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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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5話

 私はミレーヌ。観測者――神に仕える監視の精霊。

 今日も観測ログを送信し、神格ポイントの減りを指先で数えている。


 送信ボタンに触れる直前、私は一文字だけ迷った。

 ログの定型文にはこうある。


【対象:クロー/状態:従順/異常:なし】


 嘘だ。

 従順なんかじゃない。

 あの男は、噛みつきながら生きている。


 ……でも、正しく書けば、次の“見世物”が増える。


【状態:従順】を、【状態:不明】に。


 たった一語。たった一回。

 それだけで胸が熱くなるのが嫌だった。


 ――減ってはいない。

 神格ポイントは、まだ。


「……ばれたら、終わりね」


 それでも、送った。

 私は今日、ほんの少しだけ、彼の味方をした。


 ふっと息を吐き、視線は窓の外へ向く。

 クロ―がまた何かをやらかしている気配がするから。


 何なのだろう、あの精神の図太さは。

 苦境に押し潰されても、なお前を向く。

 ――それが、今では嬉しくてたまらない。


 いつからこんな風に思い始めたのかわからない。

 ただ言えるのは、彼が追放されればされるほど神は得をする。

 そして、私も貢献したことで評価される。


 でも――

 やっぱ間違っているわ。


 どうしてもクロ―が不憫でならない。

 けど、うかつには手助けできない。


 助ければ、私も罰を受ける。

 だから私は、声を出さずに呼びかけるしかない。


 本来なら、私は“追放が円滑に行われたか”だけを報告すればいい。

 感情の変化も、苦悩も、判断も――不要。

 必要なのは結果だけ。


 それなのに、私は窓の外を眺めている。

 結果ではなく、クロ―の行動そのものを追っている。


 彼は、自分が傷つくことにはほんとに雑。

 でも、誰かが傷つく瞬間だけ、目の奥が変わるわ。

 そのせいで——彼はいつも余計なことをする。


 おかしいわ。

 私は観測者で、彼は対象。

 それ以上でも、それ以下でもないはずなのに。


 追放は、神にとっては数字。

 でも、彼にとっては“削られていく時間”だ。


 その事実を、私はもう知ってしまった。


 報告を改ざんすれば、神格ポイントが減る。

 それはつまり、私という存在が削られるということ。

 だから、私も追放されない世界に本当は行きたい。


 そうすれば、神ですら干渉ができない。

 世界が直接管理しているという世界。

 本当にどこにあるのかしら。


 クロ―が自分をすり減らして追放を受けているのを見ていると。

 他人事には思えない。

 私も自分をすり減らして報告している感じだし。


 もし彼が壊れたら――

 それは、神の勝ちで終わってしまう。


 こんなのおかしい。

 だから私は、まだ見ている。




 へへ、うまいこと逃げ切ったぜ。

 俺クロ―。

 なんか定着してきたこの名前。

 ほんと、クソ並みクソ太郎って適当に名乗ったのにな。


 今手元にあるカードは弱2枚と弱上1枚。

 ポイントは10,000。


 俺はちゃんとメモしてたんだよな。

 食堂追放で1,000

 ギルド追放で2,000

 外者パーティー追放で3,000。

 人から追放で4,000


 追放ガチャってさ、ぼったくりじゃね?

 1回10,000ポイントだぜ。

 世界追放で1万だからでかいけどな。

 小規模でも追放されないとポイント稼げねぇな。


 あと1回ガチャれるけど。

 温存しておくか。


 アレ? 待てよ。

 俺、このシステムに浸かり始めてねぇか?


 いやじゃー!


 まあいい。

 あとは手元のカードをどう使うか。

 俺の唯一の切り札だ。

 しかも3枚。だから3回だけ。

 

 どうせ、追放は避けられない。

 だったらせめて――

 追放される“タイミング”だけは、俺が決める。


 次は何の追放だ?


 なぜか俺は口角が上がってきた。

 ――怖いのに、このスリルたまんねぇぜ。

 一泡吹かせてやらぁ。


 俺は、破棄された小屋からコッソリ抜け出す。

 暫定隠れ家だ。

 町に逃げ込んでもいいけどな。

 全員敵だと、ちと厄介。


 城内なら、限定的だから躱しやすくなる。

 ほっつき歩いていたら気配がした。


「そこにいたか」


 振り向くとまたあの神官がいた。

 俺を人から追放した奴だ。


 壁づたいに気配を消していた。

 だが、真正面から見ればわかるよな。


「あっ? なんだ? ソーセージでもくれるのか?」


「汝のしぶとさにはある意味尊敬すらある。そこでだ好意から追放

する」


 手をかざした。

 発動する前にヤル!


「こなクソ! 来いッ」

 

《スリップフロア》


 ――頼む。

 一歩でいい。


 神官の足が滑った。

 ただそれだけだ。

 転びもしない。

 殺しもしない。


「何ッ!」


 神官は一歩踏み出した。

 が――

 その足が後方へと宙を舞う。

 前のめりに倒れる寸前。


「今しかねぇ!」


 俺はこの一瞬で突っ込む。


「チックメイト!」


 膝蹴りで金的強打。

 確かに手ごたえあり。


「ギャー!」


 神官は呻き声を上げる。

 その場に崩れ落ちた。


 殺しはしない。

 時間稼ぎだ。



 俺は振り返らない。


 追放は、もうすぐだ。

 でも今回は――

 捕まらなかった。


 背中に、視線を感じていた。

 神官だけじゃない。

 もっと遠くて、もっと重たい何か。


 心臓がうるさい。

 さっきまでの高揚が、少しずつ冷めていく。


 ――怖かったか?


 自分に問いかけて、答えが出ない。

 確かに必死だった。

 でも、恐怖より先に“手順”が浮かんだ。


 滑らせる。

 転ばせる。

 逃げる。


 考えてから動いたんじゃない。

 動くために、考えた。


 ……慣れてきてる。

 それが、一番まずい気がした。


 それでも――

 初めて、俺が主導で逃げ切った。


 卑怯?

 上等だ。


 正々堂々で生きられる世界じゃない。


 俺は内心笑った。

 そこで突然、並走するミレーヌ。

 なんだこいつどこから現れた?


 俺の顔を覗き込んできた。

 でもどこか楽しそうだ。

 なんだ?


「……生き方としては、間違っていない」

「でも、本当にひどい勝ち方ね」


 顔は笑っている。


 それだけ言い残して去っていく。

 なんだありゃ?


 俺は、負けっぱなしじゃねぇんだよ。

 このクソ世界攻略してやるぜ。


 きっとな!


 ああ、腹減ってきた。

 ――生きてるって、そういうことだ。


 ぎゃははは。

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