19話
「なあ、ミレーヌ」
「なあに?」
どうしても気になる事があった。
「今回表示でねぇのはなんだと思う?」
襲撃イベントだよな?
俺だけ見えねぇのか。いや違うな。
表示の忘れであるといいが。
「私も確認できないわ」
「エラお前は何か感じるか?」
「うん! クロ―が私をずっと見てること知ってる」
「は?」
瓦礫に足を載せると正面にスカートの奥が見え隠れする。
ヤベッ。
俺は即、目をそらしたが。
「ダメ!」
「え?」
「ちゃんと見て。見せているんだから!」
「はあ? お前何言っちゃってんの?」
……何を試してるんだ、こいつ。
「はあ、ほどほどにな」
「うん♡」
……それにしても、おかしい。
敵が来ない。
イベントも、表示も。
なんだこいつは。
それにしてもおかしい。
散漫な攻撃しかこねぇ。
マイナス10万ポイントどうすんだよ。
稼がないと、多分腕がもどらねぇ。
ガチャも引けねぇ。
……つまり、詰みかけてる。
ん~。
しまいには、敵もこねぇぞ。
どうなってんだ?
【おめでとうございます! 討伐イベントが完了しました。
今回は規定値の出現がされないため、ポイントの獲得はありません】
「おいおい、マジかよ」
「ね、神ってほんと信用ならないわー」
ドドドド!
砂埃を上げて何かが迫ってくる。
なんだ、何がおきる?
ん? 見覚えあるな。
「エラ!」
空中を泳ぐようにして飛んでくるおっさん。
「パパ?」
すっと回避し、商人は壁に激突。
崩れ落ちる商人。
だが、何事もなかったかのように立ち上がる。
おいおい、大丈夫なのかよ?
「これはこれは、クロ―様。お恥ずかしいところをお見せいたしました」
「クロ―が救ってくれたんだよ?」
いや……。
俺は絡まった鎖を切っただけだぞ?
助けたつもりなんて、これっぽっちもねぇ。
「なんと! そうですか。
クロ―様、あなた様が娘を……」
「なんとお礼を申し上げればよいか。恩に着ます」
「だってさ。パパは何もしてくなかったし。
他に、誰も何もしてくれなかったし。
来たのはクロ―だけだし」
「助けてくれたのは一人で来たクロ―だけ。
だからね。クロ―はあたしがもらうの。
誰にも渡さないんだから」
だからから続く文脈が俺には理解できん。
助けては無いが仮に助けたとして、なんでお前が俺を?
商人は、丸眼鏡の位置を直しながら目が光る。
「ほほう。エラにそこまで言わせるとは、なかなか見どころある青年ですね」
「なあ、ベヌテラ。俺は今カード1枚もねぇぞ?」
「何をおっしゃいますか。あなた様自身がもっとも価値ある存在。唯一無二でございます」
「おいおい気持ち悪いな。俺は人身売買なんぞしないぜ」
「いえいえ、滅相もございません。カードがない=交渉材料がないといいことではございません」
「今のクロ―様は、それ以上の“担保”を持っておられます」
もみ手でにこやかに俺にいう。
胡散臭ぇんだよな。
エラが顔を突っ込んできた。
こいつどこにでも突っ込んでくるな。
「あたしのパパね、
今のクロ―、一番好きな状態だと思う」
「神は“制御できる異常”しか買わないし、
商人は“制御不能の兆し”を買うの」
両手を腰にあて、鼻高々な様子。
なんだ? そこえばるところか?
「当然よね? ポイントもカードも神の価値基準もぜ~んぶ信用ならないわ。あたしはね」
「パパは少し違うけど」
「いやいや、わが娘ながら、なかなか良い目をしている」
「身内びいきと言えるかもしれません」
うわっ! 急にその目で俺を見るな。
「そこでです」
「なんだ?」
「次に手に入るカードの優先権でビス止め“情報のみ”の交換はいかがでしょうか?」
「なんだそれ?」
「クロ―様が訪れた場所にビス止めが可能です。もちろん上書きもできる優れものです」
「めちゃくちゃ便利じゃねぇか」
「ええ、それはすごくすごくそうですね。ただし、情報だけです。現物はクロ―様自身でお探しください」
「なんだよそれ。実在しないって話はねぇよな?」
「それはございません。私自身が利用しているからでございます。これは商人必須のアイテムでもございますゆえ」
「たしかにそれがあればあの白い空間も止められるだろうな」
「ええ。留められない例外の場所は一つもございません」
「わかったよ。その話乗った」
「クロ―いいの?」
ミレーヌが心配そうだ。
まあ、普通に考えたらそうだよな。
でもな、あの空間に自由に行き来できるなら、次がある。
神の世界に殴り込みに行く機会がな。
「そんで、その情報とやらをもらおうか?」
「もちろんでございますとも。それでは、契約書にサインを」
空中から突然二枚の紙を取り出す。
二枚とも俺にわたすと、すでに書かれたあった。
“次に手に入るカード1枚を今回の情報の対価とする”と。
すでにベヌテラのサインがされていた。
「これはどうやってサインするんだ?」
「これは失礼しました。指で書いて書いていただく事が可能でございます」
「そっか」
サインをし渡す。
すると1枚を俺に手渡す。
控えということのようだ。
「契約成立ですね。ありがとうございます」
「それでは、アイテムは――」
俺とミレーヌは聞き漏らさないように耳を傾けていた。
◇神世界
ちょうどその頃、神界では。
「これはつまらぬ。あまりにもだ」
「多少ポイントを稼がせるイベントがいいのでは?」
「難易度を上げるか」
「それってアレか汚物爆弾対策済みか?」
「色仕掛けはどうだ?」
「いやいや、それではちょっとな」
「勇者たちが行くあの場所に放り込むのはどうだ?」
神々で不穏な議論が始まる。




