0.「むかしむかし」の前に
物語の中の王子様。そんな存在に心奪われたのは、いつのことだっただろう。いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるなんて幻想。私も物語の中のお姫様みたいになれるだなんて妄想。そうやって切り捨てて、全部全部否定して、今日を生きている。こんなつまらない世界で、狂ってないやつなんていない。それでも平静を装って、今日も生きている。
いつか王子様が迎えに来てくれる。私のことを見つけてくれる。
それを夢物語と呼んで、私は大人になってしまった。
だから、きっとこれもまた夢物語。私の壊れた心が作り出してしまった、儚い夢。
そうでないなら――
そうでないなら、私はもしかしたら、もう少しだけ、この世界に期待してもいいのかな? なんて。なしなし。今のなし。だってあり得ないもの。こんな物語が現実に起こるだなんて。
***
ねえ、あなたは知ってる? これは、私が家の掃除をしていたときに見つけた本の話。それは古いおとぎ話で、誰も読んでいないのか、酷くほこりをかぶってた。両親に聞いてみても、そんなもの知らないって言われたんだ。それでも私は気になって、その本を読んでみた。題名は知らないものだった。調べてみても、ヒットしない。でも、読み進めていくうちに、なんだか惹かれた。どこにでもあるようなおとぎ話。その主人公になったみたいで。
大人になってからこういう本を読むのって、久しぶりだったからかな。小さい頃は、こういうお話をたくさん読んだような気がする。学校の図書室には夢が詰まってた。いつからこうなってしまったんだろう。もう覚えてないけど。
よかったら聞いていってよ。何の変哲もないおとぎ話だけど。
それは、何も持っていない女の子が、色々なものを手に入れるお話。よくある話でしょ? でも、もしあなたに時間があるなら。少しだけその世界を覗いてみない?




