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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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30話

「あと4つか」


 でもな。

 簡単すぎやしねぇか。

 てっきり、神仕込みのクエストはハードだと思ってたんだが。


 俺の気のせいか?

 何かおかしいな。

 それがわからない……。


 思案しているとログが割り込んできた。


【リクエスト開示:02】

【要求者:投資神】

【内容:敵性存在を「戦闘不能」にせよ】

【条件:殺害禁止】

【制限時間:あり】


 ミレーヌが即、眉をひそめる。


「……時間制限?」

「さっきより厳しい」


 でも何故だ?

 制限される時間が表示されていない。


 エラは軽い。


「じゃあ、殴る暇ないね?」


 また殺害禁止か。

 目の前に厳つい連中が現れた。


「アレか?」


 今度は牛の頭をした人型だ。

 背丈は軽く三メートルは超えている。

 筋骨隆々で鈍足かと思いきや――


「早いッ!」


 まるで違う。

 一気に間合いを詰めた。

 なんだこの速度は。


 こん棒が上段から一気に振り下ろされる。


 ズガーン!


 地面にめり込み砂埃を上げる。

 俺は間一髪、横に避けた。


 今までとは違う。

 明らかに強い。

 しかも、攻撃速度が早過ぎる。

 そんな奴等が複数体も、俺に熱い視線を送ってくる。


 ミレーヌの魔法では間に合わない。


「この数……」

「時間切れになる!」


 俺はカードを見た。

 一瞬だけ考え――


 即、Lv2を選んだ。


 《精神の種 Lv2》


 ……。


「……動かなきゃ」

「でも、動く理由を消せばいい」


 先と同じだ。

 手のひらを奴に向ける。


「やる気、追放!」


 敵が止まる。

 武器を落とした。

 抜け殻のように動かない。


 エラが目を丸くする。


「……わ」

「すご」


 ミレーヌは青ざめる。


「クロ―……」

「それ、使いすぎちゃ――」


 ミレーヌは一度、言葉を飲み込んだ。

 逃げるように目を伏せてから、ゆっくりと続ける。


「……このままでいくと」

「あなたはいつか、“正しい”という“選択”だけで」

「多くを失わせるときが、きっとくるわ」


 一拍。


「でも――」

「それでも私は、あなたのそばにいる」


 ……。


 敵は倒れていない。

 崩れてもいない。

 ただ、立っている。

 

 牛頭の魔獣は、

 さっきまで俺を殺す気だった。

 睨んでいた視線は鋭いはずなのに、

 今は視線が宙を泳いでいた。

 

 呼吸はある。

 筋肉も張っている。

 だが、次の動作が来ない。


 ――命令が、届いていない。

 時間制限。

 敵の数。

 全部、まだそこにある。

 なのに、

 「戦う」という工程だけが、

 ごっそり抜け落ちていた。

 これはヤバイな。


 俺は一歩、近づく。

 反応はない。

 殴れば、簡単に倒せる距離。

 撃てば、確実に仕留められる位置。

 でも、

 もうその必要がない。


 それを理解した瞬間、

 胸の奥が、ひどく静かだった。

 怖くない。


 可哀想とも思わない。

 勝ったという実感すら薄い。

 ただ、

 「処理が終わった」という感覚だけが残る。

 

 ――ああ。

 これか。

 殴り合いじゃねぇ。

 駆け引きでもねぇ。

「戦わせない」という選択。

 

 それは、

 相手に考える余地も、

 抗う余地も、

 後悔する余地すら与えない。

 生きている。

 

 だが、生き方を奪っている。

 ミレーヌの言葉が、

 遅れて胸に落ちてくる。

 ――人を削る選択。

 否定できねぇな。


 でも、間違いだとも言えない。

 だってよぉ、

 今ここで誰も死んでいないぜ。

 

 俺たちは進める。

 時間も守れた。

 条件も満たした。

 

 正しい。

 少なくとも、状況的には。

 俺は目を伏せる。

 

 考えすぎるな。

 これは――

 必要だった。

 必要だったから、選んだ。

 それだけだ。

 

 それなのに、

 胸の奥に、微かな引っかかりが残った。

 さっきまで、

 あの魔獣は“敵”だった。

 倒す理由があった。

 

 危険だから、排除する。

 単純で、分かりやすい。

 でも今は違う。

 

 そこに立っているのは、

 倒す理由のない存在だ。

 敵でも、味方でもない。

 ただ「機能を失った何か」。


 それを見て、

 俺は思った。

 ――ああ。

 これ、

 どこまで使っていいんだ?

 

 基準が、もう無い。

 殺していない。

 条件は守った。

 仲間も守れた。


 なのに、

 「次もこれでいい」と

 自然に思えてしまう。

 それが一番、

 気持ち悪かった。

 

 でも、

 だからといって戻る理由も無かった。

 一度選んだ以上、

 次も同じ答えを出す。

 それが、一番合理的だからだ。

 ……。


【リクエスト02:達成】

【処理時間:想定以下】


 追記ログ。


【評価:高】

 

 ここで初めて評価が付く。

 唐突になんでだ?

 神のお墨付きとでもいいたいのか?


 敵を見上げる。


「……早いな」

「殴るより」

「ずっと」


 一瞬、言葉が止まる。


「……楽だ」


 思わず心の底から声が出た。

 ミレーヌが悲しそうな目をする。

 おい、そんな目すんなよ。


「クロ―」

「それは“戦闘の短縮”じゃない」


「“人を削る選択”よ」


 俺は否定しない。


「分かってる」


 そんなことはわかっている――

 つもりだ。


 こんな時のエラは、無邪気に寄り添う。


「でもさ」

「みんな助かるよ?」

「クロ―が、

ちょっと我慢すれば」


 この言葉がなぜか刺さる。


「我慢、か」

「……違うな」


「これは」

「選択だ」


 最後のログ。

 

【精神の種 Lv2:使用回数 到達】

【次段階:解放条件 接近】


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