記憶の整理
途中、サービスエリアに寄る。
何をするわけでもなく、運転席を倒して目を瞑る。そうしてゆっくりと深呼吸をし、今日あったことを思い出す。とはいえまだ昼過ぎ。濃密な午前中だった。何が何だか分からぬまま今ここに居る。状況を整理する為には必要な時間だ。
昨日の夜は確かにネットカフェに居た。そして気付いたときには家で血塗れになって起きた。パニックになって家を出て今ここに居る。
問題なのは、パニックになる前の行動だ。完全に記憶が抜け落ちている。ネットカフェから家までの間に何があったのか。血塗れになったのはその間しかない。夢遊病の間の記憶を思い出せなど誰が出来ようか。そんなことが出来るのなら誰か教えてほしい。
ただ、である。
疑問点がある。
それは、優秀と言われる日本警察が、昨日夜から深夜にかけての逃亡者をここまで放ったらかしにするだろうか。
もしかして、私の勘違いなのかもしれない。血塗れになったのは何かの手違いで、警察のマークは私ではなく他の者になっている可能性もある。でなければ、私なんぞの素人の逃亡者1人捕まえられないのはおかしい。規制線も張られていない。これでは誰でも逃げれる。
それにテレビやラジオでも声掛けをするはずだ。こういう事件があって犯人は逃亡中だと。しかしそれも見ても聞いてもない。見逃し聞き逃しがあったとしても、普通にサービスエリア等利用出来るものだろうか。日本警察は思った程優秀じゃないのか。それとも他に犯人が居て、私は巻き込まれたに過ぎないのか。
考えがグルグル頭を駆け巡り、整理しようにも整理できない。分からないことを分からないままにしておくことがこれ程ストレスになるとは。
サービスエリアを出て再び高速道路に戻る。
夢遊病の症状に加え、昨日の記憶喪失、血塗れでの目覚め、逃亡劇等々、理解できぬままどうしようもなくただ道路をひた走る無力感に襲われ、私は叫んだ。