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追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~  作者: 雪ノ瞬キ


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18話

「アルフォンスってあの丸眼鏡の商人とつながりあるんか?」


 俺は戻って早々、そもそも誰なのか話をしていた。

 倉庫小屋のテーブルで俺とミレーヌとこの少女と3人だ。

 俺は右腕を机の下に隠したまま、椅子に浅く腰かけていた。


「え? 知っているの?」


「ああ、汚物爆弾の試供品をもらった。

いつでも飛んでくると言ってたが」


「うん。パパだよ」


「え? マジで?」


 まさかあの慇懃無礼な奴に娘がいたとはな。

 まあ、帰るところがあるならよかったというべきか。


「だからぁ、これで解決」


「ああ、そうだな」


 とりあえずだ。

 あのおかしな場所から出たしな。


「ね。名前教えてよ。あたしエレオノーラ・アルフォンス。エラって呼ばれるわ」


「そっかエラよろしくな。俺はクロ―」


「私はミレーヌよ」


「ねぇ、二人って恋人か夫婦? それとも体だけ?」


「ぶっ!」


 ミレーヌが噴き出しやがった。

 おいおい、挙動がおかしすぎんだろ。


「いんや。ミレーヌは俺の監視係」


 ミレーヌは何も言わなかったが、視線だけが一瞬こちらに向いた。

 評価する目だ。


「へぇーなら、さ。クロ―もらっちゃうね」


 言いながら、エレオノーラは俺の椅子の背に手をかけ、自然に距離を詰めてきた。

 逃げ場がない。


「は? 何言ってんだ。俺あげないぞ?」


「へへ、クロ―かわいい」


「いや、ん? そうなのか? 違うだろ?」


「だってさ、私の事好き好きじゃん?」


「そうなのか?」


「うん、絶対好き好きだよー」


「そっか。そんでどうすんだ?」


「どうって?」


「おやじさん」


「ああ、大丈夫。娘助けに来ないバカおやじは知らない」


「まあ、そこんところは好きにするといいさ」


「うん、好きにしちゃうんだ。クロ―ずっと一緒だよ? アハッ♡」


「俺体不自由だぞ? 右腕こんなだし」


 俺は無意識に、机の縁に銃身をぶつけないよう体をずらした。


「大丈夫。あたし好きだもん。だからなんでもできる」


「手伝ってくれるなら、まあいいが」


「え?いいの?」


「俺は毎回追放されるぞ?」


「大丈夫。クロ―マーキングしたから、どこにでも追える」


 なんだ。

 壊したのは鎖だけのはずなんだが。


「まぁ、ほどほどにな」

 

「あたし、救われたんだよね。

じゃあ、あたしの命はクロ―のものだよ」

 

 笑って言っているのに、冗談に聞こえなかった。

 

「クロ―の敵はあたしの敵。

クロ―の物はあたしの物。

あたしの物はあたしの物。

これぜ、ぜ~んぶ解決! アハッ♡」

 

 そう言い切る目に、迷いはなかった。


 ドン……ドン……

 倉庫の外で物音がする。

 地面が揺れる。


「……来たな」


 ミレーヌが即座に反応する。


「討伐イベント。小型だけど数が多いわ」


 俺は立ち上がろうとして、右腕を見て舌打ちした。


「殴るしかねぇか」


 その横で、エレオノーラがあくび混じりに言う。


「あ、そっち行くと踏み抜くよ」


「……は?」


「床、薄いから。三歩右」


 俺が半信半疑で動いた直後、

 さっきまで立っていた場所の床が崩れた。


「……おい」


「ね? 言ったでしょ」


 敵が突っ込んでくる。


「今! 腰ひねって!」


 俺は反射で殴った。

 当たった。


「……当たったな」


「うん。角度よかった」


 彼女は攻撃していない。説明もしていない。

 でも結果だけが出る。

 一息ついたところで、俺が言う。


「……お前、なんで分かるんだ?」


 エレオノーラは首をかしげる。


「んー? だって、ここ交易ログ薄いもん」


「神の監視、雑だから」


 ミレーヌが反応する。


「……その話、どこで?」


「市場」


「……市場?」


「神の世界のじゃないよ。人の」


 俺は内心で引っかかる。

 市場で、神の話?

 ミレーヌが低い声で言う。


「これ以上は、神に見られる」


 一瞬、空気が張る。

 その空気を、エレオノーラがあっさり切る。


「あー、今は来ないよ」


「……なぜそう言い切れる?」


「コスパ悪いから」


「……は?」


「見ても盛り上がらないし、賭け動かないし」


「今は別の卓が熱いはず」


 ミレーヌが言葉を失う。

 俺は、別の意味で黙る。

 こいつ、

 神を「見てる側」じゃない。

 勘定してる側だ。


 ミレーヌは、エレオノーラを見ていた。

 

 ……いや。

 見ている、違うな――測っているのか。


 警戒ってわけじゃない。

 敵意でも、拒絶でもねぇ。


 なのに、妙な距離感覚なんだよな。


「――計測?」


 ぽつり。

 ミレーヌらしくねぇな。

 何か別の物事が見えないところで動く感覚か?


 エレオノーラは、神を怖がっていない。

 まあ、それは俺も同じだ。


 反抗でも無知なわけでもなさそうだ。


 ただ――

 最初から、無いというかカウントしてねぇという感じだな。


 そういや、あの薄暗い場所で見た時も出た時もそうだ。

 救われた側の顔じゃない。

 神に縋る人間の態度でもない。


 ミレーヌの視線が、一瞬だけ俺に向いた。


 ……ああ。

 これ、俺か。


 エレオノーラは、単に――

 理由もなく、俺の方を選んだ。

 それだけの話なんだろう。


 別に助けちゃいねぇのにな。

 なんでだ? わけわからん。

 俺、金ももっていねぇし。

 すぐ、追放されるし。

 腕こんなだし。


 ああ、やっぱわかんねぇな。

 女ってヤツは。

 ん? ミレーヌもか?

 まあ、いっか。



◇神世界


 オッズ盤が、わずかに歪んだ。


「……ん?」


 一柱が指を止める。

 数字は合っている。

 処理も正常。

 イベント進行にも問題はない。


 なのに――

 跳ね方が、感情的だ。


「ログを再取得しろ」


 監視魔眼に表示されたログが流れる。

 追放、接触、解放、転移。

 どれも想定内。


 だが、その隙間に――

 見慣れない項目が混じっていた。


【感情ノイズ:未分類】

【発生源:不明】

【理由:説明不能】


「……感情?」


 誰かが鼻で笑った。


「誤差だろ。人間は感情で動く」


 だが、別の一柱は黙ったまま、

 その行を何度も拡大していた。


「違う」


 それは恐怖でも、希望でも、欲望でもない。

 賭けに影響するはずのない、無価値な感情。


 ――なのに、オッズを押している。


「誰の感情だ?」


 問いに、答えは返らなかった。


 オッズ盤が、もう一度だけ、微かに跳ねた。

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