22話
「なんとかなったか」
不慣れな戦闘だ。
でもこいつ等となら、連携はできる。
ああ、多分神の連中らはこれを見てるんだろうな。
どう思うか、わからんが。
エラは目をキラキラさせてやがる。
反対にミレーヌは心労が積み重なってるように見える。
ヤベぇな、また俺のせいで心配かけた。
ただ、これで終わりとは到底思えねぇ。
ビス留めも手に入れなきゃならねぇし。
「次行くよー!」
エラは張り切ってるな。
まあ、いい。
すっかり板についた俺の銃身と共にさらに奥へと潜る。
数十分。
歩いた先に出たのは、開けた場所だった。
ここでも嫌な予感がしやがる。
「ぶに~」
「ぶに~!」
なんだ?
奇妙な鳴き声がする。
「なんだコレ?」
「ブニ―だよ? クロ―見たことないの?」
エラが楽しそうだ。
「いや、知らん」
遠目にぴょんぴょん飛び跳ねる奴がいた。
あれはモモンガじゃねぇか。
なんで地上這ってんだ。
俺の腰ぐらいまでの背丈の青色の肌をした鬼がいた。
どうやら追いかけている。
「こりゃダメだろ」
「え? クロ―?」
エラが珍しそうに見る。
「おいっ! おめー!」
青色の鬼とこのブニ―の両方が俺を見た。
一気に踏み込む。
思った以上に間合いが詰まる。
銃身を使い、下からすくいあげ腹を撃つ。
「グハッ!」
こいつは青い血を吐きやがった。
そのまま天井にぶつかり、肉体が木っ端みじんに爆ぜる。
おいおい、俺そんな力入れてねぇぞ。
どうなってやがるんだ?
「ぶにー?」
不思議そうに俺を見る。
「なあ、ここだと危ねぇからあっちにな」
左手で指さし、追い払う。
「ぶにー!」
なんだ? なんだ?
俺の銃身を駆け上り頭のてっぺんを陣取りやがる。
「なあ、お前」
……。
俺、今ヘルメット扱いか?
はぁ。
ため息しかでねぇ。
そんなつもりじゃなかったんだけどな。
「キャッ! かわいぃぃー!」
エラは大喜びだ。
「ほんと、いいところありますねクロ―」
「でも……戦闘中ですからね、クロ―」
ミレーヌは一瞬だけブニ―を見て、すぐ視線を戻した。
いやいや、俺は頭が占拠されているんだが。
「ぶに~」
つまんで手のひらに乗せ、顔を近づける。
「なあ、危ないからさ」
「ぶに~」
どこか満面の笑みだ。
ダメだこりゃ。
また、腕からよじ登り、今度は肩に張り付く。
どうなってんだこれ。
「すっかりなつきましたね」
ミレーヌは慈愛の笑みだ。
「ぶにーは、一度懐くと一生ものだよ?」
「ほんとは、なかなか懐かないけどね」
エラも楽しそうだ。
ひとまず気をつけるしかねぇな。
俺から離れないし。
このまま進む。
ブニ―の体温が、急に冷えた。
空気が、どこか観客席みたいにざわついている気がした。
「なあ、エラ。なんか散漫じゃねぇか」
「やっぱりそう思う? ここはねイベント空間だよきっと」
言われてみれば、音がやけに反響している。
ということは、また何かおかしなのが現れるってか。
――そのときだった。
地面が、鳴った。
ドン、ではない。
ズズ……と、内側から擦れるような音だ。
「……来る」
俺が言い切るより早く、
壁が、割れた。
いや、割れたんじゃない。
“開いた”。
中から、魔獣が這い出してくる。
一体じゃない。
二体でもない。
「……多くない?」
ミレーヌの声が低くなる。
倒しても、終わらない。
奥から、また出てくる。
【警告:敵性存在数/想定値超過】
ログが、一行だけ浮かんだ。
エラが笑う。
「ね、クロ―」
「これ、神の“見せ場”だよ」
……視聴者サービスが過ぎるだろ、クソが。
俺は、銃身を構え直した。
――殴るしかねぇな。
「やるっきゃねーんだよ!」
俺は銃身を抱えて駆けた。
「わっ! クロ―が切れた!」
エラは楽しそうに言った。
手の届く範囲にいた所で横に分回す。
グシャッ! ドチャッ! ドチャッ!
質量兵器だ。
俺の体感などまるで比較にならない質量。
触れた瞬間に押しつぶされる。
振りかぶり地面に叩きつける。
割れるどころか、埋まる。
「横だな」
回転しながら、銃身を当て続ける。
つぶれる者や吹き飛ぶ物。
どちらもミンチになる。
小型の奴が終わると、デカブツが現れてきた。
俺の数倍以上の背丈だ。
巨大なイノシシと言えばいいのか。
的だといわんばかりに突進してくる。
「行くぜ!」
俺は接近し、鼻の頭に接近。
コイツを全力で当てる。
「インパクト!」
グシャッ!
突き抜けちまった。
そのまま脳天に到達したのか?
俺は血みどろで腕を引き抜く。
まだ他にも沸いてきやがる。
「エラー!」
「何ぃー!」
「俺はコマになるぜー!」
「えー!?」
銃身を回しながら体を軸に回転。
デカブツ達を打ちのめす。
鶏の頭に筋骨隆々な人型。
前にも見たタイプだ。
数は多いが、動きは雑だ。
「邪魔するヤツはお仕置きよ!」
エラがひっかきまわしているおかげなのか、完全にばらけた。
俺の周りにはいなくなったぞ。
ミレーヌも問題ない。
「にょー」
「にょにょ!」
鶏頭のヤツらは奇妙な鳴き声で散り散りだ。
まいったな。
逃げるのを追うのは、得意じゃねぇんだよな。
「エラ、戻れ!」
「ん? はーい」
「助かったぜ、宝物庫はもうすぐか?」
「うん、ほらあそこ、扉あるでしょ?」
「扉?」
どう見ても壁にしか見えないが。
あれがそうなのか?
俺たちは壁の前に来たが、まだ分からん。
「クロ―、見てここ」
「窪みか?」
「そそ、この円形の輪をはめると開くんだけど、今はないわ」
「まさか、どこかの魔獣が持っているのを奪うとかか?」
「あったりー!」
「……壊すか?」
「え? まあ、でもクロ―のその腕ならできるかも?」
「そんじゃ全力で突き刺す」
俺は思いっきり、銃身を突き刺した。
ドッガーン!
ま、マジで?
貫通しやがった。
だが開かん。
扉そのものじゃねぇ。“開閉の仕組み”が生きてやがる。
俺はでたらめに人が通れるぐらいまで続けた。
「まあ、こんなもんだろ?」
人二人は並んで通れるぐらいを貫通させた。
「クロ―最高!」
エラはご機嫌だ。
さて、この先に何があるやら。
俺たちは崩れた扉の先に踏み出した。




