3話
「私はあなたを監視し、追放を促進するために来た」
この世界は、俺を“人間じゃない扱い”にして追放する気満々だった。
なんだ、コイツは。
見た目は俺より年下に見える。あの白い空間にいたヤツと同じか?
まあいい。
ブロンドで緑色の目。
背中までかかる髪。
10人いたら20人振り向くほどの美貌。綺麗なものほど、だいたい罠だ。
動きやすそうな衣類を着ている。
そんな女がなんで?
俺が光に包まれる直前に、光の動きを止めてまでして……。
俺に一声かけた奴だ。
わけわからん。
光は俺を再びどこかに落としに行った。
「最後の一人か」
低い男の声が広間に響く。
まただ。
俺は、石でできた部屋の中央で魔法陣が足元にある。
俺以外にいるのは全部で4人。
そのうちの一人に先の女がいた。
周りには召喚されたヤツ。
そのさらに外側に衛兵ぽいのが複数。
その後ろにいかにも魔法使ってそうな奴が取り囲む。
地下室と思えるほど冷え切った場所だ。
呼び出された俺と他の奴は一列に並ばされた。
今度は能力判定があるようだな。
一人ずつ、呼ばれ俺は最後。
「おぉー」
なんだ? 俺を見て感嘆しているのか?
俺ってもしや凄い?
「君は実に残念で素晴らしい」
は? 何言ってるんだ?
「特殊な能力はなし。桁違いの数値もなし。さらに、君だけの特別もなし」
「過去一度もない、すべてなしなんだよ。君は」
「は? はぁ」
「だから余計にね。何かあるんじゃないかと疑ってしまうわけだ。隠された何かをね」
あれ? これは即時追放じゃないってヤツなのか?
追放がないだけで、少しほっとする俺自身に嫌気がさす。
「何が言いたい?」
「召喚には金と魔力がかかる。少なくとも相殺できるくらい稼いでから追放しないとな」
ああ、これ。
稼げばチャンスがあるように見えて、実はそうでもないケースだな。
追放前提に働けと言っている。
勇者でなく外者と呼ばれ、俺たちは謁見の間に連れていかれる。
王からは、どこにでもあるような訓示をもらい。ただ、それだけ。
明日から、学んでいくという。
俺たちは与えられた自室に連れていかれるが俺は違った。
くせぇ。
なんだここ。
「お前はここだ」
マジか。
汲み取り式のトイレだ。
しかもただ、板で下を塞いだだけ。
なかなかの扱いだ。
これで逃げたら犯罪者。
逃げなくても、能力なしで過酷な生活。
どうやら、家畜以下の扱いということがわかった。
翌日。
全員でまずは、ギルドへ登録しに行く。
ここで管理記録がされるという。
正確な魔道具があるという。
それが本日の午前中。
そして午後。
ギルドの担当者が直接城までやって来た。
「お前はギルド追放だ」
「え? 何言ってんだ?」
「お前は盗みを働いた」
「俺は何も盗んじゃいねえー!」
「いや。盗んだ。魔素をな」
「何言ってやがる?」
「お前、肥溜めに寝泊りしているんだろ?
そんな奴がここに来て息をするってことはな。泥棒なんだよ」
「は?」
「だから追放だ。撤回はない」
「おいおい、俺が選んで寝泊りしてたら変態だぜ?」
「ここの連中が勝手に押し込んでいるんだ」
「撤回はしない」
「あっお前、もしかしてマニアなんだろ?」
「だから、俺が寝泊りしているのが“うらやましい”んだろ?」
「断じて違う」
「性癖は人それぞれだ。秘密にしてやるからな?」
「心配すんな。大丈夫だ」
なんだこいつ。
急に頭を抱えだしたな。
「違うー! 俺をそんな目で見るなー!」
厳ついわりに照れ屋なんだな。
走り去るのはいいが、俺は追放されたままだぞ?
まったく、息をするだけで泥棒ってなんの理屈だよ。
ひでぇな。変態の巣窟かよ。
俺が追放されるのはもういい。
でも、こいつらが“そう言わされる役”をやらされてるのが一番キモい。
悪いのは人間じゃない。
人をそう使う“決まり”のほうだ。
生きる罪って哲学じゃねぇんだよ。
歯を磨いて、クソして、寝る。
それだけのことが、ここでは贅沢だった。
俺の選択じゃない。
奴等にとって都合の悪い人間を排除しているだけだ。
クソな世界だぜ。
俺一人だけ、ギルドから追放。
それだけでは済まなかった。
その日は、世界の魔法と常識を座学で学び終わった。
飯はない。食堂からすでに追放。
あるのは、残飯を厨房の裏から分けてもらう。
みじめだ。
でも空いた腹は暴力だ。
俺、負けない。
生き残るだけで、俺はもう抵抗してる。
……とか言って、本当は怖い。
でも怖いって言ったら、ここでは負けになる気がした。
クソが。……今から飯、奪いに行く。
――俺のためじゃねぇ、“俺に押し付けた理不尽”を殴るためだ!
……とか言って、腹減りすぎて手が震えてる。行くぜ。




