20話
「アイテムは――ダンジョン内に出現する宝物庫にございます」
うわっ、嫌な予感しかねぇ。
「なぁそれって」
「はい。勇者も侵攻していますし、魔獣もでます」
エラはにゅっと顔だして言う。
「あ、あそこね」
「神の管理、濃いよ」
「ということは、神の管理領域って奴か」
「逃げられないわね」
ミレーヌはこめかみから汗の雫をたらす。
「なあ、場所はどこなんだ?」
「この世界にはないよ。あるとも言うけど」
「なんだそれ?」
「世界の狭間にあるの――」
「もちろん入り口は、この世界にあるよ」
なんだ?
今最初、何か言いかけてなかったか?
「それにしても勇者か……見たことねぇな」
「クロ―と同じ、黒目黒髪よ」
「つまり同郷の可能性が高いって奴か」
「なあ、勇者って異世界召喚か?」
「う~ん。近いけどちょっと違うわ」
「どう違うんだ?」
「投網よ」
「網?」
「そう。その辺りはミレーヌが詳しいんじゃない?」
「はい。これなら抵触せずにはなせます。
魔法の網で、ある特性の者だけかかります」
「ある特性?」
「その時々で神が条件づけします」
「なんだよ魚かよ」
「言いえて妙ですね。そのとおりです」
そこで何故、エラはニヤつくんだ?
「魚を取って、いけすに入れて飼っているのと同じね」
なるほどな。
そういうことか、わかりやすいな。
「強烈だな」
「ね、強烈でしょ?」
やっぱこの鉄の腕をぶんまわすっきゃねぇーよな。
重いし固い。
俺が感じる重さと実際の重量は違うな。
破壊の度合からかなり違う。
まあ撃てないなら、この腕なりにやるしかねぇ。
ああ、そういやエラもミレーヌも乱戦イケルのか?
後で立ち位置を聞いてみっか。
エラの奴、前衛やりだすといわねぇよな?
◇神TV
そのころ神界では。
神々は計測できないことに騒ぐ。
苛立ちで湯気上がり、口を尖らせた。
「どうなっているんだ?」
一柱は吐き捨てる。
「どうにかなっているし、どうにもなっていない」
もう一柱は、データはおかしいが実害はないという。
「なにを言っているんだ?」
能天気な一柱は、ニヤケながら場を混ぜ返す。
「まだどうにもならない」
再びデータを見ていた一柱は冷静に返す。
議題は目下、クロ―のログだ。
【感情ノイズ:未分類】
【発生源:不明】
【理由:説明不能】
神々は大きく割れていた。
「不確定で制御不能、これこそオッズが未知数じゃないか」
「危険ってやつは、何がトリガーになるかわからん。あの時見たいに」
「始末して輪廻の輪に乗せるのはどうなんだ?」
そこにある者が現れた瞬間、静まり返った。
隣のヤツの心音が聞こえるほどだ。
「司会……」
誰かがポツリといった。
「いけませんね、勝手に決めるのは」
また誰かが喉を鳴らす。
「誤って操作した者を消してしまうところでしたよ」
「盛り上げつつ、制御不能の芽は摘む」
「それでいいのではありませんか?」
誰も何も言えない。
この司会の気分で最悪が起きるからだ。
「刺客を直接投げるのは早いですね」
「まずはダンジョンに入ってもらいましょう。そこからです」
「皆さん、その方が盛り上がるでしょう?」
誰も否定はしなかった。
◇クロ―
「そんでどこにあるんだ? そのダンジョン」
俺はエラに聞いてみた。
なんだかんだ言ってこいつ詳しすぎるんだよな。
本当に商人ってだけなのか?
「うん、不定期なんだけど、入り口は決まっているの」
「一番近いのは、夕焼けの影が交差する場所よ」
「それって、どこでもおきるんじゃねぇか?」
「それがね入り口は明確に見えるわ」
「おどろおどろしい黒い門よ。出るのはいつでもだけど入るのはその門限定ね」
「そんで現れない時もあるから不定期と?」
「そうよ。ただ見つけた人や知っている人はこぞっていくわ」
「そんなにうまいのか?」
「中で得られるものはすべて貴重よ鉱石もね。入るだけで体調が変わる人もいるわ」
「おいおい、至れり尽くせりだな」
「でもね、生き続けるのが過酷な環境よ」
「魔獣か」
「ええ……そうね」
ん? 歯切れ悪りぃな。
「人か?」
「そう。魔獣より怖いかも」
「まあ、無法地帯ってヤツだろうな」
「死体すら残らないわ。使われるの。魔獣の餌とかおとりとか」
「ある意味、循環経済だな」
「へ?」
「資源を捨てずに循環させ続けるってヤツだ」
「マジで? クロ―知的すぎるよ」
「ミレーヌ、魔法は何が使えるんだ?」
「私は氷系が得意よ。本職にはかなわいなけど治癒と解毒もいけるわ」
「すげー天才がいた」
エラがニコニコしながら俺に顔寄せる。
何だ、小動物か? お前は。
しゃーねーな。聞いてやるか。
「でんで、エラは?」
「あたしねぇー。これで殴るのが得意なんだ」
げっ。
こいつ見た目によらず凶悪すぎんだろ。
なんだよそのトゲトゲしい球体と柄は。
「お前、物理でなぐるタイプか?」
「う~ん。身体能力がめちゃ高くなる奴あってそれね」
「ああ~、前衛ってやつだな」
「「クロ―は?」」
「おいおいお前ら二人でハモルなよ?」
「みりゃわかんだろ、腕だよ腕」
「あ、それ。私の身体能力MAXでも持ち上がらないって以上だよ?」
「そっか? 俺にはちょっと重い感じなんだよな」
まあ頑丈だからいいけどな。
さびないし。
「あっ!」
「どうした?」
「この近辺で夕焼けの影が交差する場所があるよ。ちょっといこ?」
「ああ。ミレーヌも行こうぜ」
「ええ。エラ、飲食は現地調達かしら?」
「基本そうだよ。でもあたしの蓄えあるから、いざという時は安心して」
俺たちは小屋を出て向かう。
半壊している城なもんだから、どこからでも出られる。
「おいおい、いきなりかよ」
「でしょ? 気が付かなった?」
「あっ、見える人と見えない人がいるんだよね」
「アレは、地獄門ね」
「あっその名前、久しぶりに聞いた。アハッ♡」
「そんじゃいくか」
「うんうん! いこ―!」
俺たちは黒くおどろおどろしい門へ向かった。
どう見てもおかしい。
扉には太い血管が脈打ち、叫び声をあげる人の顔が浮き上がる。
門の柱の上には得体の知れない羽をもつ者が上から見下ろす。
これ本当に開けていいんか?
俺が悩むのが馬鹿らしいほど、エラは扉を蹴り飛ばし開けた。
なんだ奥から視線を感じる。
俺は嫌な予感しかしなかった。




