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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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7話

「来た! 来た! 来たー!」


 あの金玉蹴り上げた神官がようやく言う。


「お前に向けられる好意から、追放する!」


 この瞬間。

 おれの脳裏に響いた声がある。


【おめでとうございます! 過去に無い追放でポイント大幅UP! 10,000ポイント獲得しました!】


「よっしゃー! ゲットだぜ!」


 俺は思わずガッツポーズ。

 神官は不思議そうな顔をして去る。


 と思ったら、神官が並んでいた。

 入れ子構造か、お前らは。


「お前に対するすべての同情と善意に対して追放する!」


【おめでとうございます! 二回目の過去に無い追放でポイント大幅UP! 10,000ポイント獲得しました!】


「熱いぜ!」


「お前に対するすべての慈悲から追放する!」

「お前に向けられる愛を追放する!」


「いいね! ラブラブファイヤー!」


 ――笑ってる。

 俺、今……笑ってるよな?


 その時だ。


 笑いながら、喉の奥がひくりと引きつった。

 息が一瞬、抜ける。


 ……あ?


 胸の奥が、妙に軽い。

 いや、軽いんじゃない。

 空洞みたいだ。


 心臓が一拍、遅れた。


 ドクン。


 遅れて、痛みが来る。

 針で突かれたような、短い痛み。

 すぐ消えた。


 なんだ今の。

 疲れか?


 まあいい。

 ポイントが増えてる。

 それでいい。


【おめでとうございます!三回目と四回目の過去に無い追放でポイント大幅UP! それぞれ10,000ポイントの合計20,000ポイント獲得しました!】


「お前狂ってるな。実に素晴らしい。お前を生存から追放する!」


 ピシッ!


 なんだ? 宙にひびがはいっただと?


「グァッ!」


 神官が首を押さえて倒れ込み、吐血して絶命した?

 ――殺したのは俺じゃない。

 世界そのものが、拒絶した。


 なんだ今のは?


「せ、かい、から。つ、い、ほう。す、る」


 最期に振り絞っていた。


 何かが禁忌に引っかかったのか?

 これを気に、追放祭りは終了した。

 ――何人いたかは、もう覚えていない。


 が――


 俺をまばゆい光が覆う。

 これは、もしや。


【おめでとうございます! 世界から追放されました!  10,000ポイント獲得しました】


 またあの場所に戻されるようだ。



◇ ミレーヌ


 私は監視眼球からの映像を眺めていた。

 彼は――


 ……笑ってる。


 あの子、今――

 追放された直後なのに、笑ってる。


 違う。

 喜んでいる。


 おかしい。

 これは、耐えているんじゃない。

 慣れてしまっている。


 本当の所は、慣れじゃなく壊れかけているかもしれない。

 関節的とは言え、たった一人をここまで追い詰めたのも私。


 しかも、

 崇高な使命でも名誉でもない。

 ただの娯楽で単なる賭けでしかない。

 そんな事の為に、私は……。


 爪が食い込むほど手を握りしめていた。


 そんな時、気まぐれなのか。

 勝ち進んでいる神は上機嫌に報告を求めてきた。


 報告欄には、選択肢が並んでいた。


【恐怖による混乱】

【精神耐性の低下】

【娯楽的反応への移行】


 ……全部、事実。

 全部、正確。


 一瞬だけ、思った。


 ――全部、正直に書いてやればいいじゃない。


 観測者なんだから。

 感情なんて、不要。

 事実だけを並べれば、それで――


 指が、止まった。


 ……無理よ。

 それを書いたら、終わる。


「今回の様子は?」


 私は、息を吸う。


「……恐怖と混乱の中で、

必死に生き延びています」


 送信。


 ……。


 胸の奥が、ひりついた。

 神格ポイントが削れる感覚。


 分かってる。

 これは、嘘。


 でも――

 完全な嘘じゃない。


 恐怖はあった。

 混乱もあった。

 “最初は”。


 ……強調が、違うだけ。

 順番を、入れ替えただけ。


「…………」


 一拍遅れて、頭を抱えた。


 ……いや、嘘よね?

 どう考えても。


 私は今、

 神を騙した。



◇白い場所 クロ―


 また白い場所にきた。


 前より、白が濁っている。


 前は何もなかったはずなのに、

 床に薄く、影みたいなものが残っている。


 俺の足元と、少し遅れて動く影。


 ……気のせいか?


 いや、ここは気のせいが一番危ない場所だ。


 数えるのもバカらしく、何度目かはどうでもいい。


 胸がドクンと鳴った。

 でも、怖くはなかった。


 怖くない。

 それが一番おかしい。


 本来なら、震えているはずだ。

 次は何を失うのか、怯えているはずだ。


 なのに――

 胸の奥が、妙に静かだ。

 

 恐怖が消えたわけじゃない。

 たぶん、置き去りにした。


 追放されるたび、

 俺は何かを切り捨ててきた。

 痛み、焦り、期待。


 残っているのは、

 計算と、欲だけだ。


 たとえば――

 さっきの神官の顔。


 金的を蹴り上げたときの、あの歪んだ表情。

 苦痛と怒りと、理解できない恐怖が混ざった目。


 前なら、夢に出たと思う。

 胸がざわついて、後味の悪さが残ったはずだ。


 でも今は――

 思い出そうとしても、輪郭が曖昧だ。


 声も、血の色も、

 どこか遠い出来事みたいに薄れている。


 代わりに浮かぶのは、

 

「次はどうすれば、もっと稼げるか」


 そんな計算だけ。


 おかしい。

 俺は、こんな人間だったか?


 怒るでも、泣くでもなく、

 ただ“効率”で世界を測るなんて。


 ……違う。

 最初から、こうじゃなかった。


 削られているんだ。

 追放のたびに、少しずつ。


 それが痛みだと気づかないくらい、

 ゆっくりと。


 もし、全部削り切ったら――

 その先に残るのは、何だ?


 答えが出る前に、

 白い空間が、また脈打った。



 ……ああ。

 これは、強くなってるんじゃない。


 怪物と闘う者は、

 いつの間にか――同じ目をする。


 ――あれ?


 俺はついに見ちまったのか。深淵を。

 深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。

 哲学者の言葉が脳裏に浮かぶ。


 恐れた俺が覗いた先にいた者は――

 恐怖を喰らいタガの外れた化け者なのかもしれない。

 そして俺自身も……


『また会いましたね。今回は比較的長かったですね。それじゃ行きましょうか』


 俺はこいつにも一泡吹かせたいが、今は我慢だ。

 何も言わず、とも勝手に移動させられる。

 これも毎度のことだ。

 だが、この場所にヒントがあるんじゃないかとも思う。


 また、すぐに光につつまれた。


 今追放ガチャは6回分ひける。

 カードはまだ2枚ある。

 これを駆使し、さらに貯めないとな。

 見てろよクソ神とシステムめ。


 思考の続きは、光が収まった後だ。


 今度はどこだ?

 追放に反逆だ。


 さあ、ポイント稼いで準備を始めるか。


 ――壊れる前に。

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