理? お前、俺の担当者かよ」


『ち、違う。監視官。……じゃなくて、観測係よ』


「どっちでもいいけど、係が困るなら言うわ」


『……“係”って言うな!』


「じゃあ“ミレーヌ”で」


『……っ(沈黙)……言いなさい』


「了解。礼儀作法、最優先っと」


『軽い……』


 強制的なお礼はお礼じゃなくて、一瞬の謝罪だろ?

 まあ、感情抜きで条件反射でと思えばいいのか。


 全員がそろったのか、何も鑑定もなく別の場所に案内された。

 この世界の人らは皆、穏やかな顔をしている。


 意外といい世界もあるんじゃねぇかと。

 気持ちも幾分軽い気がした。

 ここって旨いんじゃねぇか? ひょっとして。


 次の部屋に入る際、皆口々に『ありがとう』といいながら中に入っていく。

 だが1名は、不満たらたらの顔と態度で、何も言わず入っていく。

 最後尾の俺は当然お礼を伝えた。


 長いテーブルの席につくと食事がふるまわれた。

 が――

 おかしい。

 1名足りない。

 どこに行った?


 俺が目線を周囲に泳がせていると念話が来た。


『クロ―気を付けて、さっそくさっきの1名追放されたわ。しかも殺されてから』


 なんだって。

 あのお礼一つでかよ。

 しかも殺すって、どんだけなんだ?

 ヤベー。この世界マジで狂ってやがる。


 温厚な顔なんかじゃない。

 そう見える仮面をかぶった獣たちということだな。


 次々とテーブルに作りたての食べ物が運ばれる。

 ここでも運んでくれたお礼を延べ俺はクリアしたと思う。

 静かに、つつがなく、食事を終えた。


 この後も食事のお礼を伝え、個別の部屋に案内される。

 そこでもお礼は欠かさない。

 ほんと、いつ地雷を踏むのかと逆に緊張するな。


 部屋がノックされる。

 薄着の上にガウンを羽織った女性が入ってきた。


 空気が、変わった。


「夜伽にまいりました」


 その言葉を聞いた瞬間、

 喉の奥が、ひくりと動いた。


 ……やめろ。

 今のは、言う必要ない。


 そう思ったのに、

 喉が勝手に震えて、舌が先に動いた。


「ありがとう」


 声が、勝手に出た。


 舌打ちする間もなかった。

 口が、条件反射みたいに動いた。

 まるで――

 世界が、俺に言わせたみたいに。


 女は何も言わず、近づいてくる。


 俺は視線を逸らした。

 考えない。

 感じない。

 ここで“自分”を出したら、たぶん壊れる。


 ――そして、時間が飛んだ。


 終わった後。


「……ありがとうございました」


 声が、空っぽだった。

 まただ。

 今度は、止められなかった。


 用意された言葉。

 用意された礼儀。

 俺の意思じゃない。


 女は、少しだけ目を伏せた。


 何かを言いかけて、やめたようにも見えた。

 それでも何も起きない。


 部屋の空気が、妙に張りつめていた。


 ――次の瞬間だった。


 視界が、歪みかける。


 その刹那――


『……今は、言わなくていい』


 誰の声だ。

 はっきり聞こえたわけじゃない。

 耳じゃない。頭の奥に、引っかかるみたいに。


 言う?

 何を――?


 この部屋に案内をしてくれた女の神官らしき者が入ってきた。


「あなたを夜伽対象から追放します」


 ――次の瞬間、世界がひっくり返る。


 追放。


 ……あ?


 今の、なんだ。


「え? お礼いったのにか?」


「……足りません。“反応”が」


「何の?」


「“ありがとう”の反応です。声じゃない。……中身の問題です」

「議論する余地はありません。ただし、今回命までは取りません」


 そう言って、二人とも立ち去っていく。


 なんだ?

 何が足りないっていうんだ。


 俺は、口を開きかけて――閉じた。


 礼を、言おうとした。

 条件反射みたいに。


 でも、

 なぜか“今じゃない”気がした。


 クロ―は戸惑いながらも、まだ軽い追放で安堵した。


【おめでとうございます。追放ポイントを獲得。1,000ポイントを獲得しました】


 脳裏に勝手に響くこの声は置いておく。


「……今の助言、誰だ」


 それを答える奴は、当然ここにはいなかった。


『安心したまえ』

『今のは“干渉”じゃない。進行上の調整だ』


 ……声は、近くない。

 頭の中でもない。

 空間そのものが、そう言った気がした。


『君は優秀だよ、クロ―』

『演目としても、生存率としてもね』


「……誰だ、お前」


『名乗るほどの者じゃない』

『役割を言うなら――司会だ』


 ……ああ。

 あいつら、俺を“見てやがる”。

 クソ神どもめ。

 光が、強制的に割り込んだ。




 一方、その頃。

 ミレーヌは。


【観測ログ送信】

 対象:クロ―

 事象:世界追放

 精神状態:――


 ……。


 私の指が、止まった。

 本当は、混乱でも恐怖でもない。……“空白”ね。

 ほんの一瞬。

 神界基準では、誤差にもならない時間。


 精神状態:混乱・恐怖。


 送信完了。


 ……あの“進行通知”。


 神の言葉じゃない。

 でも、世界の命令とも違う。


 あれが来ると、

 神々ですら、口を閉じる。


 私は、あれの正体を知らない。

 知ろうとも思わない。


 ――知った瞬間、戻れなくなる。



 胸の奥に、ひりつく感覚が残った。

 やっちゃった……。


 その時、神界の配信番組が私の目をくぎ付けにした。


「ゴッズタイム! 今日もやってきました!」

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