14話
「あれ? 神って今日、休みか?」
討伐イベントが終わったはずなのに、
神のアナウンスが来ない。
追放カウントが動かない。
ミレーヌが「静かすぎる」と違和感。
「……“見られていない”わけじゃない」
「“見られなくなっている”だけ」
これってもしや。
「なあ、ひょっとして……俺たち骨折り損のくたびれ儲け?」
「くたびれが大儲けしたのは間違いないわね」
「マジかー! せめて数千ポイントよこしやがれー! クソがー!」
空に向けて叫ぶ。
「ほら、おバカなこと言ってないで行きましょ」
追放されない。
それだけで、背中が寒い。
遠目にガラス細工がやってくる。
「なんだありゃ?」
見た目はガラスでできた人型。
人形というにはデカすぎて3メートルはくだらない。
歩いているというよりは浮いている。
そのまま吊り下げられた状態で、滑るようにして。
「クロ―、下がって!」
ミレーヌが俺の前に陣取る。
なんだ? なんだってんだ?
「神じゃない。天使でも精霊でもない」
「アレは……」
どう見も顔の位置に各パーツがない。
あれじゃ喜怒哀楽なんぞ到底不可能だな。
動きも奇妙だ。
何も無い空中を見上げ、何も無い場所を手で触れる。
当然声も発しなければ、音もさせない。
まあ、服も装飾品も器具も無いのだから音がするはずもない。
「あいつ、俺たち見に来たんじゃねぇのか?」
「違うわ。結果だけを拾いに来てる」
ただミレーヌが露骨だ。
ここまで警戒する素振りを見せたのは初めてだ。
しかも俺を庇う位置取りだし。
ミレーヌが本気で恐れる存在?
上司なのか?
「ん? 何うろたえているんだあの人形」
確かあの位置は、汚物爆弾の爆発元に近い。
どちらかというと酔っ払いかと思う千鳥足。
手足も突然ふらつき、安定しない。
意味がわからん。
「あれは、ログを持ち帰れない感じね」
「ログ?」
「ええ、これまでおきた事の記録が見えない場所に点在しているわ」
「ってことは、どこかに見えない観測機なる魔道具があるってわけか」
「近いわね」
なるほどな。
わけわからん事が起きたからまずはログ見るって腹か。
だとすると、認識疎外するにはちょうどいいんじゃねぇか。
いやがらせに最高なアイテムかもしんねぇな。
俺は黒い笑みを浮かべてニヤついた。
「ねぇ、あなた。凄く悪い顔していわ」
「そうか?」
「ええ、すごく悪党よ?」
「んじゃ俺、今日から悪党MANな」
「はいはい」
「あー適当にスル―しやがったな!」
◇神世界
「異物がログに混入した!」
「観測不能期間が発生している!」
今にもこのゲームを中止したそうに煽る一柱。
また、別の一柱は心底楽しそうにニヤつく。
「最高だ」
「ここまで壊れるとは思わなかった」
どちらとも与せず達観した視線で数字を眺める一柱は口を開く。
「……オッズが跳ねたな」
この3柱以外にも喧騒が響く。
そこはまさに場末の賭博場。
神というよりは、博打に生を見出したイカレタおっさんの井戸端会議。
酒瓶はころがり、吐しゃ物は床にまきちり、ラッパ飲みで煽るように飲む神もいる。
「甘い酒もいいな。女は?」
「俺たち神に抱かれたがっているヤツの行列はまだ減らないな」
「お前ら、いい加減にしろ。威厳という物をだな」
「そんな事いいながら、何オッ立てているんだおめー?」
「なんだろやんのか?」
神々は喧嘩をおっぱじめた。
◇クロ―
ミレーヌが俺唐突に告げる。
「今から三日間」
「“直接の観測”は来ない」
つまり神から見えないし聞こえないって事か。
ってことは秘密暴露三昧じゃねぇのか?
「なあそれでも話せるのは限界があんだろ?」
「ええ、そうね」
眉間に皺をよせ、困った顔付きをしていた。
おいおい深刻すぎんだろそれは。
「なあ、少しは気抜いたらどうだ?」
「何いってんの」
「息抜きで変顔しようぜ?」
「はぁ? バカじゃないの?」
「なっ? 気が抜けたろ」
「あっ……そうね。ありがと」
「礼なんていらねぇよ。代わりに見せてくれりゃ」
「もう、ほんとおバカね」
互いに見合わせて、思わずわらっちまった。
せっかく気が抜けたと思ったらまただ。
なんだか意を決したような表情にまた変わりやがった。
ミレーヌは淡々と話した。
「追放は世界の意思じゃない」
「管理外の隙間が存在する」
「カードは“用意された答え”じゃない」
「あなたが思っている以上に、全部が神の管理じゃないの」
「おいおい、唐突だな」
あえてこうでしか言えないのも制限があるってやつか。
あんま無理させたくねぇな。
ミレーヌが付け加える。
「でも……」
「汚物爆弾を使った痕跡は消えない」
「多分、今後のイベントが“対策型”になるわ」
「……じゃあよ。
俺が足掻いたの、無駄じゃなかったってことか」
最後に商人が出てくる。
軽い調子で俺たちに話かけてきた。
「次は、転移の“固定”が必要でしょう?」
「……ろくな次回予告じゃねぇな」




