プロローグ
私の作品を開いてくださりありがとうございます。
拙い文ですが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
恋愛オンリーではなくて、日常にちょっとずつ溶け込ませるようなものを想定しているので、恋愛の枠に入れないほうがいいようでしたら、教えていただければ対応します。
(ジャンル変更ができなければ一回削除してジャンルを変えて投稿ということも想定しています。)
ジャンルの設定は基準を読んでもどれに入るのか分からないです。
「あなたは、どうして僕を作ったの?」
その人は笑った。
心底おかしいとでも言いたげに。
頭をこちらに向けたから、揺れる赤茶けた髪が光を受けてまるで金糸のように輝いた。
「話し相手が、欲しかったから」
僕の創造者は、僕の母は、僕の愛しい人は、光に揺れる新緑の瞳を細めた。
「すぐに死んでしまっては、一時の孤独を誤魔化すだけ。私より長生きするなにかが欲しかった」
摘み取っていたミントを籠に投げて、その人は立ち上がった。髪が、ワンピースの裾が、風に煽られて揺れた。
ふわりと風に巻き上げられて、やっぱり金糸のように輝く。
「お前なら、私が生きるより長くいるだろう?」
優し気な瞳に僕が映るのを見て、僕はその人の足元に目を落とした。
サンダルを履いているのは、土で汚れて治りきっていない擦り傷のある足。
僕の傷ひとつない、傷なんてつかない足と違う。綺麗な足だ。
「……なら僕の孤独は?」
「お前は、人じゃないから」
じゃあどうして、あなたは僕に心なんてくれたんだ。
――――――
むかあしむかし。
ひとりの人とひとつの人形が暮らしていました。
人のほうは不思議な祝福で不死と言えるほどの長い寿命を授かりました。
この世に生きるすべての人が欲しがるものです。
お金持ちも、貴族も、時の権力者すら喉から手が出るほど欲しがるのに、決して手に入らないものです。
けどそれを幸運にも授かった幸福者は、それを呪いと罵り忌み嫌っていました。
幸福者は寂しかったのです。
幸福者が歩む悠久の時をともに歩ける者は存在しませんでした。
幸福者が後生大事に育てた蜜柑の木さえ、やがて枯れゆき朽ち果てました。
だから幸福者は人形を作ることにしました。
陶器の肌で、ガラスの瞳で、絹の髪の世にも美しい人形です。
人にそっくりな、瞬きもできる人形です。
決して壊れない、人形です。
さて、物は大切に長い間使い続ければ心が宿ると言います。
その人形にも、幸か不幸か心が宿ってしまったのです。
書きながらですので更新は不定期です。ご了承ください。
なるべく間隔があかないようにします。
お付き合いくださるとうれしく思います。
おかしなところがあれば、指摘してくださるとありがたいです。
アドバイスなどもとても嬉しいです。