21話
「エイッ!」
ドカッ!
エラは黒い扉を蹴り飛ばした。
重厚な扉はゆっくりと開く。
裕に背丈5メートルはくだらねぇ。
エラは武器を取り出す。
モーニングスターだ。
どう見ても凶悪な銀色だ。
「あたし、がんばっちゃう! アハッ♡」
「ほどほどに、な?」
「うん♡」
なんだ? 俺。毎回このくだり繰り返してねぇか?
まあ、いいだろう。
扉の内側は妙に生暖かい。
生きているわけじゃねぇよな?
足元は石畳。
壁面は普通むき出しの岩肌。
壁自体が全体薄っすら発光してやがる。
奥に向かって、風が微量に流れているのも気になる。
まぁ何にせよ俺初めて。
「あれ? クロ―大丈夫?」
「ああ、俺超初心者な?」
「うん。あたしがいるから大丈夫♡」
「そうか」
んでコイツ迷いもなくグイグイ進んでいくんだが。
大丈夫か?
ん?
何か飛来してきた。
思わず銃身を持ち上げて振り下げた。
ペチッ!
ガツッ!
何かに当たり、銃身で地面を砕いた。
何かつぶれた音だ。
感触はわからん。
「クロ―? 何かいた?」
「ああ、なんか飛んできた……おっ?」
視界にログが現れた。
【追放判定:成立】
【対象:ダンジョン魔獣】
【追放ポイント:+10】
「とった!」
「え? どうしたの?」
「追放ポイントがな、とれやがった」
あれ? でも今までのアナウンスとは違うな。
業務的というか。
今度は壁面が臓器のようなぬめりを帯びる。
「おかしいな」
「クロ―どうしたの?」
ミレーヌは心配そうだ。
「いやな、この壁さっき岩だったろ?」
「ええ。それが?」
「見ろよ、なんか生っぽくねぇか?」
「あっ、これ内臓みたいね」
動きがある。
表面面が波打つ。
盛り上がってくる。
その内側から何かを突き破ろうと……
「クロ―下がって!」
エラがすっ飛んでくる。
いきなり、生壁をモーニングスターで殴りやがった。
グチャッ!
何度も叩く。
グシャッ! ドチャッ!
グシッ!
生壁が血みどろで割ける。
現れたのは、何かだった。
口が大きく開いているのはわかる。
後は、肉をハンマーで打ち砕いたくず肉だ。
「これ、たまにおかしなのが出てくるから」
「出る前にたたく。これ基本ね」
「見過ごしたらどうなる?」
「そこから割と多く沸き出るわ」
なるほどな。
割と周りに気を遣う必要がありそうだ。
やはり他人が倒した物は、ポイントが入らない。
まあそこは、気にしてもしゃーねーだろう。
なんだ。
凄い疲れるぞ。
再びエラの後を追う。
こいつは一体どこに連れていこうというんだ。
宝物倉庫がわかるのか。
ビス留めは商人の必須アイテムと言ってたな。
ベヌテラが持っているなら、こいつもそうか。
曲がりくねった道の奥。
人ほどの太さを持つ支柱が林立する広間に入る。
支柱の隙間から現れる人影。
知性のある目。
深緑の葉の色を持つ肌。
手には日本刀のような物を持つ。
胡乱な目を俺だけに向けた。
ドンッ!
砂埃が奴の足元で一瞬舞い上がる。
消えた?
イヤ違う。
早さだ。
ガキィーン!
気が付くと銃身を盾にして一太刀を防いだ。
上段からの踏み込み。
見えない。
達人かよ。
一瞬にして後退。
間合いの取り方が半端ない。
なんだよあれは。
ミレーヌは何かを準備している。
エラは目の前に集中している。
さあ、どう出る。
俺は刺突の姿勢で構えた。
というより、なぜ俺を。
疑問が過る。
ドンッ!
来た!
「ガァッ!」
人型は唸る。
ヤツの足は瞬時に氷漬けになり地面と一体化。
その次にエラが真横から飛び出す。
トゲトゲの球体を脳天に叩きつける。
グシュッ!
血しぶきが舞い上がる。
「クロ―とどめを!」
エラが叫ぶ。
俺は全力で銃身で胴体を突く。
いや、そのつもりだった。
ゴキッ!
膝から上がちぎれ奥にすっとんでいく。
アレ?
俺そんな力入れてねぇぞ?
【追放判定:成立】
【対象:ダンジョン魔獣】
【追放ポイント:+100】
【累計獲得ポイント:+110】
なんだ?
今度は100かよ。
おかしいな。腕がまだ殴り足りない感覚だ。
収まりがつかねぇから、そのまま銃身の先端を地面に叩きつけた。
ドンッ!
地面全体が揺れた。
縦揺れの地震かと思ったぞ。
殴った“先”じゃない。
今度は床全体が沈み、壁が鳴った。
「……おいなんだ?」
エラが振り返る。
「今の、何? 当たり?」
「いや……ダンジョンごと反応してる」
ミレーヌは近づき、何もない空間を指す。
「……クロ―」
ミレーヌの声が低くなる。
「このダンジョン、空間が“区切られている”」
「区切り?」
「ええ。世界そのものじゃない。
通路よ。繋ぐための」
「今の振動で少しズレが見えた」
これを聞いたエラはしたり顔で言う。
「ねぇクロ―」
「殴って壊せる場所ってさ」
「――だいたい、入口だよ」
「ああ」
俺は返事はしたものの何か頭の片隅でひらめく。
そのひらめきを後押しするようにミレーヌは言った。
「入口は、隠されているんじゃない」
「見ないように、されているだけ」
エラが補足する。
「じゃあさ」
「“殴れば開く”んじゃなくて」
「開いてる所を、壊すんじゃない?」
待てよ。
それなら、神の世界への入り口が俺でも……。
今度は俺たちが――
“侵攻する”出番がくるかもしれねぇな。




